自衛隊ニュース
日蘭防衛協力の強化で一致
ACSAの早期発効の重要性を確認
写真=握手する小泉大臣とイェジルゲス大臣
6月16日、小泉進次郎防衛大臣は、防衛省でオランダのディラン・イェジルゲス=ゼゲリウス副首相兼国防大臣と会談し、今後も両国間の防衛協力を強化していくことで一致した。
両氏による公式会談は今回が初めて。しかし、小泉大臣のSNSでは、5月のシャングリラ会合の休憩時間に歓談する様子や、前日に行われたサッカーワールドカップ「日本‐オランダ戦」を共に観戦する様子が紹介されており、良好な関係がうかがえる。
会談の冒頭、小泉大臣は「今や欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は一体不可分だ」と述べたうえで、15日にオランダ海軍フリゲート「デ・ロイテル」が東京に寄港したことについて、オランダのインド太平洋地域への関与を具体的に示すものであり、日蘭防衛協力のさらなる発展に資するものとして歓迎した。
会談では、小泉大臣が地域における抑止力の維持・強化に向け、艦艇や航空機の継続的な派遣を含むオランダの関与に期待を示した。両大臣は共同訓練をはじめとする防衛協力・交流や地域情勢について意見交換し、防衛協力を一層強化していくことで一致した。
また、昨年末に署名された日蘭物品役務相互提供協定(ACSA)の早期発効の重要性を確認したほか、防衛装備品・技術移転協定など新たな法的枠組みの構築や、防衛大学校へのオランダ軍短期留学生受け入れについても意見を交わした。
退職自衛隊員・家族の支援を強化
「支援庁」新設も視野に検討入る
写真=挨拶をする小泉大臣
防衛省は、退職自衛官やその家族に対する支援策の強化に向けた検討に着手した。6月17日、小泉進次郎防衛大臣を委員長とする「退職自衛隊員・家族に対する支援の強化に関する検討委員会」の第1回会合が防衛省で開かれた。小泉大臣は、「退職自衛官・家族支援庁(仮称)」の創設を含めた支援体制の在り方について議論を行い、今後の予算要求につなげるよう指示した。
自衛隊では人材確保が大きな課題となる中、現職隊員の処遇改善に加え、若年定年制度により退職する隊員の生活設計や再就職への不安を軽減することが重要視されている。防衛省は人的基盤強化の柱の一つとして「新たな生涯設計の確立」を掲げており、本委員会で具体的な施策を検討する。
会合で小泉大臣は、「自衛隊員という職業を選択し続けてもらうためには、現職自衛隊員の処遇改善はもちろんのこと、退職した自衛隊員やご家族の皆様も誇りを持ち、胸を張って安心して人生を全うできる環境を構築していくことが必要だ」と強調した。
また、米国の退役軍人省が退役軍人に対して給付や医療、福祉などのサービスを提供していることを例に挙げ、「退職自衛官・家族支援庁のような組織についても検討する必要がある」と述べ、退職後の支援を総合的に担う新たな組織の創設に言及した。防衛省は今後、再就職支援や生活支援、家族支援の充実に向けた具体策について議論を深め、自衛隊員が退職後も安心して生活できる環境整備を進めていく方針だ。
「隊員と家族を守り抜く」大臣が祝辞
写真=祝辞を述べる小泉大臣
6月16日、小泉進次郎防衛大臣は、ホテルグランドヒル市ヶ谷で開催された「公益社団法人自衛隊家族会創立50周年祝賀会」に出席した。
自衛隊家族会(会長・増田好平元防衛事務次官)は、隊員とその家族への支援を目的に1976年に「全国自衛隊父兄会」として発足し、2016年に現在の名称へ改称した。今年、創立50周年の節目を迎えた。
祝賀会で小泉大臣は祝辞を述べるとともに、「防衛大臣として、隊員の皆さんの名誉、そしてご家族の皆さんの尊厳が傷つけられることを黙って見過ごすわけにはいきません。その思いで、防衛省一丸となって自衛隊員とそのご家族を守り抜きます」と強調した。
また、「50周年は新たなスタートです。ご家族への支援や退職自衛官への支援を着実に進めていけるよう、共に頑張りましょう」と呼びかけた。
祝賀会には会員や防衛省・自衛隊OBのほか、政務三役、事務次官、統合幕僚長、陸海空各幕僚長らが出席し、創立50周年を祝った。
統幕木村陸将補が豪州訪問
指揮通信・サイバー分野で連携を強化
写真=ジョーンズ海軍中将と
統合幕僚監部首席指揮通信システム官の木村顕継陸将補は、5月19日から21日にかけ、豪州のキャンベラ近傍に所在する統合作戦司令部及びサイバー関連部隊を訪問した。
今回の豪州訪問は、指揮通信やサイバー分野における連携強化を通じ、日豪両国の相互運用能力の向上に資する意見交換を行うことを目的としたものである。
木村陸将補は、統合作戦司令部において司令官のジョーンズ海軍中将及び各幕僚部と、重要性を増すサイバー領域を含むインド太平洋地域の情勢認識について意見交換を行い、同司令部の自衛隊連絡官の勤務状況を視察した。
また、カウンターパートの豪軍統合能力グループのサイバー作戦部長であるグールド陸軍少将をはじめとする指揮通信・サイバー領域の担当官と実務的な意見交換を実施し、日豪の連携強化の方向性を確認するとともに、同国軍がネットワーク監視を行うネットワーク・オペレーション・センター(NOC)等の関連施設及びサイバー関連部隊を視察した。
