自衛隊ニュース

よせがき
写真=中曹学生に対してハラスメント教育をする塚原准尉
真の女性活躍推進のために
西部方面混成団(久留米)
准陸尉 塚原 有希
西部方面混成団第5陸曹教育隊上級陸曹教育中隊(中隊長・渡辺1陸尉)は西部方面隊で唯一、中級陸曹・上級陸曹及び先任准尉の課程教育を担任し、部隊の中核を担う陸曹を育成しています。
年間約1000名の入校学生に対して、中・上級陸曹及び先任准尉として必要な知識技能の習得、資質の向上、小部隊の指揮能力及び指揮官等を補佐できる基礎的能力を身につけることを目的として教育を実施しています。
さて、入校学生の中には毎期、多数の女性自衛官が不安を抱えて入校してきますが、その理由として妊娠・出産・育児等により、訓練の現場から長く離れていることが大きな要因です。しかし、いざ教育が始まると、男性隊員と同じ様に生き生きと訓練に励み、笑顔で卒業していきます。その姿は大変美しく逞しくもあります。
私は、教育において混成団唯一の女性先任上級曹長として、女性目線での各種ハラスメント教育等を実施し、個人及び部隊の健全性向上を図るとともに、自己の経験から得た教訓や各種服務制度の周知に努めていますが、自衛隊という組織としてはまだ改善の余地があると感じています。女性が優遇されるということではなく、性別や性を理解し支え合い、それぞれの強みを活かし、皆がひとりの自衛官として当たり前に勤務できることが、真の女性活躍推進実現のために必要だと考えます。
部隊の中核である中級・上級陸曹等の教育を担任する部隊の、そして西部方面混成団唯一の女性先任上級曹長としてその使命を深く自覚し、これまで育てていただいた組織へ恩返しをするため、全身全霊をもって職責を果たしていきます。
3等陸尉に任官して
第49普通科連隊(豊川)
3陸尉 星野 俊二
このたび、第74期3尉候補者課程に入校し約3カ月の貴重な学びの機会をいただけたことに、心から感謝しております。入校中は、全国から集まった経験豊富な陸曹長の同期とともに過ごし、多くの刺激を受けながら自分の力を試す貴重な時間となりました。これまでの連隊の勤務で得た経験や知識を活かす場面も多く、周りの支えがあってこそだと改めて感じています。フル部隊から参加した同期にも決して劣らぬ意識と姿勢で教育に臨み、自分なりに全力を尽くせたと感じております。
この経験を通じて連隊の陸曹が更に自信と誇りをもってもらいたいと強く感じました。
幹部として任官した今、これまで以上にハツラツとした態度で職務に励み、後輩たちが「自分も幹部を目指したい」と思えるような明るく楽しく前向きな職場環境を築いていきたいと思います。率先垂範を忘れず、どんな任務にも誠実に向き合いながら、しっかり責任を果たして参ります。
引き続き、変わらぬご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
第一次訓練検閲に参加して
第33普通科連隊(久居)(当時)
陸士長 水谷 裕子
私は、令和3年9月に第33普通科連隊本部管理中隊補給小隊に配属され、現在4年目になります。第一次連隊訓練検閲では、通信手として参加を命ぜられ、正直とても不安な気持ちで参加しました。理由については、二点あります。
一点目については通信手としての経験がなかった事です。
基本教育である部隊ネットワークという通信の教育に令和4年1月参加以降、小隊では各種任務に補給手として従事し、通信手として任務は初めてであり、私に小隊の通信を構成できる自信がなかったからです。
二点目については、扱ったこともない器材の構成・運用です。
今回、任務の上でネットワークカメラを活用した警戒監視網を、構成すると小隊の方針を受けましたが、私にその器材の知識・技術がなくネットワークカメラを繋げられるのか不安に感じました。
しかし、任務遂行サイクル及び零細時間を活用し、通信器材の設定方法、交信方法等を通信小隊や先輩隊員に教育して頂いたおかげで、検閲では上手く構成し、無事にネットワークカメラを繋げることで、警戒任務に活用させることが出来ました。
私は今年の8月から警務科に職種変更となる為、第33普通科連隊本部管理中隊補給小隊としての最後の任務であり、最後の検閲でした。
その為、最後に任務達成して終わることが出来てとても良かったです。
今後は、職種及び勤務地が変わりますが、第33普通科連隊、特に補給小隊で学んだこと経験を活かして勤務していきたいと思います。
音楽隊に敬礼っ‼<第19回> 前陸上自衛隊中央音楽隊長 樋口 孝博
録音はつらいよ!
