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読史随感 神田淳

<第152回>「政治は最高の道徳」について

「政治は最高の道徳である」。戦前の浜口雄幸元首相が残した言葉で、戦後では福田赳夫元首相の口癖だった。現在の自民党にも、「政治は最高道徳」を政治信条とする政治家がいる。
 しかし今の日本は、政治資金の裏金問題とか、政治家の不倫問題などがスキャンダラスに報道され、政治家に道徳など期待できない、政治家が道徳を口にするのがおこがましい、といった風潮がある。こうした、日本に見られる、ただ政治の悪さを嘆き、政治を軽蔑する風潮はよくないと私はいつも思う。
 一方、「政治は最高道徳である」はすばらしいものの、この政治信条の実践は、真面目な意味で本当に難しいと思う。実際の政治的活動において、具体的にどう決断していくのが最高道徳になるのか容易にわからないからである。政治学者マイケル・サンデルは正義とは何かを追求し、幸福の最大化、自由の尊重、美徳の涵養の三つのカテゴリーから正義を論じた。現実の具体的案件に直面する人間が、どのように判断し、決断し、行為するのが正義といえるか、多くの具体的事例に即して検討し、幸福、自由、美徳という申し分のない正義のカテゴリーも、一律にそれだけを金科玉条とする判断では正義にならない場合もあることを示した。同様に、人々の幸福、自由、美徳の実現が最高道徳であると考えても、政治家が現実的具体的問題に直面してどう判断すれば最高道徳に適うのか、容易にわからない。
 また、近代政治学は政治に関する実証的、経験的、科学的な研究を主たる研究領域とし、政治に関する哲学的、倫理的な考察、あるいは政治や国家の本質や目的、実現すべき理念や価値などは、政治学の重点的な研究対象から除外される傾向にあるように見える。近代の学問の専門化傾向、分析的、要素還元的傾向と軌を一にする傾向だろうか。しかし、共同体の中で生きる人間のあり方を問う政治学は、必然的に倫理、道徳を広く含む研究となるのであって、その観点から近代よりも古代のアリストテレスに、より普遍的な政治学の考察が見られるかもしれない。アリストテレスは政治学と倫理学を一体的に考察した。アリストテレスは道徳の根底にある「善」を考察し、「善こそが政治の究極目的である」、「最高善は政治的である」と言い、政治的共同体の至高目的は国民の美徳の涵養にあると説いた。
 日本の政治家が「政治は最高道徳」と言うとき、「最高道徳」は単に道徳の一徳目ではなく、個々の道徳を含みつつ、これを超えた高度の総合的な道徳的判断力、善の実行力をイメージしていると思う。狭量な道徳的判断でもなく、教条的な判断でもない、おそらく愛と勇気に満ちた理性的な道徳的判断力、実行力であろうが、これを常に誤らず現実の政治に実現するのは至難のことで、これができる政治家は多くないだろう。
 しかし、「政治は最高道徳」という政治信条をもつ政治家は、そうでない政治家よりすぐれた実績をあげてきたのではないか。完全に実践できなくても、こうした政治信条は政治家に良き政治的判断をもたらすと信じる。浜口雄幸元首相、福田赳夫元首相はすぐれた、良き政治家だったと思う。政治家の不徳をいたずらにあげつらうのではなく、「政治は最高道徳」を信条とするような良き政治家を我々は支援していきたい。
(令和6年7月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。

