自衛隊ニュース

「絆ぐ」第5音楽隊
写真:来場者と共演
第5旅団(旅団長・岸良知樹陸将補)は、2月22日、音更町文化センターにおいて、「絆ぐ」をテーマに、「第5旅団第5音楽隊創立70周年・創隊50周年記念第52回定期演奏会」を実施した。
本演奏会は、第5音楽隊(隊長・吉田1尉)にとって年度の集大成であり、これまでに積み上げてきた演奏技術を発揮すべく、2部構成で幅広いジャンルの楽曲を繊細な表現力と美しい旋律でご来場の皆様を魅了した。特に指揮者である吉田隊長と演奏者である隊員の息の合った演奏は、迫力ある演奏となった。
演奏会中盤では釧路自衛隊知床流日本太鼓保存会による太鼓演奏が身体全体を使ったパフォーマンスと太鼓ならではの響きがご来場の皆様を魅了した。
そして今回の演奏会終盤では、新企画である「ご来場の皆様と共に音楽を演奏しよう」が設けられた。この企画は、音楽を愛する地域住民との交流を深めるため、事前に告知したものであり、選ばれた43名の皆様は、「子供が吹奏楽部でいつも演奏会を楽しみにしてていました。今回、自衛隊のプロの演奏家と一緒に演奏ができることなんて今後ないかもしれないから応募しました」などの理由から第5音楽隊と一緒に演奏したい方々が集まった。そして迎えた共演演奏の時間、参加者は第5音楽隊と一体となって美しい音色を届けて、会場の雰囲気をより一層盛り上げた。音楽の力で心を繋げる様子はまさに感動的で、参加者にとって演奏間、笑顔と楽しさが溢れて忘れられない思い出の日となった。
約900人のご来場の皆様からは「子供たちが最後まで楽しんでくれて、また家族で行きたいと思いました」、「将来は自衛隊に入隊して、第5音楽隊のような演奏をしたいです」などたくさんの言葉をいただいた。
第5旅団は、本演奏会を通じて、第5音楽隊が演奏する音楽の魅力を広めるとともに、地域住民との一体感を醸成することができた。
西部方面音楽まつり
ⅢMEFや地域の高校生とコラボ
地域とともに 未来をひらく 我ら防人
写真:総出演者による大合唱
西部方面隊(総監・荒井正芳陸将)は2月、熊本市民会館シアーズホーム夢ホールにおいて、第51回方面音楽まつりを実施した。
本音楽まつりで演奏したのは、西部方面音楽隊(隊長・稲積3陸佐)、第4音楽隊(隊長・林田2陸尉)、第8音楽隊(隊長・原口2陸尉)、第15音楽隊(隊長・永田2陸尉)、北熊本・福岡・対馬・川内各駐屯地の太鼓部で結成した自衛太鼓チーム(チーム指導・田原2陸曹)であり、これに水上3陸曹(ソプラノ)が入校先から一時帰隊して加わるとともに、米海兵隊第3機動展開部隊(〓MEF)音楽隊が昨年に引き続きゲスト出演した。
また、西部方面音楽隊の演奏に合わせて熊本市立必由館高校の書道部が書道パフォーマンスを披露した。更に、司会進行を女性自衛官(西部方面警務隊・重並2陸曹)が、舞台支援を小郡駐屯地音楽部(部長・稲見2陸曹)が実施し本演奏会を支えた。
観客の方々から「皆さんの団結力や絆を感じました。素晴らしい演奏をありがとうございました」「自衛隊の制服がかっこよかった。座奏もマーチングも上手でびっくりした」「聖子ちゃんもリンダも最高でした」。「浪漫飛行は選曲といいアレンジといい沖縄の風を本当に感じさせてもらいました」、「第8師団音楽隊と西部方面音楽隊の硬派な演奏はゾクゾクするような感動をもらいました」、「どこの楽団もピッチの揃い方がえぐい」、「早春賦のソプラノがめっちゃよかった」、「高校生たちの全身で書に打ち込む姿に感激しました。出来上がった作品を見たとき胸が熱くなりました」などの感想をいただいた。
本音楽まつりはスネアドラムのソロ演奏(譽田1陸士)の終了とともに、観客の拍手大喝采のなか盛況のうちに終演した。
第6師団音楽まつり
和~想いをひとつに~
写真:第6音楽隊
第6師団(師団長・楠見晋一陸将)は、2月16日、山形県の天童市市民文化会館において「和~想いをひとつに~」をテーマに「第20回第6師団音楽まつり」を開催した。
第6音楽隊(隊長・石村1尉)による「セレモニアルマーチ」、国歌斉唱で幕を開け、第1部は、師団隷下部隊の隊員16名で編成された師団らっぱ隊が「号音吹鳴」を披露した。引き続き、第20普通科連隊のダイナミックな「山形花笠踊り」、第2施設団の「船岡さくら太鼓」の力強い和太鼓演奏、第44普通科連隊の「ファンシードリル」が統制美あふれる演技を披露し、各グループとも隊員一人ひとりの息のあった迫力のある演奏演技により来場者を魅了した。
また、津軽三味線貢正流正徳会の方々と神町駐屯地三味線クラブ、そして第6音楽隊との共演で「さくらさくら~千本桜」を演奏した。
第2部では、山形県出身でジャズシンガーのシーナさんに出演いただき、「A列車で行こう」など3曲を披露し、美しくかつ力強い歌声が響き渡った。
