自衛隊ニュース

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NATO事務次長と会談
防衛産業・装備品協力を推進

写真=シェケリンスカ氏に歓迎の意を伝える小泉大臣


 3月5日、小泉進次郎防衛大臣は、近年関係が深まるNATO(北大西洋条約機構)の事務次長を務めるラドミラ・シェケリンスカ氏の表敬を受けた。

 小泉大臣はシェケリンスカ氏の初訪日を歓迎するとともに、「イラン情勢も含めて、また日本を取り巻く安全保障環境も大変厳しくなっている」「ルッテ事務総長とは、欧州・大西洋とインド太平洋は一体不可分であるとの思いを共有している」と述べた。

 シェケリンスカ氏もこれに同意し、「私たちの地域の中で、パートナーシップ協力を益々深めていくことが重要だ」と応じた。サイバー・宇宙分野での協力を強化することに加え、防衛産業分野や装備品協力についても言及。「防衛産業におけるイノベーションの促進、伝統的な企業やスタートアップ企業との協力を推進していくことが必要だ」と述べた。同氏は翌日、海自厚木基地と、民間企業の小型SAR衛星の製造事業所を視察した。

ノーサイド
北原 巖男

ディール

 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵略から既に4年。ロシア寄りではないかと、ときに指摘もされるトランプ大統領の仲介は、全く出口が見えていません。

 そうした中、トランプ大統領は、2月28日、イスラエルと共に突如、イランに対する大規模な爆撃に踏み切りました。

 イランの核兵器保有を断固阻止しようとするアメリカと、あくまでも核の平和利用目的を主張するイランは、これまで厳しく対立して来ました。昨年6月には、イランの核関連施設に対する爆撃を行っています。その後、両国は、累次の協議を続けて来ていました。協議内容の実態は全く知る由もありませんが、何とか外交交渉による話し合いで、平和的に合意に至って欲しいと願っていただけに、驚き、失望しました。

 37年間イランの最高指導者であり続けたハメネイ師を始め、今回の爆撃で政治や軍の要人等、多数が殺害されました。ハメネイ師は、「イランのみならず、世界のシーア派にとって宗教的な象徴であった。カトリックで言えばローマ教皇を殺したのと同じくらいの重みがある」(3月6日付、東洋経済オンライン。「ハット研究所」アビール・アル・サマライ所長)。

 イランは即座に報復に出ました。その対象は湾岸アラブ諸国にも拡がりました。保有する爆撃機・戦闘機・精密誘導兵器等の破壊力や、その継戦能力等を含めた米軍・イスラエル軍とイラン軍の彼我の軍事力には圧倒的な差があります。しかし、今なお攻撃と報復の応酬は続いています。学校に通う子供達や一般市民も巻き込まれ、日々犠牲者が増えていることが報じられています。激しい爆撃によって破壊された建物等のテレビ映像を目にするとき、その瓦礫に埋まった人々のことを思うと胸が痛みます。

 ウクライナへの侵略を続けるロシア、一方的な現状変更を図り覇権的活動を強めている中国の両大国は、どう見ているのでしょうか。

 自らの先制攻撃で開始したこの戦いを、トランプ大統領は、いかなる事象の生起を以て勝利宣言し、その勝利の中で停戦する考えなのか。トランプファミリーを含め、いかなるディールを追求しているのか。現時点では、全く見えて来ません。水面下では、停戦に向けたシナリオについて、様々な話合いが進められているのでしょうか。

 ちなみに、ハメネイ師亡き後の最高指導者を含む新しい指導体制は、イラン国民自身が主体的に決定することは、主権国として当然のことです。その新体制は、戦禍で荒れ果てた国内を速やかに復旧し、その復興を図り、今回のような惨事を国民に負わせることの無い、湾岸アラブ諸国とはもちろん米国やイスラエルとも緊張をはらみつつも極めてしたたかに共存して行くことができる政権であることを願って止みません。

 こうした中、まもなく高市首相は就任後初めて訪米し、19日にもトランプ大統領と首脳会談を行うことが報じられています。そのトランプ大統領は3月31日から4月2日に中国訪問を控えています。正にギリギリのタイミングで日本の首相が直接物申せる極めて重要な機会です。まさに「女神の前髪」です。国民はもちろん、世界も注目しています。

 資源小国の我が国にとって、ホルムズ海峡の安全が確保されることは焦眉の急であり、死活的に重要です。更に、前述のように一方的な現状変更を図り覇権主義的行動を強めると共に、高市首相の「台湾発言」を機に、我が国に対する不当な締め付けを次から次へと執拗に繰り出し、国際社会における日本の孤立化を狙っている中国に対する日本の立場の理解と支持を取り付けなければなりません。それが、アメリカ自身の利益にとっても重要であることを理解させなければなりません。単に会談の席で取り上げた、申し上げただけではダメです。

 トランプ大統領の訪中時、日本の頭越しに、米中2G(グループ・オブ・ツー)にとって都合の良い、我が国及び我が国周辺地域の安全保障にも係わるディールの締結・表明などが行われることは、よもやあるまいと願っています。万が一にもそのようなことがあれば、ことは真に深刻であり、我が国の安全保障の基軸で来た日米安保体制に対する国民の信頼は瓦解すると言っても、決して大げさではありません。全く筆者の杞憂で終わることを祈っています。

 国内で強いだけではない高市首相外交の真価、トランプ大統領とのウイン・ウインのディールを固唾をのんで見守りたいと思います。

  

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事

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