写真=小澤征爾のファンファーレ録音
音楽は瞬間芸術とも呼ばれ、楽器から響いた音はすぐに消え去ってしまいます。そのため演奏者は、最高の一瞬を表現する試行錯誤を何日も繰り返し、少しでも良い音や高い技術を聴衆に届けるよう努力しています。それでもミスをしてしまったり、思い通りの音が出なかったりすることがあるものです。そのようなときのライブ録音は、再び聴くことにも抵抗があります。その点レコーディングルームでの録音は、何度も録り直すことができますからとてもありがたいものです。ここでは、まずマイクやバランスなどをチェックしながら軽く練習し、そのあとに「テスト(試し録り)」を録音します。それをスピーカーから流して、自分の演奏がどう聴こえているかを聴いてみます(プレイバック)。ディレクターから「それでは回しま~す。テイク・ワン!」という声が響くと、張り詰めた空気のなかで本番が始まります。しかし、何度も繰り返し録音をする緊張感と疲労度は、並大抵のことではありません。音響ルームから「(録音を)いただきました~! お疲れ様でした~!」との声が届くと、全員が拍手喝采でねぎらうのです。
初めて音楽隊のレコーディングに立ち会った「式典曲集」の冒頭は、《ファンファーレ》でした。曲に慣れているトランペット奏者たちは、何度演奏しても完璧に演奏します。それでも指揮者は妥協せず「テイク・6」まで録ったのですが、結局採用されたのは緊張感のある「テイク・ワン」だったのです。また、ある大曲を録音したときにはディレクターから耳を疑う一言がありました。「ワンもツーもダメだな。テストでいこう!」…。確かに、冷静に録音した「テイク・ワン」よりも、練習のあとに集中した「テスト」の方が、気迫あふれる演奏に聴こえました。その結果、出来上がったこのCDは文化庁芸術祭の優秀賞を受賞することになったのです。
冬の時期、冷たい楽器の音程はやや低く、楽器が温まると音程が上がるという特性があります。長野オリンピック・ファンファーレの録音も、暖かいホールで小澤征爾さんが指揮をしたのですが、寒い屋外での開会式会場に流れる録音された音と生演奏の音程がずれてしまうのには苦労しました。
さて、私が初めて録音を指揮したときは、1本のテューバしかいない中編成の音楽隊でした。しかしスピーカーから流れる音を聴いてみると、何人ものコントラバスがいるような素晴らしい低音の響きになっています。録音技師の方に「こんな立派な演奏、ウチの響きではありません!」と申したところ、「いいじゃありませんか!」と、笑顔で言われます。完成したCDは、まるで大編成のオーケストラが演奏したような、迫力あるサウンドになっていました。
ライブ録音では本番の演奏が乱れたり、聴衆の声や拍手が入ったりすることもあります。そのため、予備としてリハーサルも録音しておきます。札幌の演奏会では、海上・航空音楽隊のトップ奏者をゲストに招いてライブ録音をすることになりました。しかし本番では、ソロ奏者と伴奏の音がズレてしまったりノリが悪かったりと、満足のいかない部分が出てしまいました。しかし、そういう時に限ってリハーサルを録音しておらず、当然修正はできません。その結果、CDの制作はお蔵入りとなってしまったのです。
音楽隊は創設期から、広報の一環として多くの国歌や行進曲の録音協力をしてきました。それが「音楽隊といえば、マーチ」という認識を人々に与えたのかもしれません。ところが最近では、吹奏楽曲のモデル音源やアニメソングなど幅広いジャンルの曲が録音されるようになりました。収録は、精神的にも肉体的にも辛いものではありますが、広報媒体として欠かすことができないものです。
一瞬で消え去ってしまう音の響き。その音を保存するためにも、世界に広げるためにも録音・録画はエンドレスです。そして、その音源の一つひとつが歴史の一部にもなるのです。