さらに、木村陸将補は豪陸軍司令官のスチュアート陸軍中将の招待により、豪戦争記念館で開催された同国陸軍の公式行事に参列し、同国陸軍幹部と意見交換を実施した。
木村陸将補は、今回の訪問について「インド太平洋地域におけるパートナーである豪州との安全保障・防衛協力の強化のため、指揮通信・サイバー分野での連携も推進していきたい」と述べた。
ノーサイド
北原 巖男
防大留学生
国民の皆さんは、将来幹部自衛官となる人材を育成している防衛大学校(横須賀市)に、海外留学生がいることをご存知でしょうか。
現在、防大(本科)には、タイ、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、モンゴル、ベトナム、韓国、ルーマニア、カンボジア、東ティモール、ラオス、ミャンマー、トンガ、フィジーから112名の留学生が在籍し、5年間の教育・訓練に取り組んでいます。このほか、研究科(大学院)にも留学生がいます。(令和8年4月時点 防大HPより)
防大は、今から68年前の昭和33年(1958年)、初めてタイから留学生を受け入れたのを皮切りに、これまでおよそ500名にも上る各国の留学卒業生を輩出して来ています。彼らは、帰国後それぞれの国で活躍しており、古くからの留学生たちのなかには、日本の統合幕僚長のような軍人の最高位である軍最高司令官や日本の航空幕僚長のような空軍トップの空軍最高司令官を始め、軍の枢要な地位を占めているOBも沢山おられます。また卒業生のみならず、怪我や病気等のため途中で帰国を余儀なくされた学生たちも本国でそれぞれ活躍されていると仄聞しています。若い世代、壮年層の卒業生については、その国の軍の中核を占めていると言っても過言ではありません。
また、海外のPKO活動に派遣された自衛隊員が現地で他国の防大卒業生と会い、連携を密にしながらオペレーションを行ったとか、防衛関係の国際会議で日本語が飛び交い実は防大出身者が多かったとか、ジャカルタの東ティモール大使館の武官補佐官に就任した東ティモール国軍の防大卒業生からは、インドネシア軍のみならず何人かの各国の防大卒業生に会い、胸襟を開き盛り上がった旨の連絡を受けるなど、世界各地で卒業生の絆の強さを感じさせられる話は枚挙にいとまがありません。
防大留学生は、最初の1年間は日本語研修生として主に日本語の学習に励みその修得に努めます。その後4年間、学問と訓練の日々をおくります。
防大では、留学生は、いわゆる「お客さん」ではありません。厳しい教育・指導に、日本人学生と留学生の区別はありません。言葉のハンディを含め異国で苦闘する留学生の皆さんは、本当に大変でしょうが、どこまでもプラス思考で頑張って頂きたいと思います。彼らにとって、日本のお父さんやお母さんであるホストファミリーの皆さんと共に、心から力いっぱいの声援を送ります。
留学生を含む防大生は、課業を通じてまた寝食を共にして濃厚な時間を過ごします。それぞれの大隊に所属し、先輩・同期・後輩の絆は強く結び付かれることとなります。
先日、小泉防衛大臣がインドネシアを訪問され、プラボウォ大統領の私邸に招待された際、同大統領は防大卒業生も招いて小泉大臣に引き合わせてくださった由。また大統領の隣にいた現職の農業副大臣も防大卒業生だったとのことです。(6月19日小泉防衛大臣記者会見より)
インドネシアのみならず、各国の防大卒業生は、軍のみならず政治家を含め様々な分野で活躍されています。そして日本との貴重な懸け橋になってくれています。日本にとって、かけがえの無い極めて大切な人的アセットです。
日本の国力低下と相俟って、国際的に日本の存在感を問う声がありますが、防大の留学生制度ほど日本の国際貢献や国造り支援を感じられるものが他にあるでしょうか。費用対効果と言った観点からも、これほど有用な施策はありません。
昨年10月、正式加盟申請から14年7か月の長きを経て、ようやくASEANに加盟した東ティモールも、2010年から防大に留学生を送り続けています。ここで特記すべきは、激しい独立回復闘争を主導し、独立後の防衛・安全保障の在り様や女性の活躍を踏まえた東ティモールの指導者シャナナ・グスマン首相の大変強い要請を受け、防大が史上初めて女性留学生を受け入れたのが東ティモールということです。
初めて留学生を送る時、グスマン首相やルアク国軍司令官など東ティモールの指導者は「我が国は民主国家である。日本の自衛隊が我が民主国家国軍の目標である。しっかり学んで自衛隊のような国軍を創り上げてもらいたい」と留学予定の若者たちに訓示しました。
あれから、既に17名(うち女性1名)が卒業し、いずれも国軍(総兵力約3500名)で活躍しています。今年度は、男性(18歳)と久しぶりの女性(19歳)の2名が新たに入校しています。筆者も、彼らを成田空港に出迎えましたが、いずれも瞳輝き爽やかな笑顔の若者です。
彼らが、吉田学校長はじめ教職員の皆様の厳しくも温かいご指導を、将来の東ティモールを担い得る実力とリーダーシップの素地を身に付ける絶好のチャンスと捉え、どこまでもハングリーに挑戦して行くことを願って止みません。同時に、大いに防大生活を楽しんでもらいたいと思います。
ガンバレ東ティモールの留学生!
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事