自衛隊ニュース

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郷土と共に歩む

写真=新町通りでの市中パレード


第9師団 63周年 青森駐屯地 74周年


 第9師団(師団長・松永康則陸将)は、6月7日及び8日に、「第9師団創立63周年・青森駐屯地開庁74周年記念行事」を挙行した。

 両日とも晴天に恵まれ、7日は青森市新町通りにて市中パレードを実施し、大勢の来場者が見守る中、第9音楽隊の演奏の下、観閲部隊指揮官の岡部副師団長が率いる師団隷下部隊及び方面直轄部隊、海上自衛隊及び航空自衛隊から成る観閲部隊が威風堂々と行進した。沿道に詰めかけた観衆からは拍手や歓声が送られ、「走っている車が全部かっこよかった」「国を守るために頑張っている人たちを間近で見てありがたさを改めて感じた」等の声が聞かれた。

 8日は、約4000人の一般来場者が青森駐屯地を訪れた。記念式典において執行者(師団長)は式辞の中で、これまでの第9師団を支えた「諸先輩への敬意」を示すとともに「地域の皆様への感謝」を述べた。また、戦闘訓練展示、装備品展示、音楽演奏等、各種イベントも人気を博し、多くの来場者に楽しんでいただいた。来場者からは、「並んでいる姿がかっこよかった」「音の迫力が凄い」「昨日と今日、初めて見たが来年もまた来たい」等の声が聞かれ、大変有意義な記念行事となった。

 師団は、これからも郷土との絆を大切にし、県民の信頼に応えられるよう精進する。



第2師団75周年

旭川駐屯地73周年


 第2師団(師団長・大場剛陸将)は、6月15日に旭川駐屯地において「第2師団創立75周年・旭川駐屯地開設73周年創立記念行事」を開催した。

 同創立記念については、第2師団管内の各自治体の首長や国会議員、自衛隊OB等の方々に出席していただき、旭川市民等含め約5600人が来場した。

 観閲式では、師団長が「陸上自衛隊としての使命を深く認識し、国民や地域の皆様の期待に応えられるよう全力を尽くしたい」とあいさつした。

 その後は、隊員や車両による観閲行進、第2音楽隊と太鼓チームによる演奏を実施し、メインイベントである訓練展示では、UH1(ヘリ)、蒼天(ドローン)、バイク等による偵察活動から始まり、10式戦車や99式自走りゅう弾砲等による迫力ある火力戦闘を実施し、最後は戦車と普通科部隊の軽快な突撃で、来場者を沸かせた。訓練展示終了後は、99式自走りゅう弾砲等の乗車体験、装甲車や防弾チョッキ等の装備品展示、ふわふわ戦車すべり台やストラックアウト等のアトラクション等で、駐屯地内を最後まで盛り上げた。



名寄駐屯地72周年


 名寄駐屯地(司令・大谷進一郎1陸佐)は、6月8日「陸上自衛隊名寄駐屯地創立72周年記念行事」を挙行した。

 観閲式では、多くの来賓と来場者が観覧する中、駐屯各部隊が観閲部隊(指揮官・加藤忠幸2陸佐)として251名の隊員が参加し、観閲官(大谷1佐)及び名寄市長(加藤剛士氏)の巡閲を受けた。

 観閲行進に先立ち第2偵察隊(隊長・加藤2佐)が偵察用オートバイによる卓越したオートバイドリルを観衆に披露した他、格闘指導官が各状況に応じた徒手格闘を演武した。その後、各部隊の車両99両が続々と行進を実施し、各部隊長及び車長が威風凛然と観閲官に対し敬礼するとともに観衆に部隊の精強さを誇示した。

 観閲行進終了後には99式155ミリ自走りゅう弾砲、96式装輪装甲車、高機動車及び資材運搬車の乗車体験、駐屯各部隊の装備品を展示した他、駐屯地史料館(北勝館)見学や、名寄自衛隊協力婦人会(会長・吉田素子氏)による呈茶コーナー及び駐屯地曹友会(会長・仁平直樹陸曹長)によるちびっこコーナー等、各種イベントを実施して来場者を楽しませた。

 また、会場の一角には数多くのキッチンカーや売店が軒を連ね、休憩スペースは多くの来場者で賑わいをみせた。正午過ぎには駐屯地音楽隊(隊長・千葉彰彦曹長)が音楽演奏を、続けて名寄朔北太鼓(リーダー・近藤弘道2曹)が太鼓演奏を披露すると観衆の注目を集め、曲が終わるたびに多くの拍手が鳴り響いた。

 駐屯地は、引き続き地域と密接に連携するとともに「活力のある健全で信頼される駐屯地」を目指していく。

ノーサイド 北原巖男

国連三角パートナーシップ・プログラム(TPP)

 7月1日から5日まで、国連における「国連三角パートナーシップ・プログラム(Triangular Partnership Program:TPP)」の最高責任者であるアトゥール・カレ国連オペレーション支援担当事務次長が、同プログラムの企画・立ち上げ・推進を主導して来ている部下の伊東孝一国連オペレーション支援局上席プログラム・マネジャーと一緒に来日されました。(ちなみに、カレさんが東ティモールにて国連事務総長特別代表を務められ、伊東さんがカレさんの補佐官を務めておられたときに、筆者は日本大使としてお二人に大変お世話になりました。爾来、今日まで親しくさせていただいております。また、筆者は伊東さんについて、高い志と責任感を有する人間味豊かな日本人国連職員であると考えています。これから一人でも多くの若い日本の皆さんが、国連職員として活躍して行かれることを願って止みません。)

