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18万人のトップではなく、
18万人の下士官の先頭を走る
統幕最先任・齋藤准陸尉に聞く

将来への「希望を持ってほしい」
統幕最先任が若い隊員に託す言葉

写真=インタビューに答える齋藤統幕最先任

   

 統合最先任等会同を終えた直後、話を聞かせていただいた。白熱したディスカッションの余熱が残る中で語られた言葉は、統幕最先任としての立場を超え、一人の自衛官としての言葉だった。(関連記事:12面)


Q 今回の統合最先任等会同を終えられて

A 上番してから1年2カ月になりますが、下士官における「統合」とは何かを考える中で、一貫して私の中にあるキーワードは「一体感」です。今回のディスカッションで、軍種は違っても同じ一体感を共有していることを改めて認識できた点は、大きな収穫でした。また、「自律的に自ら考え行動(実践)できる隊員をいかに育成してゆくか」という言葉が共通のワードとして多く挙がりました。今回参集した各最先任が、その共通認識をそれぞれの部隊へ持ち帰ってくれるものと考えています。


Q 熱量を隷下部隊までどう伝えるか

Aこれは以前から強く感じていることです。上級部隊では高い熱量を持っていても、部隊へブレイクダウンしていく過程で、その熱量が冷めてしまうことがあります。それを防ぐためには、本質を捉えた共通認識をしっかりと具現化することが重要であり、それこそが我々最先任の役割だと思っています。各階層の先任がすでに取り組んでくれていますが、上級部隊の正しい情勢認識を噛み砕いて伝えること、また指揮官の言葉を意図も含めて理解できるように伝えることが大切です。その結果として、隊員一人一人が自らの役割を自覚し、防衛省・自衛隊を取り巻く現在の環境を意識することが、最終的に熱量へとつながってゆくのではないかと考えています。


Q 統幕最先任として描く将来像

A 統合研修は、将来、統幕や統合作戦司令部で最先任となり得る人材を育成することをイメージして令和7年度から開始しました。また、今年1月には、米国ワシントンで行われた下士官に対する統合教育の最上位の課程である「キーストーン」を視察しました。これは、米陸・海・空軍、海兵隊、沿岸警備隊、ナショナルガードなどの下士官リーダーが集まり、統合における下士官最上位の教育を行う研修です。これらの日米の取組は統合について深い見識を持って指揮官を補佐する下士官のリーダーを育成するというイメージの下計画されており、日本の統合研修をより発展させることにより、統合の意味をさらに高め、進化させてゆければと考えています。


Q 18万人の先頭に立って見える景色

A 部隊の任務や役割が異なるため、今までと見える景色は変わったと思います。前職の陸自富士学校では、人材育成や陸上自衛隊の戦闘職種に重きを置いた視点でした。現在は統合の立場にあり、国際的な価値観の交流も大きく増えています。我が国のみならず、世界的な情勢を的確に把握する必要があり、同盟国である米国の軍事情勢なども注視しています。そういった意味で、見え方は大きく変わってきたと感じています。先ほど「18万人のトップ」とのお話がありましたが、人事管理上はそうかもしれません。しかし私自身は、上に立つということではなく、先頭に立って引っ張ってゆく存在だと考えています。そのような意識で、この職責を捉えています。


Q 統幕最先任の重責

A 状況によっては統幕長から、「最先任としてどう思うか」と意見を求められます。私の自衛隊における職名は「統幕最先任」ですが、同盟・同志国等を含め、世界的に共通する職名としては「SEAC(Senior Enlisted Advisertothe Chiefofstaff)」、すなわち統幕長の下士官最上位アドバイザーという立場にあります。その役割を果たす以上、統幕長の思考環境を満たす助言を即座に行わなければなりません。「少し時間をください」とは言えませんし、その場で適切に答えることが求められます。自分自身、まだまだ足りない点は多いと感じていますので、まだまだ自己修養が必要であると考えています。一方で、時にはお酒を酌み交わしながら率直な話をすることも、信頼関係を築く上で大切だと考えています。


Q この職を引受た理由

A 陸自の代表として選ばれたことを伝えられたその時から、「自分は何を成すべきか」を考え始めました。これまで最先任や先任を務める中で、常に主語は「日本国」に置いてきました。日本国のために、防衛省・自衛隊のために、その中で陸上自衛隊はどのような役割を果たしてゆかねばならないのか。さらにあらゆる部隊の役割が国益にどのように直結するのか。そうしたことを常に自問しながら取り組んできました。その延長線上に、現在の補職があると受け止めています。特段、この職に就いたからといって考え方を大きく変えたわけではありません。これまで歩んできた道の延長にある、というのが率直な思いです。


