自衛隊ニュース

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ACITESC<7師団>

〝新たな戦い方〟を普及

写真=目標地域へ突入する戦車部隊


 第7師団(師団長・武田敏裕陸将)は、5月30日から19日までの間、北海道大演習場恵庭・千歳地区において、令和7年度機械化部隊近接戦闘訓練評価支援センター方式による対抗演習(AC‐TESC)を実施した。

 本訓練は、第7師団長を担任官とし、レーザー光線を用いた交戦訓練装置(バトラー)を使用する実戦的な戦闘行動によって、「攻撃・防御」または「遭遇戦」課目における、中隊長以下の戦闘指揮と各職種の戦闘力を組織化して行動する能力を向上することを目的として実施した。

 本訓練は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境下において、抑止の意思と能力を示し、また、侵攻戦力を阻止・排除する対処力を向上させるための訓練であり、北海道に所在する各師・旅団から、普通科中隊、戦車中隊ならびに機動戦闘車中隊等を基幹とする部隊が参加した。

 また、本訓練を活用して「今戦える師団への進化」及び「新生機甲師団の創造」に向けた「7つの取組み」を推進するため、実動訓練に先立ち、当初の3日間で第7師団の全隊員に対し、現代戦の戦い方(ドローン対処、ドローンを用いた障害処理要領等)についての普及教育を行い、各部隊及び隊員の意識改革を図った。

 訓練間、各部隊は任務達成のため、地上部隊とドローンにより継続的に敵情を収集し、機甲部隊による戦闘に加え、普通科部隊による下車戦闘や特科部隊による砲迫火力、施設科部隊による障害構成・処理など、各部隊の持つ総合戦闘力を発揮して戦闘を行った。この際、普及教育により修得した現代戦の新たな戦い方も積極的に取り入れていた。

 また、第7師団は、本訓練を報道各社等に報道公開するとともに、演習場近隣の自治体、協力団体等に研修いただき、師団の活動に対する理解を深めていただいた。

 第7師団は、いかなる任務をも完遂し得る陸上自衛隊唯一の機甲師団として、武田師団長を核心とし、「今戦える師団への進化」及び「新生機甲師団の創造」のため引き続き実戦的な訓練を続けていく。

FTC長が豪軍CTC初訪問

写真=FTC長(左)と豪CTC長


 富士学校部隊訓練評価隊(FTC)隊長の中嶋豊1陸佐は、5月30と31日、豪州クイーンズランド州タウンズビル演習場において、令和7年度米豪軍との実動訓練「サザン・ジャッカルー25(SJ25)」を統裁するマイケル・キャーンズ豪陸軍戦闘訓練センター長と懇談し、相互の理解促進を図った。

 FTC長が訪豪するのは初めて。本訪問を通じて、豪CTCの演習統裁、訓練評価要領を確認するとともに、部隊及び隊員に対するコーチング技法及び日豪で使用している評価装置に関して相互に意見交換して、じ後の訓練評価要領の資を得ることができた。

 また、SJ25にFTC分析官を派遣して豪コーチとともに行動して日豪の連携強化を図ることができた。

カンボジア陸軍に要人警護の指導

写真=不測事態対処要領を指導


 中央即応連隊(連隊長・後藤仁志1陸佐)は、5月23日から6月10日までの間、カンボジア王国において実施された「令和7年度カンボジア王国陸軍に対する要人警護に係る技術指導」に陸上自衛隊教官団として参加し技術支援を担任した。

 本技術指導は、カンボジア王国陸軍の教官要員に対し、要人警護の技術指導を実施して同軍の要人警護に係る練度を向上させるとともに、陸上自衛隊とカンボジア王国陸軍の相互理解・信頼関係の強化に寄与することを目的に行われた。

 26日、オープニング・セレモニー実施後に「警備概説」の座学から教育が始まり、翌日から被教育者を数個のグループに分け「警護隊形」「車両乗下車要領」「屋内通過要領」等の課目を開始した。教育開始当初は、不自然だった各人の動作も、数日で警護班内の意思疎通や連携がスムーズにできるようになった。教育間カンボジア王国陸軍の隊員は、熱心に教育に取組んでおり、不明な点があれば積極的に質問し、メモを取るなど教育内容を漏らさず全て吸収しようという熱意にあふれていた。教官たちは、言葉の説明のみならず、地面に要図を描画するなど理解容易な様に教え方を工夫し、実習時には隊員個人の動作や班内の連携要領について熱心に指導した。この教育期間を通じて両国の隊員は、お互いに言葉の壁を越えて強固な信頼関係を築くことができた。

