自衛隊ニュース

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豪軍サイバー指揮官を表敬
<自衛隊サイバー防衛隊司令>

写真=豪サイバーコマンド司令官ワトソン少将


 自衛隊サイバー防衛隊司令の木村顕継陸将補は3月17日から3月19日まで、オーストラリア軍のサイバーコマンド及び司令官等を表敬した。

 木村司令はキャンベラにある統合能力開発群司令官コイル中将(陸)を表敬し、コイル中将から初めての訪豪に感謝を受けるとともに、豪軍のサイバー関連部隊の概要、変革に向けた主要な課題、将来の方向性について説明を受けた。コイル中将は「日豪のサイバー連携の促進は、日豪防衛協力をより一層強化していくとともにインド太平洋地域の平和と安定を進めていく上で極めて有益である」と述べた。

 現地ではサイバーコマンド司令官のワトソン少将(陸)及びサイバーコンポーネントコマンダーのピティグルー准将(空)とも懇談し、サイバーの連携に係る具体的な議論及び現地視察を行った。また、懇談においては国家安全保障上のサイバーセキュリティ確保の必要性を認識するとともに、今後の「日豪の連携強化」、「サイバー能力の向上・サイバー人材の育成」などについて意見交換を行い、サイバー分野における日豪の連携について合意形成を図った。

 木村司令は「サイバー分野における日豪の連携の強化は今後の両国の安全保障・防衛協力において、極めて重要であり、平素からの情報共有やサイバー訓練を促進し、互いの協力関係をより強固なものにしていくため、引き続き積極的な交流を重ねていきたい」と述べた。

「防人」応援隊

<富国生命保険>

写真=キッズパオ防衛省市ヶ谷保育園


 富国生命保険相互会社(社長・渡部毅彦)は、全国8カ所の駐屯地・基地の託児施設へ「おやさいクレヨン」の配布を行っている。

 配布は2021年より4年ぶり2回目。「THE MUTUAL Art for children」おやさいクレヨンは、米ぬかから採れた米油とライスワックスをベースに、収穫の際に捨てられてしまう野菜外葉などを原材料に制作しているため、万一口に入れても安全だ。また、パッケージには福島県立郡山支援学校の生徒の作品を使用している。

 今回の寄贈は、3月25日の「リトルキッズクラブ真駒内ルーム」(4月15日号既報)に次いで、4月10日に「キッズパオ防衛省市ヶ谷保育園」への寄贈を行った。当日は防衛省OBで富国生命顧問の中野氏と田淵氏の2名が、本社から青木法人部長と丸茂業務部課長および小谷法人課長が立ち会った。

 平本園長は「入所している子供たちは年齢が低いので、具体的なお野菜の名前等はまだ理解できない子がほとんどです。ただ、食育の観点からお野菜を育てたりしているので、クレヨンとの色などの共通点から学びを得ています。万が一、クレヨンを口にしてしまっても安心感があってとても助かります」と述べた。

ノーサイド
北原巖男

本音

 世界を振り回し続けているトランプ大統領。そのウクライナとロシアの停戦に向けた仲介行動についても、縷々報じられる発言や立ち振る舞いに困惑したり、反発をも禁じ得ない僕です。そんな中、改めて「正義」等について考えるきっかけを与えてくれているのが、本年3月31日から放映中のNHKテレビの朝ドラ「あんぱん」。

 「〝アンパンマン〟を生み出したやなせたかしと暢の夫婦をモデルに生きる意味も失っていた苦悩の日々と、それでも夢を忘れなかった二人の人生。何者でもなかった二人があらゆる荒波を乗り越え、〟逆転しない正義“を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描き、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語です。」(NHKホームページ「この番組について」より)

 やなせたかしさんと暢さん夫妻をモデルにしてはいますが、あくまでもフィクション。中園ミホさんのドラマオリジナル作品。

 『アンパンマン』(当初は、幼児絵本はひらがな表記との公式に従い”あんぱんまん“。やなせさんは、パンという感じがカタカナでないとピンとこないので、その後カタカナに変えたとのこと)については、正直、「自分の顔をちぎってあげるなんて、気持ち悪い」と、僕も批判的でした。

 ーーところで、〝逆転しない正義〟ってなんだろう。

 やなせさんは、著書「アンパンマンの遺書」(1995年岩波書店刊)で次のように書いています。

 「ぼくは優れた知性の人間ではない。何をやらせても中ぐらいで、むつかしいことは理解できない。子供の時から忠君愛国の思想で育てられ、天皇は神で、日本の戦争は聖戦で、正義の戦いと言われればそのとおりと思っていた。正義のために戦うのだから生命をすてるのも仕方ないと思った。

 しかし、正義のための戦いなんてどこにもないのだ。

 正義は或る日突然逆転する。

 正義は信じがたい。

 ぼくは骨身に徹してこのことを知った。これが戦後のぼくの思想の基本になる。

 逆転しない正義とは献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく、眼の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えること。これがアンパンマンの原点になるのだ・・・」

 「ほんとうの正義というものは、けっしてかっこうのいいものではないし、そして、そのためにかならず自分も深く傷つくものです。そしてそういう捨身、献身、献身の心なくしては正義は行えませんし、また、私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、飢えということで、正義の超人はそのためにこそ、戦わねばならないのです。・・・自分をたべさせることによって、飢える人を救います。それでも顔は、気楽そうに笑っているのです。・・・顔がなくなってしまったアンパンマンは、エネルギーを失って失速する。この部分が描きたかったのだ。」

 そんなやなせさんには、お馴染みのアンパンマンのテーマソング「アンパンマンのマーチ」(作詞 やなせたかし 作曲 三木たかし)があります。全国の自衛隊員そして本紙読者をはじめ、皆さんのお子さん・お孫さん、更にひ孫さん達も、この軽快なメロディを口ずさんだり、大きな声で歌っているのではないでしょうか。

 ただ、その歌詞は、やなせさん自らが言うように、「幼児アニメーションのテーマソングとしては重い問いかけになっている。ぼくは、お子さまランチや、子供だましの甘さを嫌った。

 なんのために生まれて

 なにをして生きるのか

 わからないままおわる

 そんなのはいやだ!

 これはアンパンマンのテーマソングであり、ぼくの人生のテーマソングでもある。」(前掲「アンパンマンの遺書」より抜粋)

 更に、やなせさんには、宮城まり子さんが1962年のNHK「みんなの歌」の中で初めて歌った「てのひらを太陽に」(作曲 いずみたく)という歌があります。その一節。

 ぼくらは みんな生きている

 生きているから 歌うんだ

 ぼくらは みんな生きている

 生きているから かなしいんだ

 僕自身、何度かお世話になった忘れ難い歌の一つ。歌っていると元気が湧いて来るような気がしました。

 やなせたかしさんが、「この歌をつくった時は、僕はひどくおちこんでいる時で、仕事はしているものの目標がはっきりしなかった。」(前掲「アンパンマンの遺書」)と、おっしゃっていることを知って、何かとても親近感を覚えた記憶があります。

 絶望のとなり

 絶望のとなりに

 だれかが

 そっと腰かけた

 絶望は

 となりのひとに聞いた

 「あなたはいったい誰ですか」

 となりのひとはほほえんだ

 「私の名前は

    希望です」

 (「やなせたかし詩集 てのひらを太陽に」2024年河出文庫)

 献身と愛を以て本音の付き合いをして行く。自信はありませんが、一歩でも半歩でも前に進む。これからの僕にとっても目標のような気がします。

 ここまで拙稿を読み進めてくださったあなたは…。

  

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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