自衛隊ニュース

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i‐TESC<2師団>

ドローン、情報共有ツールを駆使

写真=分隊用情報共有ツールで敵情を送る25普連隊員


 第2師団(師団長・大場剛陸将)は、7月6日から11日までの間、上富良野演習場において即応機動連隊及び普通科連隊の各中隊を基幹とする部隊を対象に「令和7年度普通科部隊戦闘訓練評価支援センター方式訓練(i‐TESC)」を実施した。

 本訓練には、第2師団以外の北部方面隊管内各師旅団の普通科連隊等も参加し、それぞれ攻撃部隊と防御部隊に分かれてバトラを装着した実戦的な訓練を実施した。

 特に今年度のi‐TESCにおいては、攻撃部隊と防御部隊ともに蒼天等のドローンによる情報収集、また分隊用情報共有ツールの平導院・正蒼院等による指揮、情報共有、火力要求等を行うなど、先進的な器材を駆使して戦闘を繰り広げた。

 状況終了後には、参加部隊による研究会が行われ、各戦闘場面における事実確認や改善事項について意見交換を行うなど、攻撃部隊及び防御部隊ともに本訓練を通じて各級指揮官の状況判断能力、部隊の基本的行動及び隊員の基礎動作の練度向上を図ることができた。また、装備品開発企業等を本訓練に招き、蒼天及び分隊用情報共有ツール等の活用状況や使用部隊からの意見、同装備品に対する改善要望を説明する等、貴重な意見交換を実施することができた。

水際障害構成訓練

写真=汀線部障害を構築


 第2施設団第301水際障害中隊(中隊長・牛尾翔太3陸佐=船岡)は、7月7日から7月30日までの間、北海道天塩町(天塩訓練場)において、水際障害構成訓練を実施した。

 中隊長以下52名の隊員(同行支援として第105施設直接支援大隊隊員2名)の編成で、専門とする水際障害の構成訓練及び宮城県から北海道までの長距離機動(フェリー移動含む)の訓練を実施した。水際地雷の敷設訓練、浜辺における汀線部障害構成訓練及び編成を組み替えての交差訓練を訓練の焦点とし、水際障害構成能力の向上を図った。また、訓練場が生地であることを踏まえ、官用車両の運行、装備品の管理及び保全・媒体の管理等の徹底を図った。

 主要な成果として、水際地雷の準備から敷設速度、浜辺における汀線部障害の構築速度の向上及び地雷を取り扱える隊員の拡充を図ることができた。今後は、水際障害のさらなる敷設構築速度の向上を焦点として訓練に臨む。

 第301水際障害中隊は「水際障害構成訓練の実施に当たり、天塩町及び地元住民の方々のご理解・ご協力を頂き、今回の訓練を実施できたことに感謝申し上げます。ありがとうございました」としている。

第2回隊練成訓練<5特隊>

写真=射撃


 第5特科隊(隊長・二田宗介1陸佐=帯広)は、6月24日~6月30日までの間、矢臼別演習場において「令和7年度第2回隊練成訓練」を実施した。

 本演習は、陣地の偵察・選定・測量、非実射連携訓練及び実射練成、隊指揮機関訓練(陣地の偵察)を演練した。各班・小隊は、日ごろの練成成果を火力発揮に帰一させ、速度と精度を追求した射撃を実施し、じ後の訓練の資とした。

 また、隊は、帯広地方協力本部が実施する帯広市自衛隊家族会の射撃訓練研修を支援して、自衛隊に対する認識の深化に貢献した。

基礎となる部隊の訓練検閲
<36普連>

写真=射撃指導する分隊長


 第36普通科連隊(連隊長・早田知弘1陸佐=伊丹)は、6月17日~25日までの間、あいばの演習場(滋賀県高島市)において、「第1次基礎となる部隊の訓練検閲」を実施した。

 第2中隊

 第2中隊は「陣地防御における全般前哨及び第一線部隊の行動」を検閲課目として「指揮幕僚活動」「戦闘力の組織化」を演練した。

 百戦錬磨の第2中隊長(樫原3佐)は「集中力を持続せよ」を要望し、中隊全隊員が一丸となり、情報、火力、障害を高度に連携させた強靭な防御戦闘を展開し、任務を完遂した。

