自衛隊ニュース

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国連TPP教官団が帰国

アジア各国工兵に重機操作訓練

写真=帰国報告を行う団長の中務2佐


 7月11日、国連三角パートナーシップ・プログラム(国連TPP)の一環で、カンボジアに派遣されていた教官団を代表して4名が森下陸幕長に対して帰国報告を行った。教官団23名は4月28日から6月20日まで、バングラデシュ・ブータン・カンボジア・インドネシア・パキスタンの工兵24名に対して、油圧ショベルやグレーダー等重機の操作における初級練度到達を目標とした訓練を行った。国連TPP施設分野でアジアおよび同周辺地域へ教官を派遣するのは、試行訓練を含めて今回で8回目。

 森下陸幕長は、「皆が頑張ってくれたおかげで、日本の信頼を高めることができた。素晴らしい成果をあげてくれてありがとうという気持ちを伝えたい」と労いの言葉をかけた。

 帰国報告を行った4名の所感は以下のとおり。

 中務裕仁2陸佐(団長)「訓練生全員が所望の練度に到達でき、カンボジアを離れる際は訓練生が涙を流して別れを惜しんでくれた。事業および防衛交流の役割を果たせた」

 橋本周平2陸曹「現地で築いた友情は一生消えない。目には見えないが日本の国際活動の軌跡を残せたことが嬉しい」

 垣地教彦1陸曹「中身の濃い2カ月を過ごすことができ、カンボジア軍の支援に感謝している」

 兼本眞里奈2陸曹「公私共に初めての海外で日本とは違う環境や人の中、正義教官として教えるうえで自分自身も多くを学び、成長することができた」

国連平和活動局で活躍
荒木1陸佐が帰国

写真=陸幕長と懇談をする荒木1佐


 7月16日、米国ニューヨーク市の国連本部に令和4年7月から派遣されていた荒木順子1陸佐が森下陸上幕僚長に帰国報告を行った。荒木1佐は国連平和活動局軍事部軍事計画課において軍事計画官として活躍。特に国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)担当官として、UNMISSの出口戦略・各種計画の作成に携わり、同ミッションの円滑な運営に貢献した。これらの功績が認められ、陸幕長から第2級賞詞が防衛功労章を添えて授与された。

 荒木1佐は「過去のUNMISSの司令部要員として現地で活動した経験を生かして、ニューヨークにある国連本部からUNMISSの任務に携わることができ、達成感を感じています。今回の派遣で得た経験と自信を今後の業務に活かしていきたい」と振り返った。

 国連本部への自衛官派遣は、陸自が掲げる国際貢献の柱のひとつで、平和活動局は荒木1佐で延べ8人目。

第32回連合准曹会評議委員会
新会長に三浦准尉が就任

写真=前会長の上田准尉(左)と新会長の三浦准尉(右)


 航空自衛隊連合准曹会は6月12日、13日の両日、グランドヒル市ヶ谷にて「連合准曹会評議委員会」を開催した。今回で32回目を迎えた本評議委員会には、全国から72支部の代表が一堂に会し、本部提案、支部提案、あり方検討などを通じて、連合准曹会の今後の方向性について活発な議論が交わされた。

 また、評議委員会に併せて「連合准曹会会長交代式」が執り行われ、前会長の上田順一准尉から最高顧問の内倉浩昭航空幕僚長へ会旗が返納された後、新会長の三浦史之准尉へと正式に引き継がれた。上田准尉はこれまでの活動を振り返りつつ、会員への感謝と今後への期待を述べ、三浦准尉は新たな決意を胸に、連合准曹会のさらなる発展に向けた抱負を力強く語った。

 交代式に続いて「優秀若年隊員顕彰表彰式」が行われ、受賞隊員に対し内倉空幕長からは記念トロフィーが、つばさ会副会長の藤田氏及び東京マラソン財団事務局長の齊藤氏からは記念品が直接手渡された。受賞した隊員たちは、緊張の面持ちの中にも、日頃の准曹会活動が認められたことへの誇りを感じさせる表情を見せていた。内倉空幕長は表彰式の中で、准曹会員に向けて「空いた時間を活用し、様々なボランティアを子供たちのために取り組んでいきましょう」と述べ、准曹会と地域社会との結びつきの重要性を強調した。さらに、皆さんにお願いしたいこととして、「恩返しではなく恩送りをして下さい。それこそが皆さんに残された任務でもあります」と語り、今後の行動指針としての思いを准曹会員らに力強く伝えた。

 新会長の三浦准尉は、「全国で活躍してくれている未来を担う優秀な隊員の功績が、評価される場を少しでも提供できたことに心から感謝しています」と語り、今後の活動への意欲を示した。

  

受賞者は以下のとおり

(カッコ内は所属基地)

《優秀若年隊員》

 山枡寛大3曹(長沼)、佐藤勇喜士長(松島)、澁谷明里3曹(府中)、馬場龍鉱3曹(入間)、門田慧3曹(熊谷)、浦西あゆみ2曹(浜松)、藤井秀平3曹(奈良)、安谷屋千寿士長(春日)、道下颯3曹(芦屋)、上村天将2曹(沖永良部島)、


《特別功労賞》

 山口直1曹(峯岡山)、伊藤克哉准尉(静浜)、坂井良太1曹(御前崎)、野下和真1曹(奈良)、小倉貴之曹長(串本)、竹村典之曹長(土佐清水)、大澤竜介1曹(見島)、滝田勤曹長(恩納)、宮﨑脩1曹(知念)、稲津友啓曹長(宮古島)

ノーサイド
北原巖男

女性の活躍

 7月20日に実施された参議院議員選挙。投票率57・91%。

 与党は、衆議院に続いて参議院でも過半数割れとなり、多党化も一気に進みました。爾後、様々な動きに係る報道が連日なされています。早急に対処しなければならない懸案山積の我が国のこれからについて、多くの国民は心配や不安を抱いているのではないでしょうか。

 こうした中にあって、自衛隊員の皆さんは、常に国民と共に在る国民の自衛隊として、地震や洪水等の大規模災害や国の安全に係るいかなる事態の生起に際しても、国民の負託に応え得るよう、不断の訓練に励み、粛々と与えられた任務の遂行に努めています。

 頑張ってください!

