自衛隊ニュース

07JXR 首都直下地震想定で
写真=着陸するACSL社製の新型物流専用ドローン(15日:朝霞訓練場)
自衛隊は、7月14日から18日まで「令和7年度自衛隊統合防災演習(07JXR)」を実施した。統合作戦司令官指揮のもと約1万4000名が参加し、東京都、防災関係機関、在日米軍、豪軍等と共に首都直下地震を想定した災害対応について連携を図った。
14日に防衛省で行われた第1回省災害対策本部会議において中谷防衛大臣は、「統合作戦司令官のもとで、最も効果的なリソース配分を一元的に実施して、任務遂行に万全を期してほしい」と求めた。また、根拠のないデマや偽情報で援助活動に支障がないよう「正しい情報提供、情報発信を積極的に行ってほしい」と指示を出した。
ドローンで支援物資輸送
東部方面隊(総監・冨樫勇一陸将)は07JXRに併せて、自治体等と連携した実動訓練を行った。15日は観閲式等が行われる朝霞訓練場(東京都練馬区)で民間のドローンを活用し、孤立地域に医薬品や生活支援物資等を届ける訓練が公開された。東部方面隊は、「一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)」(UAS‥無人航空機システム)と平成31年2月に「災害時等応援に関する協定」を締結。今年6月には情報収集に限らず、物資輸送など幅広い連携・協力ができるよう変更協定を締結した。これをうけて今回、JUIDAに加盟する国内企業3社から国産4機が参加して訓練を行った。まず業界古株のACSL社製「PF4‐CAT3」が医薬品を格納し、高さ30メートルまで上昇、500メートルを往復した。エアロセンス社のAS‐VT02Kも医薬品を輸送。飛行中、暴風雨の際に自動でホバリングへと切り替わる等、安全面での性能を披露した。日進月歩で進化するドローン技術。防衛省としては、災害対応におけるドローン運用では民間等を活用していく方針だという。
東京DMATと連携
17日は新宿中央公園で、第1師団隷下の第1後方支援連隊から60名、東京DMATから4名が参加して大規模災害時における医療連携要領を演練した。DMATとは、大規模災害時等で消防隊と共に現場へ出動し、救命処置等を行う災害医療チームのことで、東京DMATは都知事の要請で活動を行う。
訓練ではまず、1次トリアージで「軽症」と診断された患者を、救護所で再度詳細にトリアージして(2次トリアージ)、「軽症」と「中等症」に選別した。処置を行うのは自衛官の医師とDMATの医師が1名ずつ。さらに高度な治療が必要な「中等症」患者は、救護所の外で待機する救急車により病院等へ後送されることとなる。
救護所は天幕を4つ繋げて設営。「中等症」「軽症」とも同時に3名まで対応が可能だという。天幕内は冷房が効いており、気温が30度近かった取材当日でも不快さは感じなかった。
訓練会場では、野外手術システム、野外炊具2号、能登半島地震では約3カ月の運用で延べ2万40000人が利用したという野外入浴セット2型「練馬の湯」等が展示され、東京消防庁職員や募集対象者らが見学に訪れて知見を深めていた。また、第1師団長の鳥海誠司陸将が視察を行い、隊員らを激励した。
都庁でも図上訓練
東京都は7月14日から同18日までの5日間、JXRと合わせて「首都直下地震図上訓練」を新宿区の都庁などで実施。15日、訓練の一部を報道陣に公開した。
都心南部で最大震度7の地震が発生したと想定。発災直後から5日目までの対処が24時間態勢でロールプレイング方式により実施された。自衛隊、国交省、気象庁など約60機関・約900人が参加した。
緊迫した雰囲気の中、都庁第一本庁舎9階に設けられた指令室での部門長会議の様子が公開され、被害の大きい大田区、港区からオンライン中継で被害状況などが伝えられた。
陸上自衛隊からは、東部方面総監部行政副長の濵田剛将補以下、同総監部、東部方面隊隷下部隊、教育訓練研究本部等の約50人が連絡員、現地調整所要員として臨んだ。
濵田将補は「情報共有する中で、いかに早く災害対策活動を実施するか、ということに最も力を入れた」と語った。
さらに、実際に発災した場合について「(対策本部が置かれる)都庁にいち早く赴き状況をよく確認し、部隊に情報提供しながらいかに早く人命救助、救援、応急対策の活動につなげていくか。迅速な組織立てが焦点になってくる」と述べた。
機略縦横(98)
信頼
写真=西部方面隊最先任上級曹長
准陸尉 阿世賀 伴仁
みなさんは、職場で隊員とすれ違うとき、どのように言葉をかけますか。「お疲れ様です」「おはよう」「どうしたの?」「何をしているの?」など、さまざまあると思います。では、その声かけはどんな立場・気持ちから発したものでしょうか。相手を気づかって?自分を印象づけたくて?関係性を深めたくて
?状況や関係性によって、
理由はさまざまでしょう。
今、よく語られている「コーチング」の中でも、とくに大切な第一歩は「信頼関係を築くこと」だと言われています。
では、「信頼」とはどんな関係なのでしょうか。そして「信用」と「信頼」の違いは何でしょうか。
アドラー心理学で有名なアドラーの言葉にはこうあります。「信用するのではなく信頼するのだ。信頼とは裏付けも担保もなく相手を信じること。裏切られる可能性があっても相手を信じるのである」。
つまり、信用は、実績や結果、経験に基づいて「この人なら大丈夫」と思える状態です。信頼とは、結果がまだ見えていなくても、「この人を信じてみよう」と、未来に期待する気持ちです(たとえ裏切られるかもしれないリスクがあっても、です)。
私たちはつい、他者との関係性を築こうとするとき、「自分にとってのメリットは?」「損をするかも」「仕事だからこの程度で…」などと、自己中心的な視点で考えてしまいがちです。けれど、そういった打算のなかには、本当の「信頼」は生まれません。
実は、「自己中心的な視点」では、人を信用することはできても、「信頼」することは難しいのです。
たとえば今話題の「心理的安全性」。
「自由に発言できる環境」だけが強調されがちですが、それだけでは不十分で「間違った心理的安全性」になっていると感じます。心理的安全性とは、本来、「自由に発言できる環境」「助け合い」「挑戦する勇気」「受け入れる空気(前例にないからと言って最初から否定するのではなく)」という土壌があって、はじめて成り立つものです。また、リーダーシップやフォロワーシップのあり方を考えるときも、「信用」(=過去の実績)と「信頼」(=未来への期待)は、別のものとして意識することが大切です。
どんな立場であっても、そして組織の内外を問わず、互いに信頼を築こうとする姿勢が、これからますます必要になってくるでしょう。
最後に、こんな問いを自分に投げかけてみてください。
あなたは、国民からの信頼に応える存在であると同時に、仲間(上司・同僚・部下)からも「信頼」されていますか?