 情報小隊

 情報小隊は「陣地防御における情報小隊としての行動」を検閲課目として「状況判断」「戦闘指導」を演練した。

 新進気鋭の情報小隊長(多武野2尉)は「柔軟性の保持」「任務達成の執念を堅持せよ」の2点を隊員に要望し、陣地防御における情報活動を演練した。

 隊員は連隊の情報要求に的確に応えるべく偵察網を張り巡らせ任務を完遂した。

 施設作業小隊

 施設作業小隊は「陣地防御における普通科中隊に協力する施設作業小隊としての行動」を検閲課目として「指揮幕僚活動」「戦闘力の組織化」を演練した。

 経験豊富な施設作業小隊長(石本2尉)は「施設作業小隊員としての誇りを持て」を要望し、高度な技術をもつ職人集団を見事に統率して任務を完遂させた。

 本検閲は梅雨特有の厳しい気象条件下での長期間の作戦行動であったものの、各指揮官の統率のもと、隊員一人ひとりが高い任務遂行意欲を保持し、任務完遂へ向けまい進した。

 総評において統裁官は「中隊及び小隊の隊員は自分たちで育成するとの強い使命感、責任感、連帯感、仲間意識、プロ意識、熱意及び愛情のもと、期待される幅広い任務を遂行するため、本訓練で得た事項をあらゆる隊務に反映させ、部隊の精強化と隊員の幸福を追求し、陸上自衛隊の作戦遂行能力の向上に寄与することを期待する」と述べ本検閲の結びとした。

第一次旅団演習に参加
<10即機連>

写真=対抗部隊として参加


 第10即応機動連隊(連隊長・小林邦之1陸佐=滝川)は、6月30日から7月4日までの間、北海道大演習場において第11旅団が実施した「令和7年度第一次旅団演習」に対抗部隊として参加した。

 連隊長要望事項「各種戦闘力を組織化し、敵を殲滅せよ」の下、偵察部隊、UAVをはじめとした各種センサーからの情報を、各普通科中隊、機動戦闘車中隊、火力支援中隊及び配属・協同部隊に各種システムの活用により、情報の優越を図った。

 さらに諸職種協同による戦闘力の組織化を実施し、第一線部隊の分散・連携した機動及び重要目標に対する迅速な火力発揮により、敵を殲滅するまで戦い抜いて攻撃練度の

向上を図った。


日本防衛の核心としての自衛官
‐人的基盤はいかにあるべきか‐
<第2回>

笹川平和財団日米・安全保障研究ユニット総括・交流グループ長 河上康博(元海将補)

提言1
政府あげての社会基盤の
強化も含む継続的な検討

 第1回では、政策提言『防衛力における人的基盤の強化にむけて』の背景と概要について紹介した。

 第2回からは、同提言で述べている8つの提言について順番に紹介する。第1に挙げているのは『政府あげての社会基盤の強化も含む継続的な検討』である。2024年12月、内閣総理大臣を議長とする会議において示された「基本方針」では、①自衛官の処遇改善、②生活・勤務環境の改善、③新たな生涯設計の確立の3項目について方針が示され、予算化や法改正など具体的な進捗がみられる。本研究会ではさらに踏み込み、「国の防衛に係る社会基盤の強化」を提言したい。

 世界数十か国で共通の調査票を基に各国国民の価値観等を調査する「世界価値観調査」(第7回、2017‐2022)において「もう二度と戦争はあって欲しくないというのがわれわれすべての願いですが、もし仮にそういう事態になったら、あなたは進んでわが国のために戦いますか」という質問に対し、「はい」と答えた割合は、日本は13・2%であり、調査対象国中、最低である。これに対し、ベトナムは96・4%で最高、中国は88・6%、米国59・6%、また最低から2番目のオランダでさえ28・4%と、日本は突出した低さであることが分かる。背景には、戦後、長く続いてきた軍事に対する忌避感、憲法上の自衛隊の位置付け、安全保障に関する低調な教育、個人主義の蔓延等に起因していると思われるが、これが日本の国防および自衛隊を支える実態である。防衛力における人的基盤強化のためには、広く国民が国防および自衛隊の重要性を理解し、公に尽くすこと、そして、その職に志願し奉職する者へ尊敬の念を持ち、自衛官が誇りと名誉を持って勤務できる社会基盤が必要不可欠である。

 この状況を変えるためには、国民が自らの国は自ら守るという意識の醸成と、「国として国防に必要な質の高い自衛官を安定的に、必ず、確保する」との強い意志について、国民の理解を得る努力とともに、政府が主導し省庁横断的に幅広い検討を行い、その施策の成果を検証し、効果が出ない場合は原因を分析し、成果が出るまで検討を深化させ、その施策を継続して断行していくことが最も重要かつ必要である。

 わが国の平和と独立、国民の命と平和な暮らし、そして、領土・領海・領空を断固として守り抜くことは、政府の最も重要な責務であり、安全保障の基本である。わが国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している今だからこそ、ロシアによるウクライナへの侵略の教訓も反映させ、国全体で備えねばならない。

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