第3部は第6音楽隊、福島駐屯地音楽クラブ、郡山駐屯地音楽クラブの合同演奏で、第6師団の災害派遣等の活動内容映像に合わせた「アベンジャーズ・エンドゲーム」や「もののけ姫セレクション」を披露した。
全出演者で迎えたフィナーレでは、手拍子とともにホールに響き渡った「WAになって踊ろう」によって、来場者を含めた会場の想いがひとつとなり、音楽まつりは大盛況のなか終了した。
音楽まつりは、第1回・第2回公演ともにほぼ満席の900名を超える観衆が訪れ、鑑賞した方からは、「素晴らしかった」「とても感動しました」「また来年も見に来たい」など賞賛の言葉が多数寄せられた。
音楽隊に敬礼っ‼<第7回>
前陸上自衛隊中央音楽隊長 樋口 孝博
通り過ぎる人たち
写真:陸上音楽隊、新演奏服披露(2017年)
野外コンサートで
陸上音楽隊の演奏服は、2017年に緑色から紫紺色に一新されました。紺色はフォーマルで、肩につけたモールにも品が感じられます。その新演奏服を着ての野外コンサートを視察したときのこと。大都会の駅に近い、リニューアルされたステージ広場は人通りの多い場所でした。演奏中、一寸だけ立ち止まって聴く人もいますが、ほとんどの人は通り過ぎて行きます。しかし吹奏楽の定番《宝島》が始まると、賑やかな雰囲気も手伝って多くの人が集まってきました。
彼女「かっこいい! あれどこ?」
彼氏「あ~、あれは警察の音楽隊だよ!」
横で見ている私もそう思いました。紺色だから航空音楽隊なのか郵便局員なのか、はたまたパイロットなのか全くわかりません。きらびやかな制服で人目を惹くのは結構なのですが、演奏団体の種別がわからなければ広報演奏の意義が薄れてしまいます。しかも聴衆は、屋外のお祭りムードに誘われて常に入れ替わります。曲間に司会を入れて紹介するとか、背後のビジョンを活用して名前のテロップを流すとか、各所にプログラムを掲示するなど、やり方はたくさんあったはずです。演奏を終えた隊員たちを見て、「この日は警察に貢献したな!」と思うのでした。
パレードで
今まで、たくさんのパレードに参加してきました。沿道からの歓声や拍手を受けると、「音楽隊に入って良かったなあ」と思えるひとときでもあります。
十数年ぶりに参加したパレードは横須賀でした。久しぶりの街頭パレードに、こちらもドキドキです。スタート地点では、たくさんの方々が沿道に集まってくださり期待の視線を送ってくれるのですが、なにか今までと雰囲気が違うように感じられます。日曜の昼間のせいか、若者たちの姿は見えません。そして沿道からの歓声も少ないのです。この日のパレードは「国際観艦式」を記念したもので、参加者はすべての海上音楽隊と陸・空の中央音楽隊、そして世界各地からの海軍乗組員が主となっていました。華を添えるスクールバンドやダンスチームなどの参加はわずかです。そのため、それらの団体を応援する友人や家族からの声が少なかったのでしょう。なかでも沿道から拍手がないのには驚きました。子供を抱いている親御さんは、もちろん拍手ができません。それよりも、ほとんどの人は両手で携帯やスマホをこちらに向けています。これがひと昔前と違うもので、「なるほど! だから拍手ができないのかぁ」と気づかされました。静かに見つめる人たちの前を、我々はただ演奏しながら通り過ぎていくのでした。
東京マラソン
3月に開催される「東京マラソン」には、毎年交代でセントラル・バンドが防衛省正門前で応援演奏をしています。コートを着るほどの寒空の朝、最初に目にも止まらぬ速さで車いすランナーが駆け抜けます。その後ろには数万人のジョガーたち。音楽隊は休むことなく、明るい活力ある曲を演奏し続けます。そして沿道の人々も、曲を終えるたびに拍手を浴びせてくださいます。
先頭集団が疾風のごとく走り抜けると、そのあとには怒涛の集団が近づき音楽隊のボルテージも上がります。スタート地点の新宿から防衛省まではまだ4キロほどなので、ランナーのみなさんは元気に右から左へと一気に駆け抜けていきます。なかには演奏の音に顔を向けてくれたり片手をあげてくれたりする人もいますが、演奏を〝聴く〟人は誰もいません。奏でるメロディーが数万人の背中を押す喜びはあっても、なにか一抹の寂しさが残るのです。
ちょうど2年前、私の退官日は奇しくも東京マラソン当日でした。市ヶ谷の慰霊碑参拝を終えると、頭上を演奏の音が通り過ぎていきます。応援する海上自衛隊東京音楽隊の演奏は、私の門出を祝福してくれるようでもあり、上る太陽を見ながら「春は近いな~」と思わせてくれるのでした。
*今年の東京マラソンは3月2日に行われ、航空中央音楽隊が演奏する(防衛省)前をランナーたちは力強く駆け抜けて行きました。