自衛隊ニュース
防衛装備庁が創立10周年
防衛産業との連携強化進める
写真=訓示を述べる中谷大臣
10月1日、防衛装備庁(青柳肇長官)が創立10周年を迎え、防衛省で記念行事が行われた。防衛装備庁は2015年に装備品取得の効率化と最適化を目的に、当時の装備品取得関連6部門(内部部局・陸海空幕僚監部・技術研究本部・装備施設本部)を集約・統合して新設された。この日は、中谷元・防衛大臣(当時)と青柳長官がA棟講堂で装備庁職員約700名を前に訓示を行った。中谷大臣は防衛装備庁が直面する課題は想定を遥かに上回るスピードで変化しているとの認識を示し、「変化にしっかりと対応できないと取り残されてしまうという危機感のもとで、これからも新たにいろいろなことにチャレンジしてほしい」と求めた。
前回の防衛大臣在任中に、創設に立ち会った中谷大臣。この10年間で①防衛生産基盤強化法の制定、②防衛技術指針の策定、③海外への装備移転、④装備品の最適化への取り組みによる成果、といった大きな進展が職員の努力によって達成されたことに謝意を表した。具体的な成果としてフィリピンへの警戒監視レーダー、オーストラリア次期汎用フリゲートにおける護衛艦「もがみ」型の向上型の採用、日英伊共同による次期戦闘機開発等を挙げた。また、防衛産業との連携強化についても言及し、「防衛力の抜本的強化を実現するためには、防衛産業とともに知恵を絞り、共に汗を流し、パートナシップを強化してほしい」と期待を寄せた。
青柳長官は「優れた技術を防衛分野に取り込めるかが戦いの帰趨を決める」との見解を示し、スタートアップ企業による新規参入や既存の防衛関連企業とのマッチングが急務だと指摘し、官民一体となって連携していくことの重要性を強調した。
航空警務隊は70周年
写真=式辞を述べる大久保司令
航空自衛隊航空警務隊(司令・大久保正広1空佐=市ヶ谷)が9月20日をもって創設70周年を迎えた。航空警務隊のはじまりは昭和30年まで遡り、越中島に本部が設置され、三沢、松島、浜松、防府、築城に各分遣隊が編成された。その後昭和53年に22個地方警務隊改編等を経て、70周年の節目となる今年4月、巧妙化・複雑化する犯罪に柔軟かつ組織的に対応するため、これまで約47年もの間続いた22個地方警務隊が、千歳、三沢、入間、小牧、春日、那覇の6個に集約された。
10月8日、航空自衛隊市ヶ谷基地で「航空警務隊創設70周年記念式典」が、航空幕僚監部総務部長代理で総務課長の中村誠1空佐と、同課警務管理官の泉俊光1空佐を来賓として迎え、航空警務隊隊員本部、各地方警務隊長及び各地方警務隊准曹士先任ら約30名が参列して厳粛に執り行われた。
大久保司令は式辞で、「伝統を守りながら時代の要請に応じた進化が必要だ」との認識を示し、「捜査運用・捜査指揮・捜査技術等の能力を向上させ、組織としての対応力を高めるとともに、人としての成長を高めることが重要だ」と求め、「公平公正な姿勢を貫き、諸官が誇りをもって職務に邁進できる環境を整備することで、真に機能する航空警務隊としての新たな歴史が創られるだろう」と述べた。
来賓を代表して中村1佐が祝辞を述べ、「70年の歩みを礎とし、航空自衛隊唯一無二の存在として、隊員各位がプロフェッショナルとしての矜持を胸に、任務に邁進してほしい」と期待を寄せた。
荒井陸幕長が
米陸軍長官と会談
写真=荒井陸幕長とドリスコル長官
10月3日、荒井正芳陸上幕僚長は、ダニエル・P・ドリスコル米陸軍長官と市ヶ谷駐屯地で会談した。8月の着任以降、国外の高官を公式招待するのは今回が初めて。荒井陸幕長はドリスコル長官の訪問を歓迎すると共に、今年3月の日米防相会談で一致された、南西地域の防衛における日米共同プレゼンスの拡大に基づいて、今後も連携していくことを確認した。ドリスコル長官は、米陸軍が進める無人機等を含む近代化について説明し、「同盟国としてしっかりと同じ認識を持つことが重要だ」と述べた。
また同月13日から15日まで、德永陸幕副長がアメリカ陸軍協会年次総会(AUSA)に参加し、各国の無人化・自立化関連技術等を視察。ドリスコル長官からも説明を受けた。
海幹校でWPNS STEP
30カ国の若手士官と信頼関係深める
写真=開式の挨拶を行う石巻学校長