Q 判断に迷った時の原点

A 職務上のことで言えば、陸自では「状況判断」という言葉をよく使いますが、最終的に判断をどうすべきかという点に立ち返るのは、自己の職務分析です。迷った時にはそこに立ち返るようにしています。自分の中での原点であり、大切にしている部分です。その職務分析の中で、自分の「骨」となる部分は何かを改めて確認するようにしています。原点に立ち返るという行為そのものが大切だと感じています。


Q 人として大切にしている信条

A 私の座右は「一途一心」です。自分の中では、この一途一心で物事に向き合うことを大切にしています。また、隊員の指導等においては、「至誠にして動かざる者は、未だ之れ有らざるなり」という気持ちで接するように心掛けています。真心、誠実さをもってあらゆることに当たっていけば、人材育成においても、また様々な問題に直面しても、必ず道は開けると信じています。


Q 軍種を超えて共通する自衛隊らしさ

A 隊員は皆、それぞれ自分の軍種に誇りを持っています。自分の軍種、自分の職務に対するその誇りこそが、自衛官らしさなのだと感じています。他者を認め、認識を共有していく柔軟性を持ちながらも、自分自身のポリシーはしっかりと持っている。その上で相互理解ができる点が、自衛隊の良さだと思います。


Q 五人が並ぶ意味

 パネルディスカッションでは、齋藤統幕最先任、綿引陸上自衛隊最先任上級曹長、北口海上自衛隊先任伍長、高着航空自衛隊准曹士先任、佐藤統合作戦司令官最先任の5名が並ばれましたが、とても良い雰囲気でした

A 我々は、普段から活発に意見交換していますので、特に違和感はありませんでした。この5人は正に一体感があると思っていますし、恐らく彼らも同じように感じてくれているのではないでしょうか。


Q 気持ちを切り替える場所

A やはり家ですね。家族です。大切にしている時間も、家族と過ごす時間です。


Q若い隊員にどう伝えていくか
 5人が並ぶ姿は、下士官における「統合」の象徴ですね。それを見せることはとても大切だと思います 本日来場された方々には十分伝わったと思いますが、これが若い隊員にも伝わるといいですね
A 今回はベテランばかりでしたね。私たちも若い頃は、指揮官が言っていることの本質を、なかなか理解できない場面が多くありました。しかし、自分の職務に何かのきっかけで充実感ややりがいを感じた時、初めて「当時、指揮官や先任たちが伝えたかったのは、こういうことだったのか」と少しずつ分かるようになってきます。最初は骨も弱く、筋肉もついていませんが、経験を重ねるにつれて骨太になり、強い心も出来上がってゆきます。少しずつです。ですから我々も、そうした成長を信じ、焦らずに進んでゆきたいと思っています。ただし、我々が正しいと信じていることは、これからもきちんと伝え続けてゆきます。情熱は変わらずに。それは大切なことだと思います。

Q 今の若い隊員の強み
A 今の世代は、情報収集能力が高く、それを自分の中に落とし込む力も非常に高いと感じています。組織が自己成長の場であるか、自分にとって成長できる環境なのかを、きちんと見極める力を持っている。そういう意味で、本質を見抜く力は非常に高いと思います。一方で、情勢を正しく認識する力や、脅威を的確に捉える力という点では、まだ十分でない部分もありますが、それを理解する力は十分備えているため、成長の可能性は極めて高いと感じています。

Q 今、最も大切なこと
A 何のために存在しているのか、その本質をしっかり理解することです。我々が何のために存在し、准曹士の役割とは何か、自分たちの領域や領分は何か…そうしたことを理解した上で、誠実に職務に当たることが大切だと思います。それさえあれば、准曹士としての価値、能力は、さらに高まってゆくと考えています。そこに大いに期待しています。

Q 全国の若い隊員へ
A 将来への「希望を持ってほしい」ということです。現場にはさまざまな制約がありますが、環境は確実に改善されつつあります。自分たちが本来やらなければならないこと、自ら能力を高めてゆくこと…それを実践できる場は、これからますます増えてゆきます。自分の道を信じて下さい。

Q 本日はありがとうございました。

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