 教官団は、訓練最終日である6月4日にカンボジア王国陸軍司令官マオ・ソパン陸軍大将との懇談において、司令官から直接本教育に対する感謝の言葉を頂いた。教官団長である本部管理中隊長は「貴国の隊員たちは、私たちが教えた技術や知識をしっかり吸収して、カンボジアの要人及び国を護るために働いてくれるものと確信しております」と訓練の成果を述べた。

NATО高官等と意見交換
石川長官、防衛産業フォーラムで

写真= 右からスウェーデン・ヨンソン国防大臣、ドイツ・ピストリウス国防大臣


 6月24日、石川武防衛装備庁長官は、NATO首脳会合防衛産業フォーラム(NSDIF25)に参加した。

 本フォーラムでは、NATO及び各国の高官や防衛産業の幹部が一堂に会して、厳しい国際安全保障環境下での防衛産業基盤の強化について活発な議論を行った。日本は、インド太平洋パートナー(IP4‥日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国)として招待を受け、石川長官(写真左から2人目)と三菱電機株式会社の洗井執行役員兼防衛・宇宙システム事業本部副事業本部長(同左端)が参加した。

 石川長官は、今般日NATOハイレベル(審議官級)防衛装備・産業対話の立ち上げが合意されたことを歓迎するとともに、この機を捉え各国の高官等と意見交換を行い、日本とNATO諸国との防衛装備協力の重要性、標準化の取組みを含む日本が実施している諸政策について説明した。

 今回のNATO首脳会合防衛産業フォーラム(The NATO Summit Defence Industry Forum 2025, NSDIF25)は、NATO(北大西洋条約機構)、オランダ国防省、オランダ外務省、オランダ産業雇用者連盟が共催で開催。各国より政府代表者1名と防衛産業代表者1名が参加した。前回(2024年7月)のワシントンでの開催(NATOと米商工会議所が主催)に続き、NATO首脳会合でのフォーラム開催は今回が2回目となる。

国際最先任等会同でブリーフィング

写真=齋藤統幕最先任


 5月27日から29日、統幕最先任の齋藤高行准陸尉はポルトガル・リスボンで実施されたNATO主催の国際最先任等会同に参加し、インド太平洋地域に関するブリーフィングを行った。齋藤統幕最先任は、同地域における中国による軍事活動の活発化、北朝鮮によるミサイル発射、中国・ロシア機に対する緊急発進の急増等、一層厳しさを増す日本周辺の安全保障環境を説明。その上で下士官交流を強化すべきだとし、同盟国の米国はもとより、オーストラリア、インド、カナダ、ニュウージーランド等のパートナー国との連携を強化するとともに、イギリスやフランス、ドイツ、イタリア等のEU諸国と積極的に連携していくべきだと主張。「自由で開かれたインド太平洋」実現のため、日本は価値観を有する全ての国と協力していくと述べた。

 本会同では、下士官レベルの相互運用性の向上や人材育成等について意見交換を行うとともに、今後、連携を一層強化する方向で一致した。

 参加国:35か国(NATO加盟国+日本、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、アイルランド、ヨルダン)

機略縦横(97)

中部航空警戒管制団准曹士先任
准空尉 宮川 仁司

指導は激励



 「人は石垣、人は城」‐これは、戦国武将・武田信玄の言葉であり、人こそが組織の力であるという心理を示しています。私は准曹士先任として『指導は激励』であると心がけ隊員一人ひとりと向き合うようにしています。様々な人生、環境、価値観を持つ隊員一人ひとりと向き合い、先ずはしっかりと耳を傾け、心に寄り添う。そして、できる限りの励ましを届けることで、少しでも前向きな気持ちを持ってもらいたいと願っています。それぞれの隊員が持つ個性(材)を活かことで、組織や社会にとってなくてはならない存在(財)になって欲しいーそう強く思っています。石垣の一つひとつの石にも置かれた場所でしか果たせない役割があるように、隊員一人ひとりにも今いる場所で果たすべき使命があります。私は未来を担う人財は、励ましの声が飛び交う場所にこそ集まり、育つと信じています。だからこそ、感謝の心を忘れず、今日も熱意を持って全力で激励を続けていきます。

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