自衛隊ニュース

37年間のP3C教育を終了<203教空隊>
写真=最終教育フライトを記念して 隊員一同で
第203教育航空隊(司令・岡崎真吾1海佐=下総)は、6月27日の学生教育飛行をもって昭和62年から開始された約37年間のP3Cによる教育を終了した。
同隊ではP3Cの操縦士を始め、戦術航空士などの各種航空士の最終教育部隊として飛行に必要となる基礎的な知識及び技能を修得させるための教育を実施しており、これまで約4300名に及ぶ搭乗員を全国の部隊に輩出してきた。
最終教育フライトを終えたP3Cは2台の消防車による鮮やかな放水のアーチをくぐり抜け、エプロンに整列した隊員に出迎えられた。
出迎えでは、機長の堀3佐から「本教育フライトをもってP3C課程の全ての教育を終了します」との報告を受けた第203教育航空隊司令の岡崎1佐が「37年におよんで精強な搭乗員を輩出してきたことは当隊のみならず海上自衛隊の誇りです。ご苦労様」と労いの言葉をかけた。
最終教育を終えたフライトクルーは、温かい拍手を受けながら、最後のフライトを名残惜しむように出迎えた隊員の前を行進した後、P3Cの前で記念撮影を行い大きな節目の喜びを隊員総員で分かちあった。
遠航部隊に手拭いを寄贈
<海自剣道会>
写真=後段左から福川3尉(広島国際大初段)、副会長 山口海将補、保板3尉(防大4段)、森2尉(東大4段、前幹事付) 前段左から渕上3尉(防大4段)、佐々木3尉(防大4段)、深澤3尉(防大4段)、前島3尉(防大3段)
海上自衛隊剣道会(会長・佐世保地方総監部幕僚長稲田丈司海将補=当時)では、毎年、遠洋練習航海部隊の剣道部員が海外の寄港地で剣道交流を行う際に記念品として役立ててもらうように、剣道会の手拭いを寄贈してきた。
今年も去る5月30日、横須賀停泊中の実習幹部6名に対し副会長(横須賀地方総監部幕僚長・山口宜久海将補)から剣道会の手拭いとともに、市ヶ谷剣道部から預かった中古の剣道具及び中古竹刀を寄贈した。
昨年度も、ブルネイ、トルコ、ドイツ等で剣道交流を行い、各国との親善を深めてくれた。今年は太平洋を横断し南米大陸を一回りするコースで、米国のほかブラジル、アルゼンチン等へ寄港する予定だ。例年同様、各地で交流を図ってくれると期待している。なお、遠洋練習航海部隊は6月13日に横須賀をかしま立ちした。
消防機関と合同訓練
<船越基地業務分遣隊>
船越基地業務分遣隊(隊長・佐井戸康裕2等海)は、6月29日、船越にある北消防署及び消防団第8分団との合同防火訓練を実施した。
本訓練は、基地の強靭化と災害に強い町づくりを推進する地域との連携強化を目的として昨年度から定期的に実施しているものであり、実践的な訓練を通じて各種事態への対応能力向上を図ることができた。
また、訓練に際して、船越在住の大学生の基地見学も行い、PRも行った。
無人システムで実機雷処分成功
海自初 護衛艦「もがみ」で
写真=機雷処分時に海面から沸き上がった水柱
6月15日、第11護衛隊司令(大松清生1海佐)指揮のもと、護衛艦「もがみ」(艦長・大瀬光一郎2海佐)は、「無人機雷排除システム(UMDS)」を用いた海自初の実機雷処分を成功裏に収めた。
本試験は、当該システムの運用試験の一環として硫黄島沖において実施され、無人機による実機雷処分は、機雷の脅威がある海域の外から無人機を用いて機雷を排除することができるものであり、海上自衛隊の高い技術力や機雷に対する新たな戦い方を示す象徴的な運用試験となった。
護衛艦「もがみ」は、その艦名を山形県に流れる最上川に由来しており、平成30年度計画護衛艦として建造され、令和4年4月に就役し、各種装備品の試験を行ってきた。中でも、機雷戦能力は、現時点で運用試験に従事してきた「もがみ」のみがその機能のすべてを有している。
FFM建造前からプロジェクトチーム長として携わってきた第11護衛隊司令の大松1佐は、運用試験が成功したことに際し、「苦節12年、もがみ型コンセプトの構想策定から始まり、無人機雷排除システムの研究開発を続けて、ようやく実現した装備品の訓練を実施してきた。本運用試験の成功には、現もがみ乗員のみならず、これまでのぎ装、研究開発等に尽力してくれた隊員総員の努力の賜ものであり、感謝し尽くしても、まだまだ足りない。みんな本当にありがとう」と感謝の意を表明した。
