自衛隊ニュース

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防衛省・自衛隊
地方協力本部

写真=完成したPRラッピングトラック


全国を疾走<奈良>

 奈良地方協力本部(本部長・黒壁義紀事務官)は4月7日と5月23日、「陸上自衛隊PRラッピングトラック」の完成記念行事を実施した。

 奈良地本では、昨年度も県内の運送業2社の協力を得て「海上自衛隊」、「航空自衛隊」のPRラッピングトラックを制作したが、今年度は「陸上自衛隊PRラッピングトトラック」を2台制作し、「陸上・海上・航空」3自衛隊をPRするトラックが完成、全国に向けて運行を開始した。

 今事業は株式会社ベストライン(辰己千里社長)及びフジトランスポート株式会社(松岡弘晃社長)の奈良県内運送業2社の協力のもと、実現した。

 4月7日に国土交通省近畿運輸局奈良運輸支局で開催した完成記念行事では、第7施設群長(稲田1陸佐)、ベストライン・辰巳社長、奈良運輸支局長(竹内弘明氏)に参加いただき奈良テレビ放送をはじめ県内メディアでも大きく取上げられ、参加者からは「迫力がすごい」、「陸上自衛隊かっこいい」といった好意的な声が聞かれた。

 また、5月23日に陸自大久保駐屯地で開催した完成記念行事では、第4施設団長(●春将補)、第102施設器材隊長(冨岡2陸佐)、フジトランスポート株式会社取締役常務(田中敦氏)に参加いただき、第4施設団長、第102施設器材隊長からは「制作に感謝」の言葉を、フジトランスポート・田中常務からは「自衛官募集に貢献し運送業への雇用促進!」の期待の言葉をいただいた。

 5月24日には大久保駐屯地創立68周年記念行事に2台の完成したトラックを出展し、一般お披露目も実施した。

 奈良地本では、今後もPRトラックを制作するとともに他地本への製作協力を実施して「自衛隊の更なる周知、自衛官募集の促進」を進めていく。



彦根城「C」作戦

国宝を美しく<滋賀>

 滋賀地方協力本部(本部長・𠮷田修造1陸佐)は5月9日、「彦根城クリーン作戦」に参加。第3偵察戦闘大隊(大隊長・阪井邦丸2陸佐)が実施する彦根城清掃を支援した。

 開会セレモニーには彦根市のマスコットキャラクター「ひこにゃん」と滋賀地本の同「滋賀ぽん3兄弟」が登場。観光客から温かい拍手を受けた。

 本作戦では、ボランティア授業の一環として彦根総合高校野球部の生徒30名が参加した。

 第3偵察戦闘大隊は、国宝彦根城の石垣を傷つけないよう細心の注意を払いながら懸垂下降を行って草を刈り、刈った草を彦根総合高校の生徒が集めるという共同作業を行った。

 レンジャー隊員が懸垂下降を行う間、彦根地域事務所(所長・熊畑勇人2陸尉)の広報官でレンジャー隊員でもある大野准陸尉がレンジャー教育の概要について説明。生徒たちは興味深く聞き入っていた。

 ロープワーク講習も行われ、生徒たちは災害時に役立つ「もやい結び」などを学んだ。また展示された装備品車両を見学し、生徒らの「おつかレンジャー!」という元気な掛け声で「彦根城クリーン作戦」は締めくくられた。

 滋賀地本は今後も地域のさまざまな活動に参加するとともに、総合学習の支援をすることで、地域や学校との連携強化に取り組んでいく。



いなづまに<神奈川>

 神奈川地方協力本部は5月31と6月1日、「第44回横浜開港祭」において、海自護衛艦「いなづま」の一般公開を実施した。会場となった横浜ハンマーヘッド9号岸壁(横浜市中区)には、2日間で約1万1千名が来場した。

 初日はあいにくの風雨に見舞われたが、熱心な見学者が多数来場した。

 中でも艦艇イベントの常連である中学2年生の道上奏音(みちうえ・かなと)君は神奈川地方協力本部長の大谷三穂1海佐とすっかり顔なじみで、笑顔であいさつを交わし、艦長の吉田潤2海佐には自筆の「いなづま」の絵をプレゼント。艦長から記念のメダルを贈られると満面に笑みを浮かべ、「将来は海自に入り護衛艦いずもに乗りたい」と語っていた。

 2日目は好天に恵まれ来場者数も大きく増加した。この日は、神奈川地本のスクールモニターを務める大学2年生の田中萠美(たなか・めぐみ)さんが「1日艦長」に任命された。

 田中さんは海自の白い夏制服に身を包み、双眼鏡を手に艦長席に座り、艦橋から艦内放送であいさつ。上甲板では来場者との記念撮影に応じ、子どもたちから「かっこいい!」と声を掛けられていた。

 岸壁では空自中部高射群第2高射隊による水タンク車や炊事車などの装備品を展示するとともに、陸自高等工科学校吹奏楽部による演奏も行われ、観客から大きな拍手が送られた。

 神奈川地本のブースには県内各地の募集案内所から広報官が集結。ちびっ子自衛官制服試着、南極の氷展示などを通じて多くの来場者と交流を深めた。地本キャラクター「はまにゃん」も登場し、子供たちの人気を集めていた。

 神奈川地本は今後もあらゆる機会を通じて自衛隊への理解を促進し、防衛基盤の拡充を図っていく。



もしもの時<旭川>

 旭川地方協力本部(本部長・中尾1佐)は6月25日、旭川龍谷高等学校で行われた防災教育に第2師団の支援の下協力した。

 防災教育は災害発生時に適切に行動できるように考えることを目的に行われ、旭川市防災課と、旭川地本からは旭川地区隊(隊長・苅田1尉)が協力した。

 本教育では「地震から火災発生」を想定した避難行動から開始され、生徒たちはそれぞれ指定された避難場所に移動し前段訓練の一次避難が終了した。後段訓練では、救命処置やけがをした場合の応急処置を旭川市職員や隊員の手ほどきを受けながら実習した。