 「国連三角パートナーシップ・プログラム」(国連TPP)は、国連の総合調整の下、①国連、②技術や装備を有する支援国、③PKO要員派遣国の三者が互いに協力し、必要な訓練や装備品の提供をPKO要員派遣国に行うことで、PKO要員の能力を向上し、PKOをより効率的に行うことを目指す、国連のPKO能力構築事業です。

 10年前の2015年に開始されました。

 「自国単独では実施が困難な専門性の高い訓練を受けることができ、任務遂行に必要な高い能力を保持した要員及び部隊の派遣が可能。また、教官養成コースを修了した要員を中核として、自国で最新のカリキュラム、教材を活用した訓練の実施が可能。」(国連ファクトシートより)

 最新の「外交青書2025」(令和7年度版 6月30日 外務省刊)は、「革新的な協力の枠組み」と記述しています。

 実は、この枠組みの立ち上げに政治的リーダーシップを発揮されたのは、「積極的平和主義」に基づき、PKOへの貢献を更に拡充させていく考えを有しておられた安倍晋三首相なのです。前年の2014年9月、安倍首相が第1回PKOサミットにおいて、PKOが適切な要員と装備品を備え、ニーズに即応し、現場で速やかに活動を開始することができるための支援を実施する旨、表明したことに始まります。

 更に特筆すべきは、日本が主導したとはいえ、スタートした2015年当時、この国連TPP支援国として参加していたのは日本一国のみだったことです。

 しかし、今や、支援国は40を超え、訓練を受ける国も含めると100か国以上が参加するに至っています。

 これまで日本は、施設(工兵)・医療・情報通信等、各種分野の活動実施に要する資金の提供をはじめ、アフリカやアジア、同周辺国のPKO要員派遣国に対し、重機操作や救命訓練等について自衛隊員を教官として派遣する等、多大な協力を行ってきています。

 訓練目的の技術の修得のみならず、PKO要員として保持すべき規律や任国の皆さんに対する誠実な対応等についても、自衛隊員の皆さんを通じて、おのずと身に付けて行っているのではないかと思います。

 6月28日、夜7時のNHKテレビのニュースには、次のようなインタビューも紹介されていました。

 「三角パートナーシップ・プログラムに参加しているカンボジア軍のキムスン・ローリー准将は、NHKの取材に対し、「このプログラムは非常に有益だ。訓練に参加したPKO要員は、国連の活動に派遣され、良い仕事をしてくれた。カンボジアは1990年代に世界各国からPKOを受け入れた。今度はわれわれが紛争下にある国でお返しをする番だ」と話していました。

 カレ事務次長は、中谷 元 防衛大臣や林 芳正 官房長官等を表敬訪問されると共に、都内での講演会も実施されました。

 カレ事務次長は、発展を続けている国連TPPにおける一貫した日本の貢献、厳格な規律を保持し高い技術能力を有する自衛隊員による各国PKO派遣要員に対する親身な指導等に心から感謝されていました。そして、国連TPPは、費用対効果の高い取り組みであり、引き続きTPPを通じた質の高い訓練を日本と連携しながら提供して行きたい旨、述べていました。

 これまで我が国は、30年以上にわたって、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなどにおいてPKO活動を実施し、内外から高い評価を得て来ました。この間、2007年には、PKO活動を、これまでの自衛隊の「付随的業務」から、我が国の防衛や公共の秩序維持などの任務と並ぶ自衛隊の「本来任務」に位置付けています。現在は、国連南スーダン共和国ミッション及び多国籍部隊・監視団にそれぞれ司令部要員を派遣しています。

 こうした派遣は、これからも必要に応じ、検討の上、続けて行くと思われますが、むしろ今後は、国連TPP派遣が中心になって行くのではないかと思います。そして多分野におけるニーズに対応する質の向上は益々重要になり、それだけに訓練の質の向上が欠かせません。訓練等を提供する支援国たる我が国の責任も一層重大になって参ります。

 ところで、我が国は、米国、中国に次ぐ第3位のPKO分担金拠出国として財政負担を行っています。こうした中で、今、最も懸念されるのは、分担金に対するトランプ大統領の対応です。負担率が減ることはあっても増えることなど、もはやあり得ない状況です。日本として、どう関わって行くか、悩ましい問題です。

 都内でのカレ事務次長の講演時、開会の挨拶に立った兼原信克笹川平和財団常務理事の、国連TPPと政府安全保障能力強化支援(OSA)との組み合わせやイギリス、オーストラリアが実施している能力構築支援との連携についての提言は、検討に値するものと思料します。

 体温を超えるような猛烈な暑さが続いています。正に灼熱地獄日本。加えて、ゲリラ豪雨の襲来。さらにはトカラ列島群発地震の底知れない不安・・・。

 こうした中にあって、また、我が国を取り巻く現下の厳しい国際軍事情勢の中にあって、頭に浮かんで来るのは、いかなる事態の生起に際しても、国民の負託に応えることが出来るよう、日々訓練等に努めている自衛隊員の皆さんです。

 改めて、熱中症に対する厳重な警戒と安全管理の徹底をお願いいたします!

 応援しています!

  

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

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