自衛隊ニュース
クマ対策支援の活動を開始
秋田県と協力協定書交わす
写真=駆除後のクマを運搬する隊員(陸幕提供)
11月5日、クマによる人的被害が深刻化する秋田県で、陸上自衛隊第21普通科連隊(秋田駐屯地)の隊員15名が対策支援活動を開始した。これに先立って同日午前、県庁では第9師団長の松永康則陸将と鈴木健太秋田県知事が被害防止に関する協力協定書を取り交わした。
自衛隊は、「訓練の目的に適合すれば自治体等の業務を受託できる」と規定した自衛隊設置法第100条等に基づいて、箱わなの運搬、見回りにともなう猟友会等の人員輸送、駆除後の熊の運搬及び埋設のための掘削、情報収集といった後方支援を行う。期間は11月30日まで。
自衛隊は、運搬等を行う「作業組」、周囲を監視する「監視組」、上空から情報収集を行う「ドローン組」の編成で支援にあたる。5日は、箱わなを6キロ離れた別の場所に運んで設置し直した。設置は資格が必要なため地元猟友会とともに作業した。翌6日は猟友会が駆除したクマ1体を運搬した。
隊員は安全確保のため、背面に金属プレートを挿入した防弾チョッキを装着し、熊スプレーも携行する。監視組は防護盾と、銃剣道で使用される長さ約170センチの木銃、ネットランチャーを装備し、クマに遭遇した際はこれらを使用してクマを追い払う。
県内での支援は、鹿角市以外に、八峰町、大舘市、北秋田市とも調整中だという。
秋田県のクマ被害をめぐっては、10月28日、防衛省で小泉大臣が鈴木知事から被害防止支援に関する要望書を受け取り、その後支援内容について調整を進めてきた。面談時に鈴木知事は「何でも自衛隊に頼めるものではないと理解しているが、それでも防衛省・自衛隊の力を借りないと国民の命が守れない」と述べていた。
オリエント・シールド25
<中部方面隊>
写真=共同衛生訓練
中部方面隊(総監・遠藤充陸将)は、9月16日から同月24日までの間、米豪軍との実動訓練(オリエント・シールド25)を関山演習場(新潟県上越市、妙高市)、米陸軍経ヶ岬通信所(京都府京丹後市)等で行った。
遠藤総監は、9月16日、関山演習場で行われた訓練開始式において、日米豪参加隊員に対し、本訓練の重要性を強く認識し、「戦闘力の組織化」により運用の実効性を向上するとともに、「相互運用性の向上」により日米豪陸軍種間の連携をより強固にすることを要望した。
今回の訓練は、日本国内で初めて豪陸軍が参加する日米豪共同の実動訓練となるほか、訓練効果を増大させるため、YS89の指揮所演習において米豪軍と連携した経験を踏まえ、共同戦闘訓練、共同基地警備訓練、共同衛生訓練等、実際的な訓練を実施し日米豪の作戦遂行能力の向上を図った。
引き続き、中部方面隊は、国民の皆様の信頼と期待に応えるため、より強靭な中部方面隊となるよう隊務に邁進していく所存である。
衛星大手ICEYEとIHI
製造・運用の正式契約を締結
地球観測衛星コンステレーション構築へ
写真=署名式後の記念撮影に納まる井手社長(前列右)、モドジェフスキCEO(同左)。防衛省関係者(後列右端、その左)も加わった=10月16日、IHI本社で
安全保障にも寄与
小型SAR(合成開口レーダー)衛星の先進的企業「ICEYE」(=アイサイ、本社・フィンランド)とIHI(同・東京都江東区)はIHI本社で10月16日、安全保障をはじめとする各分野に情報提供する地球観測衛星コンステレーション(連携・運用システム)構築に向けての正式契約を締結した。
光学衛星と異なりレーダーの跳ね返りを収集するため、雨や雲など天候に左右されず、また昼夜を問わず観測できるSAR衛星。
ICEYEは2018年以降、これまでに54基を打ち上げ、同衛星の世界最大級のコンステレーションを所有する。
地上のどれ位の大きさまで識別できるかを示す解像度は最大25センチ、撮影エリアは同200キロ×300キロ。軍事上の戦略拠点や国境の監視、森林破壊のモニタリングなど「ニーズに合わせた各種のデータを共有することができる」(ICEYEジャパン担当)。
IHIは今回、4基のSAR衛星および関連する撮影画像取得システムを発注した。来年4月ごろから段階的に運用を開始し、データ提供を進める。2029年度までに全24基によるコンステレーションの構築を完了させる見込みだ。
