自衛隊ニュース

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トウチとさくら

出陣式 士気高む<本部>

写真=だるまに目入れを行う横田本部長


 東京地方協力本部(本部長・横田陸将補)は4月10日、年度の開始にあたり、任務完遂の気構え及び一体感を醸成するとともに、各種目標達成と東京地本の飛躍を期することを目的として、「出陣式」を実施した。

 当日は天候に恵まれ、本部長以下所属隊員、東京地本各協力団体会長等が参加し、晴れやかな雰囲気の下で行事が行われた。

 新年度のだるまには「熱意と創意」、「笑門来福」の祈願文字が書き入れられており、本部長、副本部長、地区隊長等、また、東京地本各協力団体会長等による目入れが行われ、無事に開眼した。

 行事の最後は、高円寺募集案内所の打越2曹によるときの声で締めくくられ、新年度開始にあたり士気を高めることができた。

 東京地本はいつの時代においても時代の要請に応え得る防衛省・自衛隊のため、我々を信頼してくれている人たちのため、さまざまな変化に適応しながら各種業務を遂行していく。


初の激励交流会<城北>


 東京地方協力本部城北地区隊(隊長・小竹2陸佐)は3月2日、市ヶ谷駐屯地において東京都自衛隊家族会城北地区協議会とともに城北地区(新宿・豊島・板橋・北・練馬・中野・杉並)入隊入校予定者激励交流会を開催した。

 本激励交流会は、家族会及び地区隊として初めて企画したもので、多くの方々が入隊入校者に対し期待をしていることを伝え、同じ時期に入隊入校する仲間として交流を図り、入隊・入校に対する不安などを取り除き、安心して自衛隊員としての第一歩を踏み出してもらうために、東京都自衛隊家族会城北地区協議会と共催したものである。

 主催者である東京都自衛隊家族会城北地区協議会会長・佐竹氏をはじめ、来賓として東京地方協力本部長・横田陸将補、東京地本城北協力会会長・鈴木氏、城北地区募集連絡相談員協議会会長代理・佐々木氏など多数の臨席のもと、入隊入校予定者約60名と保護者約35名が本激励交流会に参加した。

 激励会では、緊張する入隊入校予定者に対し、東京地方協力本部長が緊張をほぐす温かいお祝いの言葉を述べるとともに、先輩隊員2名が熱量ある激励の気持ちを伝え、さらに東京都知事をはじめ部内外から届けられた多数の激励メッセージが紹介された。地本広報官によるらっぱ吹奏も会を盛り上げた。市ヶ谷の庁舎をバックに記念撮影を行う頃には参加者の緊張もほぐれていた。

 交流会では、陸海空自衛官13名のリクルータが先輩隊員として入隊入校予定者との交流を図り質疑応答をしたほか、入隊前の体験として「アイロンがけ」、「ロープワーク」、「体力検定」などを体験し、先輩隊員のみならず将来の同期と共に和気あいあいとした雰囲気の中で興じていた。

 さらに家族会会員が、保護者やご家族に対して隊員家族としての隊員のフォロー等について懇談するなど、不安の払しょくに務めていた。

 城北地区隊は、今後も入隊入校希望者のためにさまざまなイベント等を企画し陸海空自衛隊へ関心を持つ若者たちと同じ目線に立って歩むことで自衛官募集の拡充を図っていく。


読史随感<第172回>
神田淳

良寛の「愛語」

 良寛(1758~1831年)は江戸時代の禅僧。越後出雲崎の名主の家に生まれたが、出家し、備中円通寺(曹洞宗)で修業。印可を得て諸国を行脚したが、40歳の頃故郷越後に帰り、粗末な庵に住んで托鉢僧として暮らした。難しい説法はせず、わかりやすく仏教を教え、人々に親しまれた。

 良寛は九十箇条の言葉の戒め「良寛禅師戒語」を残している。この「戒語」について「読史随感」第12回(2018年9月「良寛の九十戒語」)に紹介した。良寛はまた、沙門良寛謹書として「愛語」を残している。この「愛語」がまたすばらしい。

 「愛語」全文(現代語に訳している):「愛語とは人々に接したとき、まず慈愛の心を起こし、いたわりの言葉をかけることを言う。およそ暴悪の言葉のないこと。世間には安否を問う礼儀の言葉がある。仏道においても、お大事に、といった挨拶の言葉や、いかがですかと年長者をいたわる言葉や行いがある。人々を慈しむこと赤子のように、といった思いで言葉を語るのが愛語である。徳のある人を褒め、徳のない人は憐れむ。愛語を心掛けていると次第に愛語が増えていく。そうすれば日頃知られず、見られなかった愛語も現れてくる。現世の寿命の続くかぎり、好んで愛語するのがよい。そうすれば未来の世まで愛語の功徳は変わらず続くだろう。怨みのある相手を穏やかにしずまらせ、指導者を和睦させるのも愛語を本とする。面と向かって愛語を聞けば喜びにあふれ、楽しくなる。人づてに愛語を聞けば、心の底に刻むことになる。愛語は愛心より起こると知るべきである。そして愛心は人を慈しむ心を種子としている。愛語は世の中を変える力のあることを学ぶべきであり、ただ能力を称賛するだけのものではない」

 「愛語」原文:「愛語ト云ウハ 衆生ヲ見ルニマヅ慈愛ノ心ヲオコシ 顧愛ノ言語ヲ ホドコスナリ オヨソ暴悪ノ言語ナキナリ 世俗ニハ安否ヲトフ礼儀アリ 仏道ニハ珍重ノコトバアリ 不審ノ孝行(こうぎょう)アリ 慈念衆生猶如(ゆうにょ)赤子(しゃくし)ノオモヒヲタクワエテ言語スルハ愛語ナリ 徳アルモノハホムベシ 徳ナキハアハレムベシ 愛語ヲコノムヨリハ ヤウヤク愛語ヲ増長スルナリ シカアレバ ヒゴロシラレズ ミヘザル愛語も現前スルナリ 現在ノ身命(しんみょう)ノ存スルアヒダ コノンデ愛語スベシ 世々(せぜ)生々(しょうじょう)ニモ不退転ナラン 怨敵ヲ降伏(ごうぷく)シ 君子ヲ和睦ナラシムルコト 愛語ヲ本トスルナリ 向(むかい)テ愛語ヲキクハ ヲモテヲヨロコバシメ ココロヲタノシクス 向(む)カワズシテ愛語ヲキクハ 肝に銘ジ 魂ニ銘ズ シルベシ愛語ハ愛心ヨリオコル 愛心ハ慈心ヲ種子トセリ 愛語ヨク廻天ノ力アルコトヲ学(がく)スベキナリ タヾ能(はさ)ヲ賞スルノミにアラズ」

 ところで、「愛語」の原作者は実は良寛ではなく、鎌倉時代の禅僧道元である。道元の主著『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』にこの「愛語」が書かれている。修行中の良寛がこれを読んで感動し、愛語の人生を送ることになった。晩年の良寛が記憶をたよりに「愛語」全文を書き写し、沙門良寛謹書として残した。道元の愛語は良寛によって再発見され、広まったといえる。

 良寛(及び道元)は人間の実生活における言語コミュニケーションの意義と重要性を知りぬいた人であった。言葉のコミュニケーションのあり方が家庭の幸福と社会の平和を支配する。愛語は人と社会を救済する力を秘めている。

 「愛語は世の中を変える力がある」と良寛(及び道元)が主張していることに、私は大きな希望を見出したい。

(令和7年5月15日)


神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

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