自衛隊ニュース
親子2代、同じ部隊で響かせる志
<陸上自衛隊中央音楽隊>
写真=父・靖文1曹(右)と息子・蓮3尉(左)
陸上自衛隊中央音楽隊に、親子で同じ道を歩む隊員がいる。父・廣實靖文1陸曹(53)と、息子・廣實蓮3陸尉(25)。ともにトロンボーン奏者として研鑽を重ね、現在は同じ制服に身を包み、同じ楽器を携えて、国民に寄り添う音を届けている。
父は平成10年3月に入隊。以来、長年にわたり音楽隊員として歩みを重ねてきた。トランペットに憧れて音楽の道に入り、鍛錬を重ねる中で確かな技術と豊かな表現力を培ってきた。趣味はバイクと筋力トレーニング。視野の広さと包容力は、演奏のみならず部隊内でも厚い信頼につながっている。
一方、令和4年3月に入隊した息子は、若さあふれる感性と高い音楽性を武器に活躍する新鋭だ。「音楽という自分の中の最強の武器を、日本のために使いたい」。その真っすぐな思いを胸に、自衛官として、また演奏家として日々研鑽を続けている。父が認める「音楽的要素の高さ」は、すでに確かな個性として花開いている。
互いに尊敬するところを尋ねると、父は「トロンボーンが上手いところ、音楽的要素が高い」と息子を評し、息子は父について「視野が広い」と語る。そこには親子という関係を超え、同じ舞台に立つ一人の演奏者として互いを認め合う姿がある。
家族の思い出には「一緒に演奏したこと」「2人で演奏動画を撮ったこと」「キャンプ」といった温かな時間が並ぶ。家庭では父と子、しかし舞台に立てばともに任務を担う隊員。その関係性は、音を通してより強く結ばれている。
受け継がれているのは、単に楽器や技術ではない。国のため、人の心のために音を奏でるという志であり、今日もまた多くの人の胸に静かに、そして力強く響いている。
「防人」応援隊
第37回定期総会を開催
<全国防衛協会連合会>
写真=左から若林政務官、町田副会長、小泉大臣、大宮前会長、宮﨑副大臣、増田家族会会長
6月1日、ホテルグランドヒル市ヶ谷で全国防衛協会連合会の第37回定期総会が開催された。
まずは、表彰式が行われ、全国防衛協会連合会の使命達成と発展に尽力した17名と1団体に表彰状が授与された。その後、全国各地防衛協会の役員ら約50名が参加し総会が行われた。総会の中で、第4代大宮英明会長から第5代泉澤清次会長(三菱重工業株式会社取締役会長)にバトンが渡された。
次いで「戦争の変化と日本防衛」をテーマにパネルディスカッションが行われた。伊藤俊幸元海将をコーディネーターとし、小川清史元陸将・湯浅秀樹元海将・山田真史元空将のパネリストらが、白熱した討論を行なった。第1部は「現代戦の常識の崩壊」第2部は「安保3文書の改訂ポイントと抑止力」第3部は「日本の総合力としての防衛と継戦能力」をテーマとし、「自分の国は自分で守る」と謳っている全国防衛協会連合会らしさの溢れた討論会だった。
最後は、小泉防衛大臣、宮﨑防衛副大臣、若林政務官、松永統幕副長、荒井陸幕長、齋藤海幕長、森田空幕長をはじめとした防衛省・自衛隊の幹部や関係団体の長など100名以上が集まって懇親会が盛大に開催された。全国から集まった会員らも互いに情報交換をするなど、思い思いの充実した時間を過ごしていた。全国47カ所にある都道府県防衛協会・自衛隊協力会は、自分の国を自分で守るため日々活動している。
アイルトン・セナ
在ブラジル防衛駐在官 淺田 健
ブラジルで車を運転できるようになったので車通勤しています。ブラジリア中心部「プラノ・ピロート」の道路は、都市計画家ルシオ・コスタによる設計により、街全体を上から見ると飛行機の形をしており、道路もこの形に沿って作られています。飛行機の「胴体」にあたる東西に通じる道路には三権の建物、国防省や陸軍司令部を含む官庁が並ぶ最大片側6車線の広い道路です。次いで「翼」にあたる南北の幹線道路にはほぼ信号がなく、高速道路のように機能しています。
