自衛隊ニュース

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家族支援に対する協定締結
支援の拡充へ3団体と連携<入間>

写真=(左から)入間つばさ会会長、埼玉県隊友会事務局長、埼玉県自衛隊家族会会長、入間基地司令、基群司令


 入間基地は5月19日、埼玉県自衛隊家族会、埼玉県隊友会及び入間つばさ会との4者間で、「隊員家族の支援に対する協力に関する協定書」を締結した。

 締結式には、入間基地司令の杉山将補、埼玉県自衛隊家族会の斎須会長、埼玉県隊友会の大音師事務局長及び入間つばさ会の武藤会長が出席・署名した。

 本協定書には、隊員家族の支援に対する協力の内容、具体的な調整窓口及び情報管理等が示されており、4者それぞれが隊員家族の支援に対する協力の実効性向上及び関係強化に努めるよう明記されている。

 入間基地司令は、「協力団体による家族支援は本当に心強い。令和6年元旦の能登半島地震など、いつどこで何が起きるか分かりません。本協定に基づく各協力団体との連携によって隊員が後顧の憂いなく任務に専念でき、また、隊員のご家族が安心して生活できる基盤になると考えます。引き続き、お力添えを賜わりますようお願い申し上げます」と挨拶した。

 入間基地は、今回の協定を通じて家族支援体制のさらなる強化に努めていく。

茨城空港周年祭<百里>

写真=戦闘機パイロットのサイン会


 3月16日、茨城空港にて、茨城空港利用促進等協議会/茨城県開発公社茨城空港ビル管理事務所が主催する「茨城空港周年祭2025」が開催され、航空自衛隊百里基地は茨城空港ビルの1階拡張スペースに航空自衛隊百里基地広報ブースを設置した。

 ブースでは百里基地リーフレット、クリアファイル及び航空機写真を配布したほか、子供制服コーナーを設けて記念撮影を楽しんでもらい、百里基地への関心及び自衛隊への理解を深めてもらった。

 当日は、あいにくの雨であったが、「茨城空港周年祭2025」には、約8900名の多くの来場者が訪れた。

37年の情熱と笑顔に幕
<奈良>

伝説の広報マン 松田准尉が退官

写真=お疲れ様でした!水を浴びる松田准尉


 4月11日、航空自衛隊 奈良基地・幹部候補生学校の松田佳一准尉が約37年にわたる自衛隊生活を終え、定年退官を迎えた。

 昭和64年入隊以来、松田准尉は航空自衛隊の顔として、特に広報分野でその名を轟かせてきた。平成8年に広報担当に就任して以来、数々のプロジェクトで空自の魅力を全国に発信し、隊員や地域住民に愛される存在となった。

 松田准尉の功績の中でも特に際立つのは、テレビドラマの撮影協力とブルーインパルス展示飛行の広報活動だ。人気ドラマの撮影では、リアリティ溢れるシーンの裏方として尽力。脚本家や監督と密に連携し、空自の日常や隊員の熱意を画面に映し出した。

 航空幕僚監部総務部広報室(市ヶ谷)勤務時には、ブルーインパルス展示飛行のため、企画からメディア対応まで幅広く担当。平成28年からは奈良基地勤務となり、その卓越した知識・経験を持って、奈良基地開設60周年記念行事として奈良県では初となるのブルーインパルス展示飛行を成功させるため奔走した。高層建築物がない奈良の広く青い空に白いスモークで描かれるアクロバット飛行は、多くの人々の歓声と感動をもたらした。

 また、その人柄は航空自衛隊の基地内外で広く親しまれた。基地内では後輩隊員の良き相談相手として慕われ、基地外では地域イベントに積極的に参加、子供たちに空への夢を語り、地域住民と隊員の絆を深める懸け橋ともなった。ある隊員は「卓越した知識技能を持つ松田さんと一緒に仕事をする際は安心して仕事ができるとともに、ウィットに富むジョークで、どんな緊張した場面も和んだ」と振り返る。地域住民からも、「松田さんの多くの引き出しから出る説明は、毎回新しい発見があり何度でも説明を聞きたかった」との声が寄せられている。

 准曹会が企画した退官を祝うバケツ水かけセレモニーでは、松田准尉を慕う協力団体の多くの会員が見守る中、笑いと拍手に包まれながら水をかぶる松田准尉の姿に、会場は一体感に満ちた。参加した隊員は、「松田さんのように、情熱と笑顔で任務に取り組みたい」と語り、その影響力の大きさを物語った。

 新たな一歩を踏み出す松田准尉に対し、隊員や地域住民から寄せられたのは惜別の想いと未来へのエールだ。長きにわたり空自の広報マンとして人々を繋いできた松田准尉。その情熱と笑顔は、空自の歴史に、そして多くの心に刻まれ続けるだろう。


