自衛隊ニュース

ゲッキーのイラスト

都城限定ワイン

 都城駐屯地(石岡直樹司令)はこのほど、駐屯地オリジナルラベルのワイン「都城自衛隊ワイン」=写真=の販売を駐屯地敷地内売店(限定)で開始した。

 ワインのラベルには地域の方々と歩んでいく思いを込め駐屯地スローガン「地域とともに」が記載され、赤と白の2種類、お土産などに喜ばれる持ち運び手軽なハーフボトルサイズで販売されている。

 駐屯地を訪れた方々からは「お土産にピッタリ」、「珍しいから喜ばれる」と好評で、駐屯地限定の意外性から注目を集めている。

 都城駐屯地は、今後とも地域との連携を強化し、さまざまな活動を通じ地域に貢献していく。

ノーサイド
北原巖男

始まりのスタート

 今年も早や梅雨入りの季節へ。大雨による河川の氾濫や土砂崩れ等、激甚化する自然災害に対する警戒の「始まりのスタート」です。私たち一人ひとり、かけがえのない命です。

 表題は、6月3日に亡くなられた「巨人・大鵬・卵焼き」(堺屋太一さんの言葉)を代表する巨人軍「3番サード長嶋」、ミスタープロ野球、「我が巨人軍は永久に不滅です」の長嶋茂雄選手ならではの「名言」の一つ。

 「名言」は続きます。「決してネバーギブアップしません」「メークドラマ」「魂を込めて打てば、野手の正面をついたゴロでもイレギュラーする」「球がこうスッと来るだろ、そこをグゥーッと構えて、腰をガッとする。あとは、バァッといってガーンと打つんだ」「プレッシャーを楽しいと思った時、その人間は本物になれます」「感動はスポーツばかりじゃありません。あらゆるジャンルにある。何かに感動しながら日々新たな気持ちで挑戦して行く。これこそ、生きる上での一番の王道と言えるのではないでしょうか」「長嶋茂雄であり続けることは、結構苦労するんですよ」「努力は人が見ていないところでするものだ」等々。

 長嶋さんは、正に記憶に残る、何か不思議な親しみを感じる、こちらまで元気になる、華やかな名選手・大人気スター、笑顔の長嶋さんでした。

 自衛隊員の皆さん・ご家族そして本紙読者の皆さんの心や思い出の中に、それぞれの長嶋さんがおられることと思います。

 そんな皆さんも、今、身の回りの様々な「始まりのスタート」に取り組まれていたり、関心を抱いておられることも多いのではないでしょうか。

 アジアで一番新しい小さな国・東ティモールでも、「始まりのスタート」が起きています。

 それは、5月26日、ASEAN議長国マレーシアの首都クアラルンプールで開催されたASEAN首脳会議にて、東ティモールが、本年10月のASEAN首脳会議で11番目のASEAN加盟国になることが実質的に確定したことです。思えば、東ティモールがASEANに正式加盟申請したのは14年も前の2011年3月。1975年11月から24年間の長きにわたり激しい独立回復闘争を戦って来たインドネシアがASEAN議長国を務めていた時のことでした。今後は両国とも未来志向の関係で行くことをASEAN各国を始め世界に訴えたのでした。申請当時、シンガポールなどは、東ティモールの加盟に消極的でした。

 爾後、東ティモールは、加盟に向けた幾多の要件をクリアするため尽力して来ました。日本や各国もASEAN加盟支持を表明、必要な協力・支援を行ってきました。

 こうした中、2022年11月のASEAN首脳会議は、東ティモールの加盟を原則承認するに至りました。しかし、加盟の時期は未定のまま。東ティモールが加盟出来る時との位置づけでした。

 本年10月に向けて、東ティモールには、加盟手続きの更なる迅速化が求められます。東ティモールにとって、独立回復以来の未知の世界へ、「始まりのスタート」です。

 ここで一言。その東ティモールが独立を回復した2002年5月20日から今日までの23年間、我が国歴代首相は、どなたも東ティモールを訪問していません。東ティモールは、g7+諸国約20か国をリードしており、資源小国我が国の資源の安全保障の観点からも、また地政学的にも極めて重要な「山椒は小粒でもピリリと辛い」国なのです。

 これまで約50年の間、日本はASEAN重視を掲げて来ています。厳しい政治日程の中に在ってなお石破首相におかれては、同国がASEANに加盟する10月以前に是非訪問され、激励し連帯を表明されることを改めて強く希望いたします。ASEAN正式加盟後に初めて伺うのとでは、その外交成果には、雲泥の差があると思います。

 ここで、最も身近な重要な隣国、韓国に目を向けますと、同国では、前大統領の唐突な戒厳令発令に端を発した国内政治の混乱・分断・深刻な経済の低迷が続いています。

 こうした中、6月3日に行われた大統領選挙に勝利した最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏は、翌4日の大統領就任演説や記者会見にて、国内融和や景気回復に最優先で取り組むことを強調しています。

 野党からの新大統領の誕生は、一人韓国だけの内政や外交の「始まりのスタート」に留まるものでないことは論を待ちません。

 イ・ジェミョン大統領は、日米韓の協力関係の強化も表明。更に、日本は重要なパートナーであり、協力関係が重要である旨、言及しています。

 しかし、どうしても頭をよぎるのは、これまでイ・ジェミョン氏が行ってきた我が国との間に存在する歴史や我が国固有の領土である竹島を巡る問題等に対する大変厳しい対日観・対日発言の数々です。

 両国国民のため、両国の国益とこの地域の平和と安定のため、イ・ジェミョン大統領には、前政権が決断した日韓関係の正常化に対する取り組みについては、何としても継続し、更には強化して行って頂きたいと思います。

 我が国としても、速やかに石破首相サイドから呼びかけてイ・ジェミョン大統領と胸襟を開いた首脳会談を実施して頂きたいと思います。両首脳によるシャトル外交の深化を心から願います。

 更に、重層的な外交ルート等を通じて、後戻りしない、ガラスのような脆弱でない信頼関係の構築に取り組んで行って頂きたいと思います。

 韓国新政権の出方を見守るなど様子見の姿勢に留まるのではなく、日本から迅速なアクションを起こすことが肝要と思います。

 更に、現下の中国や北朝鮮をめぐる国際軍事情勢等に鑑みるとき、この地域の安全を確保し、平和を維持して行くためには、防衛省・自衛隊と韓国国防省・軍隊との常日頃からの緊密な意思疎通・信頼関係は欠かすことが出来ません。

 中谷防衛大臣のリーダーシップの下、二国間及び米国を含めた三国間での様々な対話や交流等が、新政権の下でも着実に推進されることを願って止みません。

 「始まりのスタート」です。


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

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