また大瀬艦長は、「無人機雷排除システムの全てを装備しているFFMの1番艦である本艦が、無人機による機雷処分を成功させたことは、まさに新しい時代を切り拓く1番艦としての使命を成し遂げたものであり、本艦の精強さを示すことができた。乗員数が少ないながらも、互いに助け合うチームとしての結束力を体現した結果であり、艦長としてこれ以上ない喜びである」と乗員に対し感謝を伝えるとともに、労をねぎらった。
無人機雷排除システムは、FFMの標準装備として2番艦以降の艦に順次装備されていく。今後のもがみ型護衛艦の活躍に期待したい。
読史随感<第179回>
神田淳
国家の品格について
『国家の品格』という本が、20年ほど前ベストセラーになった。国家にも品格というものがあるが、市場原理、アメリカ化が進み、金銭至上主義の社会となって伝統的な美徳を失い、日本が品格のない国家になったと言う著者藤原正彦氏の主張に、多くの人が共感したのだと思う。
著者は、論理と合理性頼みの改革では社会の荒廃を止めることはできないこと、美的感性、情緒と形の文化、祖国愛が重要であること、誠実、勇気、名誉、正義、惻隠の情を育み、武士道精神を復活すべきこと、何より国語が大切であることなどを説いている。
著者藤原正彦は、品格ある国家の指標は4つあるという。①独立不羈、②高い道徳、③美しい田園、④天才の輩出、である。①の独立不羈であるが、著者は現代日本はほとんどアメリカの植民地状態にあり、この条件を満たしていないと言う。そして著者は、国家の品格はそれ自体が防衛力であると言い、幕末(170年前)日本は世界に国を開いて独立を維持できたが、当時の日本の文化度が高く、品格ある国家であったため、植民地にならずに済んだのだと言っている。
②の高い道徳であるが、日本人の道徳の高さは、戦国時代に日本を訪れた宣教師をはじめとする人々が驚きの声を上げている。明治になっても同じで、明治初期に来日したアメリカ人生物学者モースは、「日本に数か月滞在していると、どんな外国人でも、自国では道徳的教訓として重荷になっている善徳や品性を、日本人が生まれながらにして持っていることに気づく。最も貧しい人々でさえ持っている」と書き残している。道徳の高さを測る尺度はないが、過去千年間の各国を何らかの方法で比較することができたら、おそらく段違いで日本人がトップと思われると著者は言う。
今、アメリカの国家の品格はどうだろうか。近年品格を無くしているように見える。トランプ大統領は高い関税を提示し、日本とは交渉結果しかるべき関税率に合意したが、日本からの投資5500億ドル(81兆円)を、我々(アメリカ)の資金であり我々の好きなように使用できると国民に説明するなど、やり方に品格を感じない。トランプ大統領は「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」を唱えるが、グレイト(偉大)には品格が関係すると思うのだがどうだろうか。
国家の品格を取り戻すために著者は武士道精神の復活を言うが、共感する。武士道精神は新渡戸稲造が説くにように、義、勇、仁、誠、名誉、忠義、克己の精神であるが、このような精神は、人間の「品性」に帰着すると考えられている。国家に品格があるように人に品性がある。武士道による人間教育は、こうした高尚な品性の育成にあった。そして人の品性が国家の品格をつくり出す。人間の品性を涵養する武士道の教育理念は時代を超えた価値を持つと思う。
もう一つ。武士道で非常に重要と考えられてきたのが義利を弁える精神である。江戸時代のように利(利益、損得勘定)を全面的に否定する必要はないが、経済的利益、金銭的価値を追い求める現代社会にあって、利よりも義をはるかに重く見た武士道精神で現代に深い反省を加えたい。真の利益、長期的な利益は義から生まれるという見解もある。義利を弁える実践知を哲学的、倫理的、科学的に追求したい。
(令和7年9月1日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。