そして主要道路と各区画に通じる道路との接続点には交差点や信号はなく、代わりにクローバー型の立体交差路や地下道となっています。これは車を止めずに円滑な流れを維持するための工夫とのことですが、地元の人は停電で信号が働かなくなった時も安全に通行できるための工夫と言います。また街中も信号機の数を極力減らすため、「バラォン(風船)」と呼ばれる円形交差点(ラウンドアバウト)が各所に配置されています。
慣れるまでは携帯電話の専用アプリ・ナビがないと、素直に目的地まで走行するのが難しい構造ですが、慣れると信号待ちのストレスは少なく走行できます。他方、このような特徴にもよるのでしょう、日本での道路走行事情からすると、急ブレーキ・急な車線変更・急な車間への割り込みといった車の流れは、「絶えず敵方を監視し併せて四周を警戒:陸自」「左警戒、右見張り:海自」で運転しなければなりません。
さて「アイルトン・セナ」をご存じでしょうか。セナはブラジルが輩出した「音速の貴公子」とも呼ばれる不世出の自動車レースF1ドライバーと言えましょう。セナはサーキットで直線が終わり曲がり角に差し掛かるのに「いつブレーキを踏むんだ?」と思うほどにコーナーに突っ込み、また雨天でもスピンさせることなく鮮やかに曲がる走行を見せました。ブラジリアの道路走行事情がセナを育てたのだろうかと思うほどです(しかし実のところ、セナはサンパウロ出身であり幼少からカートの練習場で運転していたので、ブラジリアの道路事情が彼の運転技量に与えた影響はないと思われます)。なおセナの名前に因んで名付けられた元同僚には、当時大変お世話になったことを付記します。
末筆になりましたが、自衛隊での車両操縦技量向上と、読者各位の交通安全をお祈りします。
ノーサイド
北原巖男
がんばれ、地本のみなさん!
がんばろう、みんな!
我が国の少子化は加速度的に進んでおり、留まるところを知りません。それだけに、常に国民と共に在る国民の自衛隊を担い防衛力の基盤となるべき若き皆さんたちの自衛隊員募集は、困難を極めています。
そうした中、第一線で頑張っておられるのが全国各地の自衛隊地方協力本部(地本)の広報官の皆さん。有為な人材確保に向けて、連日様々な募集活動に汗を流されています。防衛省・自衛隊にとって、死活的に重要な任務。しかし、目標の完遂が容易ならざる任務の一つと言えます。
他方、そんな広報官の皆さんに相談し、質問し、話しを伺う若者の皆さんは、自らの「価値観」や「生きがい」に関わる「職業選択」という人生の大きな節目に立っています。それだけに、本人は勿論、少子化の下、かけがえの無い子女のご両親等ご家族の皆さんが慎重になることは、至極当然のことです。
今この時間も、若者一人ひとりと真摯に向かい合い、先輩自衛隊員としての自らの体験も含めて、誠実かつ熱い思いを以て説明、質問に答えている全国各地の広報官の皆さんがいます。それだけに、防衛省・自衛隊を代表する個々の広報官の皆さんの人間性、自衛隊員としての体験・矜持が、若者の皆さんに与える影響は大きいと思います。若者が広報官の皆さんと接触する中で、彼らに親しみや信頼の気持ちを抱いて行くとすれば、それは即ち、まだ知らぬ防衛省・自衛隊に対する親近感や信頼感の醸成と言っても過言ではありません。
角度をもう少し広げますと、直接募集業務に取り組んでおられる地本の広報官の皆さんに留まらず、現役の自衛隊員の皆さん一人ひとりが、全て広義の広報官そのものです。国民は、若者たちは、自衛隊の皆さんを見ています。例えば、防衛省・自衛隊の中で不祥事が発生した時、国民からは、激しい批判や時には罵倒さえもが浴びせられます。しかし、実際は、ほとんどの隊員が健全なる社会人であり、いかなる事態の生起に際しても、しっかりと国民の負託に応えられる精強な自衛隊員であることを、現役の皆さんの姿や思い等を通じて把握するとき、国民は安堵すると共に、応援する気持ちにも至るのではないでしょうか。
