自衛隊ニュース
防衛力を支える新制度
「防衛事業適合事業者制度」
保全責任者等研修を実施 理解促進と実効性向上へ
写真=研修は3カ月に1回の頻度で行われる
防衛装備庁装備政策部装備保全管理課は6月22日、防衛省F1棟国際会議場で「防衛事業適合事業者制度」に関する保全責任者等研修を実施した。研修には、防衛産業の保全責任者や関係者ら75社約160人が参加し、新制度の概要や事業者に求められる情報保全体制について理解を深めるとともに、企業間で課題や取組について活発な意見交換が行われた。
新制度創設の背景と目的
近年、サイバー攻撃の脅威を含め防衛産業を取り巻く情報保全を巡る環境は厳しさを増しており、機微情報の流出を防止し、同盟国・同志国との共同開発・共同生産を進めるため、国際水準の情報保全体制の構築が求められている。
こうした背景から昨年7月に施行された「防衛事業適合事業者制度」は、防衛産業の情報保全体制を認証し、一つの秘密保護契約の下で、個別の契約の履行が可能となる新たな制度である。従来は、防衛装備品に関する契約ごとに企業の秘密保全体制を確認し、秘密保全契約を締結していた。新制度では、企業の情報保全体制を事前に審査し、有効期間5年間の「防衛事業適合事業者契約」を締結する。この契約により、期間中は個別契約ごとの秘密保全審査を省略・簡素化できるため、調達手続きの迅速化と事務負担の軽減が図られる。
また、一定の基準を満たした企業には認証証明書と認証マークが交付され、制度への適合性が確認された高い情報保全能力を備えた企業であることを対外的に示すことが可能となる。
装備保全管理課では、今後も総括者や保全責任者等を対象とした研修や制度説明を継続し、新制度の円滑な運用と実効性の確保を図っていく方針である。
本制度は、防衛産業全体の情報保全能力と信頼性を一層高めることで、防衛装備品の安定調達や国際共同開発を支える重要な基盤となり、我が国の防衛力強化に寄与することが期待されている。
ノーサイド
北原 巖男
八月や六日九日十五日
320万人もの国民が犠牲になった太平洋戦争終結から八十一年。今年も、私達国民いずれもが忘れることの出来ない、否、決して忘れてはならない日がやって来ます。
表題の句は、「八月や」の代わりに、「八月は」とか「八月の」、「八月に」などにして、様々な皆さんが作っている俳句の世界では有名な句とのことです。
ところが、「歴史探偵」の作家半藤一利さんは、既にその著書にて、次のように嘆いています。
「いま若い人にこの句を示しても感ずるどころか、何ですかこの句は?これでも俳句なんですか?という顔をされる。三つの日付けがピンとこないようです。ということは、この日にあった歴史的大事はすべて遠くに消え、忘れられてしまった出来事なのでしょう。」(「戦争というもの」2021年5月25日 PHP研究所刊)
思わず悪寒のようなものが身体を駆け抜けました。筆者には、半藤さんのような経験はありません。しかし、半藤さんが会われた「若い人」は、ごく少数の例外ではないのか、ほとんどの若い人たちは、知らないはずがない、と言いたくもなります。全国の自衛隊員の皆さん・ご家族の皆さん、そして、本紙読者の皆さんは、半藤さんの指摘をどう受け止めますでしょうか。
戦後生まれが人口の9割を占める現在、戦前・戦中生まれの歴史の生き証人は、政治家を含め、その大多数が既に鬼籍に入られています。戦争や原爆の非情さ・恐ろしさを語り継げる人がいなくなっています。終戦の1945年に生まれた方でも、八十歳を超えています。
それだけに、まずは私達自身が、改めて真摯に歴史を学ばなくてはなりません。そこから、過ちを繰り返さない教訓を読み取って行くことが欠かせません。更に将来の日本を担っていく若い人たちも、歴史にしっかりと向き合うことによって、様々な教訓を学び取って頂きたいと思います。そして、その教訓を将来に向かって活かして行く。我が国の進路に誤りなきを期して行く。
連日報じられるロシアのウクライナ侵略、アメリカ・イスラエルのイランへの奇襲攻撃から始まり湾岸諸国も巻き込まれている戦闘は、先行きが全く見えないばかりか、エスカレートしています。
こうした様子をテレビで目にしたり、プーチン大統領やトランプ大統領の発言などを聴いていますと、突拍子も無いことと一笑に付されるかもしれませんが、ふと、だいぶ以前に読んだ山本七平さんの「一下級将校の見た帝国陸軍」(1987年8月10日 文芸春秋刊)にあったくだりが浮かんで来て、もう一度見たくなりました。本棚から引っ張り出しました。
曰く「無敵の軍隊など、世界のどこにも存在するはずがないのに--。それを彼らは内心では知っており、実体が明らかになればすべてが崩壊することを知っていた。それが恐ろしいから虚構と神風にしがみつく。そのため、いざというとき静かなる自信に基づく発言が出来ず、神がかり的発言者と動物的攻撃性で論理を封ずる者に主導権を握られる。そしてこの悪循環は雪だるまのようにふくれあがって、自分でどうにもならなくなっていたではないか。」
それぞれの八月です。
「人間の眼は、歴史を学ぶことで はじめて 開くものである。」「戦争は、国家を豹変させる、歴史を学ぶ意味は そこにある。」(半藤一利 前掲著)
ここまで本拙稿を書き進めて来たとき、久保文明前防衛大学校長が、日本経済新聞(7月19日付け「直言」欄)のインタビューで語っている一言にロックオン致しました。
「周りとあえて違う意見を言える幹部人材が必要だ。決断を問われたとき周囲が『こっちじゃないか』と言うなかで『自分はあっちだと思う』と別の見解を出せる人間が求められる」
(皆さんへ)
猛暑・酷暑・炎暑の真っ只中です。くれぐれも熱中症には気を付けてください!
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事