 今回の選挙結果の、もう一つの特徴は、多くの女性当選者の誕生です。

 各党当選者のうち42人の女性候補者が当選しました。(自由民主党7人/39人・立憲民主党12人/22人・国民民主党5人/17人・参政党7人/14人・日本維新の会3人/7人・共産党2人/3人・れいわ新選組2人/3人・無所属4人/8人)

 これは、全当選者125人の約34%。初めて30%を超え過去最高です。

 なお、立憲民主党・共産党・れいわ新選組は、女性が当選者の半数を超えています。参政党は、ジャスト半数が女性です。

 前回、令和4年7月の参議院議員選挙では、当選者125人中、女性は35人・約28%を占め、過去最高とされていました。今回、それを6ポイントの大幅アップです。

 これにより、参議院全体では、250人中77人・約31%、3人に一人を女性議員が占めることになります。地に足をつけての様々な活躍を大いに期待したいと思います。

 他方、昨年10月に実施された衆議院議員選挙では、女性当選者は73人。全体465人の僅か約16%に留まっています。今回の選挙結果も踏まえ、次回の衆議院議員選挙では、各党から最大限の進出が望まれます。

 なお、筆者が関わっている東ティモールの国民議会(一院制)は、65人中25人・約38%を女性が占めています。更に、財務大臣・保健大臣・教育大臣・連帯大臣等の重要閣僚を女性が占めていることも指摘しておきたいと思います。

 「世界経済フォーラム」が公表している「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2025」(2025年6月11日公表)によると、全148か国中、日本の「総合順位」は118位。G7の中では85位のイタリア以下。G7で最低です。

 更に、ASEAN10か国の状況を見ても、日本は、ASEANで最低の108位のマレーシア以下です。(但し、ミャンマーはデータ不明)。なお、東ティモールは、日本より上位の86位。

 特に女性の「政治への関与」については、G7諸国のイギリスは5位、ドイツ8位、フランス34位、カナダ41位、アメリカ56位、イタリア65位。そして日本は、断トツビリの125位。

 ASEANは、30位のフィリピンをトップに、シンガポール75位、ラオス95位、インドネシア103位、タイ105位、108位ラオスと続いています。125位の日本より低い国は、127位のカンボジア、128位のマレーシア、135位のブルネイの3か国。ちなみに、東ティモールは76位。同国が本年10月にASEANに加盟しますと、ASEAN11か国でトップ3になります。

 今回の参議院議員選挙の結果を受けて、2026年版では、多少順位の変動はあるかもしれませんが、それにしても、グローバルに見た場合、我が国の低さに衝撃を禁じ得ません。

 しかし、今回の参議院議員選挙の結果は、我が国の女性の「政治への関与」について、日本社会がこれまで経験したことのない新しい時代の幕開けへの、一つの大きなトリガーになるような気もいたします。多くの女性の皆さんのチャレンジと活躍を祈念致します。

 ところで、参議院議員選挙の直前の7月18日、防衛省から「女性自衛官の配置制限の完全撤廃について」が発表になりました。

 曰く「本日、防衛省女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部(本部長‥防衛副大臣)において、陸上自衛隊の有機化学剤や放射能などに汚染された地域で活動する可能性がある特殊武器(化学)防護隊の一部の部隊の女性自衛官の配置制限を解除することに決定いたしましたので、お知らせします。

 これにより、陸・海・空自衛隊における女性自衛官の配置制限を完全に撤廃することになります。」

 「完全撤廃か、凄いなぁ」、筆者は大変感慨深くこの発表を受け止めております。

 筆者が若かりし昔、女性自衛官の職域拡大について検討していた当時とは、隔世の感があります。もちろん、母体の保護等も重要視して来ましたが、常に念頭にあった大前提は、「あくまでも精強性に支障の無い範囲で」ということでした。

 その後、戦闘機パイロットや空挺隊員、更には潜水艦乗り組み要員等も配置制限が撤廃され、多くの意欲と能力のある女性自衛官が、士気高く精強無比にて活躍していることを考えますと、当時の筆者の頭の中には、女性自衛官に対する一種の差別的・偏見的な思い込みがあり、そのため、配置拡大の検討は自ずと限定的なものに留まらざるを得なかったと振り返っています。

 防衛省では、2021年度以降、自衛官の採用者に対する女性の割合目標を17%以上としており、2024年度の実績は17・3%。更に、全自衛官に占める女性の割合は、2030年度までに12%以上にするとの方針を掲げ、教育基盤の整備をはじめ諸施策を進めています。2025年3月末現在の女性自衛官は2万46名、全自衛官現員の約9・1%となっています。

 令和7年度の「防衛白書」は、防衛省・自衛隊としては、意欲と能力、適性のある女性があらゆる分野にチャレンジする道を拓き、女性自衛官比率の倍増を目指している旨、明記しています。

 女性国会議員や女性自衛官をはじめ、各分野における女性の皆さんの一層の関与・進出・活躍を祈念します。同時に、彼女たちの活躍を支える各種基盤整備も焦眉の急です。

 東ティモールにはこんな言葉があります。

 「Feto Forte,Nasaun mos Forte!」(女性が強ければ、国もまた強い!)

 女性の皆さんに、力いっぱいのエールを送ります!


北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


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