更に、筆者たち自衛隊OB・OGも、広報官をサポートしうる外部広報官では無いでしょうか。筆者が所属している会員数約5万名の自衛隊OB・OG組織「公益社団法人隊友会」も、目指すは「国民と自衛隊のかけ橋」です。全国に展開する多種多様な会員が、例えば、何らかの形で都道府県地本の実質的な隷下で募集業務の支援活動に参加出来れば、活き活きと「やりがい」を感じることは必定です。その募集成果も決して小さくは無いと思います。また、副次的な効果として、会員の減少が継続している隊友会に入会する除隊者が増えるトリガーの一つにもなり得るのではないでしょうか。
自衛隊員の皆さん、そしてかつて自衛隊員であったOB・OGの皆さん。
皆さんは、自衛隊のことを知り、その使命感、やりがい、生き方すべてを体現した皆さんです。外から見た自衛隊と中で見る自衛隊とは違います。ややもすると、きついといったネガティブな面が強調されることもあります。正しい自衛隊の真の姿を伝えることが出来るのは自衛隊経験者の皆さんだけです。つまり、皆さんは外側と内側をつなぐ大事な役割を持っているのではないでしょうか。
よく新たに海外に行く邦人は「日本を代表する気持ちで行く」と言われます。それは「海外にいる邦人はそのまま日本の広報官である」といった意味を持ちます。同じことが自衛隊についても言えるのは明白です。現役、OB・OGの皆さんはそのまま自衛隊最良の広報官です。自衛隊を志す若者・そのご家族の不安感を、安心感に変えることも出来るでしょう。
こうした中、防衛省・自衛隊は、国民に対し、自衛隊の任務を始め国際軍事情勢・我が国の安全保障・防衛政策・諸活動・人材育成・隊員の処遇等を含め、可能な限りの透明性を以て様々な情報提供に努めて来ています。
隊員の募集案内についても、様々なツールや場所等を活用して、きめ細かく行って来ています。そこには、政府関係機関や地方公共団体だけに留まることなく、民間企業や各種団体等の幅広い理解と協力があります。
つい先日の筆者の体験。東京世田谷区の小田急線「成城学園前駅」から「狛江駅」行の小田急バスに乗った時のことです。車内中央にある下車扉の手前にある棒状の手すりに、いくつも取り付けてあったのは縦20センチ横10センチほどの薄い透明な袋に入った三つ折りのパンフレット。「自衛隊募集 平和を、仕事にする。防衛省・自衛隊 東京地方協力本部 府中分駐所」と印刷されています。
「凄い!府中分駐所、頑張っているなぁ!」感動と共に、一枚を取り外しました。「TOKYOから広がる守りの翼」と書かれた絵はがきも入っています。
小田急バスに話して、協力のご了解を頂いたのでしょうが、小さくて大きい募集ツールの開拓だと思いました。
帰宅後、府中分駐所のホームペ‐ジにアクセスしてみました。
「土日祝日も説明するよ!事前に電話してね♪」とか、「あなたの担当はどんな人」と題する所長以下6人の顔写真入りの職種・特技・特長・特記事項の紹介がめっぽう面白い。(皆さんもアクセスしてみてください)筆者自身、一人ひとりの広報官に親しみを感じ、何でも聞いたり、本音で話したくなってしまうような気がしてまいりました。
全国の地本、地域事務所・出張所・募集案内所・分駐所の皆さんは、厳しい募集環境の中、元気に明るく、高い士気を以て、各地域の状況等も踏まえつつ、様々な挑戦を展開しています。
地本のみなさん、がんばってください!
現役のみなさん、OB・OGのみなさん、がんばりましょう!
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事