9月30日から10月7日、海上自衛隊幹部学校(学校長・石巻義康海将=目黒)は、「第13回西太平洋海軍シンポジウム次世代海軍士官短期交流プログラム(WPNS STEP)を同校や横須賀地区等で開催した。インド太平洋諸国等の海軍大学等の少佐や大尉の学生等を招へいし、討議や研修を通して日本の安全保障政策の理解促進、参加国同士の相互理解促進、多国間協力推進のための土台構築を目的として2011年から毎年行われている事業だ。今回は30カ国から1名ずつと、幹部学校指揮幕僚課程に留学中の5名、在校中の自衛官約30名が参加し、「信頼の海‐多様化する課題に対する海軍種間の協調‐」を主題のもと、人道支援/災害救援(HA/DR)等について、グループにわかれて議論を深めた。
石巻学校長は、開式の挨拶で「本プログラムを通じて、皆さまの相互理解が深まり、海のように世界を繋ぐ友情と信頼関係が芽生えることが、このプログラムの本質です。これらは将来、各国海軍のリーダーとして組織を担う皆さまにとってかけがえのない財産になるものと信じています」と述べた。
本プログラムは、2000年に始まった当初は、WPNS加盟28カ国を対象としていたが、現在では南アジア、中東、ヨーロッパを含む38カ国を招待するまでになった。今回はスペインが初参加。過去最多となった参加国は以下のとおり。オーストラリア、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、カナダ、チリ、中国、ジブチ、フィジー、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、マレーシア、ニュージーランド、オマーン、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、韓国、サウジアラビア、シンガポール、スペイン、スリランカ、タイ、トンガ、英国、米国、ベトナム
陸自教育訓練研究本部がウェビナーを開催
「有人・無人の戦い方」等をテーマに
7月29日、令和7年度教育訓練研究本部ウェビナーが開催された。今回は、「領域横断作戦」と「有人・無人の戦い方」の2つのテーマが取り上げられた。
主催者として今回が最後となった廣惠次郎陸将(当時)は、冒頭の主催者挨拶において、日米相互運用性の向上に資する教育訓練研究本部の取り組みや陸上自衛隊の戦力化のプロセス、ウクライナ戦訓等をドクトリンなどに反映させることの重要性についてコメントした。
第Ⅰ部では、教育訓練研究本部研究部長の小山直伸陸将補が、ロシアによるウクライナ侵攻に見る領域横断作戦の事例やそれらを踏まえた成功の要件、作戦術を取り入れた効果的な作戦遂行等の視点から、「陸上自衛隊は領域横断作戦をどう戦うか」についての見解を示した。
続くパネルディスカッションでは、宇宙・サイバー・電磁波各領域の専門家をパネリストとして、「宇宙領域のレジリエンス」を如何に確保するか、「意思決定の優越」を獲得・維持するために各領域の能力を如何に連携・融合させるか、といった論点に基づき活発な議論が交わされた。
第Ⅱ部では、千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)所長の古田貴之氏が、AIやロボットの先端技術やそれらを駆使したアジャイル開発による装備化の提案等を含め、「有人・無人の戦いを制するには」というテーマで基調講演を行った。
パネルディスカッションでは、前段において、「無人システムは今後どう展開するか」について、ウクライナに見る無人システムの目覚ましい発展を示す事例、技術的な制約・限界、防衛産業のあり方等、様々な視点から活発に議論されるとともに、続く後段においては、「発展した無人機にどう対抗するか」について、将来戦における無人機の脅威認識に基づく、対無人機装備の開発・実装化の実情、それらの課題や可能性、産学官連携強化の必要性等について討議された。
12月に陸自の
フォーラムも
今回のウェビナーは、事前の登録者数が過去最多の約2450名、リアルタイムの視聴者数も1400名に及んだということで、ウェビナーへの高い関心が伺える。また、クロージングでは、総合司会の栗田千寿1陸佐から、陸上自衛隊が12月17日・18日に東京ドームシティで開催予定のランドパワー・フォーラム・イン・ジャパン「LFJ(エル・エフ・ジェー)」が告知された。
なお本ウェビナーの内容は、Youtubeにてアーカイブ配信されている。