署名式後、ICEYEのラファル・モドジェフスキCEOは「日本が自らの手で高精度な地球観測データにアクセスできる環境の実現、宇宙からのインテリジェンス分野でのリーダーシップ強化に貢献したい」。
またIHIの井手博社長は、「(コンステレーション構築は)日本の国家安全保障、経済安全保障を強化するだけではなく同盟国、同志国との協力・連携を深化する上で重要な役割を果たすと考えている」と意義を語った。
国外で航空機をチャーター
訓練に向かう隊員の負担を軽減
写真=チャーター機に乗り込む隊員
防衛省・自衛隊は、限られた人材を効率的に活用するため、隊員が行う業務の一部を部外に委託し、第一線部隊に優先配置することを目的として、民間力の活用を推進している。陸上自衛隊では、駐屯地の総務・庶務・広報等の業務や、ヘリ操縦士の教官・整備等を部外に委託しているところもある。また、能登半島地震の災害派遣において、被災者の休養施設や活動拠点となった民間資金活用方式(PFI)船舶の活用等もそのひとつの例だろう。
移動時間を大幅に短縮
8月20日、陸上自衛隊の隊員約300名の内150名が、米軍やインドネシア軍等との実働訓練「スーパー・ガルーダ・シールド25」に参加するため、インドネシア国内のジャカルタ・ハリム空港と同軍のガトット空港間にて民間チャーター機を利用して移動した。民間の定期便は欠航等で訓練に間に合わない恐れもあり、これまでは6~7時間かけて陸路移動をしていた。そこで、処遇改善という観点からも訓練に万全の状態で臨めるよう、陸上幕僚監部が民間の旅行会社に相談して今回のチャーター機による移動が実現した。空路での移動はわずか1時間で、隊員からも好評だったようだ。
柔軟な対応が求められる
今回の事業を担当した陸幕訓練課の畑3陸佐は「本訓練では、隊員が訓練に集中できる環境を整えることを重視しており、その一環として、車両移動に加えて民間チャーター機を役務契約により調達しました。これにより、移動時間の短縮と快適性の向上が図られ、隊員の身体的・精神的負担が軽減されました。また、長距離移動による疲労を最低限に抑えることで、現地到着後は速やかに訓練準備に移行することが可能となり、訓練の質と効率性の向上にも寄与しています」と評価する。その上で、今後については「運用にあたっては、契約企業による現地空港との調整や運航スケジュールの確保が必要であり、今後の演習や実任務においても、状況に応じた柔軟な対応が求められます」と述べた。
日本人スタッフが同行
今回、チャーターによる支援を行った株式会社JMRS(中鉢真輔代表取締役=東京)は、成田空港を拠点にグランドハンドリング会社をもつ。グランドハンドリングとは誘導、荷物の積み下ろし、給油等航空機の発着に必須の地上支援業務のことで、今回もその会社から自衛隊OBを含む日本人スタッフが同行した。JMRS社の須賀氏は、「国外で航空機チャーターを実施するのは初めてでした。南西諸島や台湾での有事の際に、グランドハンドリングスタッフが不足して、航空機が発着できないことも想定されます。今回の国外でのチャーター機による移動実績が、そのような事態で活動するための良い経験となりました。今後も様々な形で自衛隊のお役に立てれば」と振り返った。
機略縦横(105)
航空中央音楽隊准曹士先任
准空尉 山田 晃代
部隊で働くというのは、他人と働くということです。複数の他人同士の集まりですから、当然考え方や価値観の違いはあります。良い悪いでは判断出来ない問題で意見の食い違いが出た場合、解決が困難になることがあると思います。
その際に大事になるのが「違いを認め合う」ということです。おそらく誰しもが分かっていることだと思いますが、実際に自分とは違う他人の価値観を認めることが出来ているでしょうか?私自身を振り返ってみると、やはり他人の価値観を受け入れることはなかなか難しく、頭の中で反射的に否定してしまうこともあります。
そのような時、私は「この人が大事にしたいことは何だろう?」と考えるようにしています。自分に大事なことがあるのと同じように、相手にも大事にしていることがあるはずです。
大事なものだからなおさら譲れないという難しさもありますが、相手の立場に立って想像し理解しようとすることが歩み寄るきっかけになり、その時初めて見えてくるものもあるのではないでしょうか?