新消防車庫落成式<鹿屋>

写真=新車庫の前で


 4月16日、海上自衛隊鹿屋航空基地の新消防車庫落成式が行われた。

 落成式では、第1航空群司令(大西哲海将補)、鹿屋航空基地隊司令(山田元昭1海佐)、鹿屋航空警備隊長(磯上3海佐)及び鹿屋航空警備隊先任海曹(中馬曹長)が、落成を記念してらっぱファンファーレに合わせてテープカットを行った。

 式に先立ち、地上救難班長(友村1海尉)が、「新消防車庫の最初の1ページの一員として、研鑽努力することを誓います」と力強く決意表明をした。

 また、訓示では、鹿屋航空基地隊司令が「自信は訓練によってのみ練成されるものであり、努力せよ」と班員を鼓舞した。祝辞においては、第1航空群司令が「新たな消防車庫に魂を入れるのは諸君である。これまで携わった方への感謝を忘れずに勤務してほしい」と激励した。式典後は、地上救難員による緊急出動展示を行い、地上救難班の精強さを示した。

 新消防車庫は、前方及び後方にシャッターが設置してあり、車庫内を通過することができるとともに、毎分5トンの給水装置を装備している。

 旧消防車庫は、昭和33年12月に施工され67年間、航空基地機能の維持に大きく貢献してきた。今年度、解体予定であり、寂寞の思いである。

 地上救難員一同は、今後も不測の事態に迅速かつ柔軟に対応できるよう術科のプロとして日々の研鑽、努力を重ねる決意を誓った。

読史随感<第174回>
神田淳

アメリカは変わってしまったのか

 トランプがアメリカ大統領として再登場し、世界を混乱させている。4月、各国からの輸入品に、新たに一律関税10%を課し、さらに各国に追加関税(トランプは「相互関税」と称する)を課すと発表。追加関税は貿易不均衡の大きい国ほど高く、中国34%、日本24%、インドネシア32%、ベトナム46%、EU20%、イギリス10%などとなっている。

 トランプ大統領は何を考えているのか。高関税は、自国経済にも、世界経済のためにも良くないことは、経済学的に、また歴史的に結論が出ているのではないか。1930年、大恐慌に始まる不況に苦しむアメリカは、「スムート・ホーリー関税法」を制定、関税率を大幅に引き上げた。しかしこれは世界貿易の縮小を招き、アメリカ経済はむしろ悪化した。そして、各国が自国経済圏を高関税で囲ってブロック化したため、英米など資源を豊富に抱える国と日独など資源のない国との対立が激化、第二次世界大戦が起きてしまった。この反省があって戦後、各国はGATTを締結し、1995年には自由貿易推進機関WTOが設立されて現在に至っている。

 かつてアメリカ大統領は世界のリーダーとして責任をもつ振舞いがあったが、トランプ大統領は違っている。ただ「アメリカファースト」、「アメリカを再び偉大に」を唱えている。トランプは歴代大統領のように自由、公正、民主主義、人権といった価値や理念を口にしない。すべて「ディール(取引)」と考えているようだ。最近私はトランプに被害者意識があることに気づいた。巨額の貿易赤字もアメリカは被害者で、NATOも日米同盟もヨーロッパや日本にアメリカが利用されて不公平だ、と。ロシアと中国には歴史的な被害者意識があるが、富強国アメリカ大統領の被害者意識は意外である。被害者意識のある人間は過度に攻撃的になったり、非理性的な判断をすることがある。

 アメリカを知る識者は、トランプを選ぶようなアメリカ社会が変わったのだと言う。フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッドは、良きアメリカをつくっていたプロテスタンティズムが完全に失われてアメリカ社会は道徳性が喪失、社会の価値観が非常にネガティブになったと言う。思想面は空虚で、金と権力の強迫観念とニヒリズが支配し、少数の最富裕層が富と権力を独占する寡頭制となって民主主義が終わりの局面を迎えている、と。

 トッドはアメリカ社会の劣化の指標を示す。アメリカは先進国で唯一平均寿命が低下している国である。2014年78・8歳だった平均寿命は2021年には76・3歳まで低下した。この年、イギリス人の平均寿命80・7歳、フランス82・3歳、スウェーデン83・2歳、日本84・5歳である。またアメリカの乳幼児死亡率は2020年より3年連続して悪化した。2023年、新生児千人当たりの乳幼児死亡数はアメリカ5・5人、ロシア3・7人、イギリス4・9人、フランス3・4人、スウェーデン2・0人、日本1・8人である。通常下がり続ける乳幼児死亡率が上昇することは、社会経済の劣化を示す決定的な指標になるとトッドは主張する。トッドは1970年代、ソ連の乳幼児死亡率が悪化している状況から、ソ連の体制崩壊を予言した。

 アメリカは本当に変わってしまったのだろうか。アメリカの歴史における一時的なブレで、なお良きアメリカは失われていないと思いたいが、実際のところわからない。ただアメリカがどうであろうと、日本はアメリカを頼みにすることなく、独立国としてしっかりしなければならないとの思いを強くするのみである。

(令和7年6月15日)


神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

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