 実習では1~3年生681人が段ボールベッドの組み立て、止血法、骨折の応急処置、心肺蘇生法、AEDの取扱い、けが人の搬送要領を体験。30度を超える中、生徒たちは汗を拭いながら真剣に教育を受けた。

 教育の最後に苅田1尉は「本日皆さんが学んだことは、家族や地域の人たちを助けること。そしてそれを伝えることが重要。これからも防災意識を高め継続した備えと訓練が大切です」と述べた。生徒会長からは「今日学んだことを、もしもの時に役立てたいと思います」との感想が語られた。

 旭川地本は引き続き自治体、地域等に根差した活動を目指す。



楽器講習行う<青森>

 青森地方協力本部弘前地域事務所(所長・阿部幸央1陸尉)は5月17日、弘前市立第四中学校で行われた第9音楽隊(隊長・大志田真澄2陸尉)による楽器別講習会を支援した。

 弘前地区吹奏楽連盟加盟に所属している生徒を対象に、プロの奏者の演奏を直接聞くことで自分の音を見つめ直し個人技術の向上と音楽性の涵養することを目的として開催された。

 弘前地区吹奏楽連盟に所属する中学校10校・高等学校4校の生徒達約270名が参加した。

 楽器別講習会はフルートやトランペット、ホルンなど各パートとレベルに応じてグループ分けされ、音楽隊員が楽器の手入れや演奏前のウォーミングアップ法や練習法等を可能な限り分かりやすく教えていた。生徒たちは少しでもレベルアップしようと真剣なまなざしで聞き入り、時にはメモを取るなどしていた。

 参加した生徒は「練習法や楽器のことを教えてもらいました。疑問点を分かりやすく教えてもらい、とてもうれしかったです。ありがとうございました」と感想を述べていた。

 青森地本は、今後も楽器講習会等の行事を積極的に支援し、地域の多くの皆様に自衛隊の活動や自衛官の魅力をご理解いただくよう、創意工夫をもって広報活動を推進していく。




読史随感<第177回>
神田 淳

正義について考える

 「人はパンのみにて生きるものにあらず」という。イエスの言葉である。人は物質的満足だけを目的として生きるものではないとの意だが、人間が生きるために必要で、重要なものに「正義」があるのではないかと私は思う。アリストテレスが「人間はポリス的動物である」と言うように、人間は本質的に社会的な存在で、共同体の中で生きる。正義は社会(共同体)の秩序を形成する取り決めで、人はこれ無くして生きるのは難しい。故に人は社会に正義が行われることを望み、不正を嫌悪する。

 正義とほぼ同じで、より広い概念として「義」がある。義は、人として守るべき正しい道、道義とされる。以下、正義あるいは義について、識者、賢人がどのように論じてきたか振り返ってみるが、現在、戦争が起き、無秩序化が進むようにみえる世界の中で、人々が正義をより強く望むようになっているのではないかと私は感じている。

 義は儒教の重要徳目の一つである。孔子は『論語』で義について言う。「君子は義に敏感であり、小人は利益に敏感である」、「義を見て為さざるは勇無きなり」、「君子は義を本とし、礼をもって義を行い、謙遜をもって義を表し、信頼を以て義を実現する」、など。

 孔子は人のあり方として仁(=愛と思いやりをもって共生する心)を根本に置いたが、戦国時代の思想家・孟子は仁と義が根本であるとした。孟子は仁義に基づく政治が混乱の世を救うと信じた。そのため君主が仁義の実践者となって国を治めるべき(王道政治)と説いた。孟子がどれくらい義を重んじたか。孟子は、「生も私の欲するものであり、義も私の欲するものである。だが、二つを同時に得られないなら、私は生を捨てて義をとる」と言う。

 道徳規範として義を非常に重視したのが武士道である。新渡戸稲造は『武士道』で、義を武士道道徳の最初に置き、武士にとって裏取引や不正ほどいまわしいものはなく、武士の規範の中で最も厳しいものが義であると言う。

 内村鑑三は『代表的日本人』で、最後の武士と言われた西郷隆盛について述べる。西郷は正義の広く行われることが文明であると信じた。彼にとってこの世で正義ほど貴いものはなかった。彼の命、そして国家よりも正義は貴いものだった。西郷は言う、「正義のためなら国家と共に倒れる精神がなければ、外国と満足できる交際も期待できない」。

 西洋ではキリスト教において、人が神と正しい関係にあることが義とされた。そして人は信仰によって義人となる。西洋ではこのようなキリスト教の伝統もあるが、正義について広範囲の政治哲学の考察がなされている。平等の実現、不公正でないこと、思想・良心・言論・心身の自由が侵害されないこと、個人の財産が侵害されないこと、弱者が救済されること、公平に分配されること、社会の幸福が最大化されることなど、正義の考えが考察されている。そしてこうした正義が無条件に正義とならない場合があることも考察されている。

 西洋の正義論の特徴として、正義が権利と法と不可分と考えられていることがあげられる。justice(正義)の語源はラテン語のjusで、これは法的権利を意味するという。正義とは個人が持つ権利が保護され、争いになっても法のもとで正しく解決されることを意味した。

 人間は正義を求めてやまない存在だと思う。現在の問題にどう取り組むのが正義か。そんなことも考えながら参院選の投票に行った。

(令和7年8月1日)

  

神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。

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