自高射部隊創立60周年

「防空における最後の砦」さらなる進化へ

今年、創立60周年を迎える航空自衛隊高射部隊は5月31日、記念行事として、航空幕僚長代理の小笠原卓人航空幕僚副長をはじめ多くの来賓や関係者、そして歴代高射群司令らが出席し、習志野演習場で器材展示、TKP東京ベイ幕張にて式典及び祝賀会を実施した。
 高射部隊は昭和38年1月、習志野駐屯地に陸上自衛隊第101高射大隊が誕生したことに端を発し、翌39年4月に航空自衛隊に移管され、航空自衛隊の部隊としての歴史が始まった。
 当日午前は雨天の中の器材展示になったものの、全4個高射群及び高射教導群から代表隊員が参加し、部隊ごと5個ペトリオット器材による車両てい隊行進を披露した。深緑色の重厚な車両が整斉と行進する様子は圧巻であった。
 続く式典においては、小笠原空幕副長が「創立以来、高射部隊は一貫して我が国の防空における『最後の砦』として隙のない態勢を維持してきた。新たな防衛力整備計画において、新型レーダーを導入し更なる能力向上を目指すこととなり、高射部隊はなお進化し続けることが必要であり、今後も将来を見据え、部隊のたゆまぬ研鑽と進化を期待する」と祝辞を述べた。
 また、各高射群司令及び高射教導群司令を代表し、村田晶洋中部高射群司令が「高射部隊60周年の節目にあたり、部隊のよき伝統と輝かしい歴史を継承しつつ、環境の変化に的確に対応しながら未来に向かって各高射群・高射教導群が切磋琢磨し、精強であらゆる事態に即応できる部隊を目指す」と決意を新たにした。

「航空自衛隊70周年記念奈良基地祭」 

「防空における最後の砦」さらなる進化へ

6月1日、航空自衛隊奈良基地(司令・岡本秀史空将補)にて盛大に開かれた「航空自衛隊70周年記念奈良基地祭」は、地域住民や自衛隊員、その家族など多数の来場者で賑わった。基地祭は、自衛隊の活動を広く知ってもらうとともに、地域との交流を深めることを目的としている。
 幹部候補生の観閲式では、整然と行進する姿を来場者に見てもらうことができ、その後の飛行展示は数年ぶりの戦闘機が飛来するということもあり大いに賑わいを見せた。
 同日、奈良地方協力本部が企画し、フジトランスポート株式会社の全面協力のもと、ラッピングトラックのお披露目式も開かれ、このラッピングトラックが全国の公道を走ることとなった。

西部航空方面隊調理競技会

地元特徴活かした「空上げ」で勝負

5月29日、航空自衛隊春日基地において「西部航空方面隊調理競技会」が実施された。競技レシピは「空自空上げ」とし、西部航空方面隊隷下12個部隊より、それぞれ1名の選手が競技に参加した。
 読者の方は「空自空上げ」をご存じだろうか。
 ご存じの方は、航空自衛隊マニアと言えるだろう。そもそも、「空自空上げ」とは航空自衛隊の「空」と、より「上」を目指すことをかけあわせて「空自空(から)上(あ)げ(とりのから揚げ)」と呼称し、航空自衛隊の食の定番化、そして、国民の航空自衛隊に対する親近感を醸成するために、平成29年度から組織として普及に取り組んでいるものだ。
 さて、競技の結果は、第19警戒隊(海栗島)の「とんちゃん空上げ」が見事優勝に輝いた。海栗島分屯基地が所在する対馬市のソウルフードである豚料理「とんちゃん」のたれをレシピに使用したものだ。
 準優勝は、第8高射隊(高良台)の「久留米焼鳥風空上げ」が入賞した。高良台分屯基地が所在する久留米市は、日本屈指の焼き鳥激戦区であることから本レシピが考案されたとのことだ。
 そして第3位は、第17警戒隊(見島)の「見島おにようず空上げ」だった。「おにようず」とは、地元山口県見島の鬼のような大凧のことで、これをモチーフにした見た目となっている。
 各部隊代表選手は、日ごろの訓練成果を遺憾なく発揮し、大きなプレッシャーのかかる中、一生懸命調理に取り組んだ。主催した西空司令部は、「各部隊の空上げレシピについては、西空X(旧Twitter)により適宜発信されますので、ご家庭で調理の上、ご堪能いただければ」としている。

中空司令官搭乗視察・感謝状贈呈式

4月9日および10日の2日間、航空自衛隊百里基地(司令・松浦知寛空将補)では、中部航空方面隊司令官の門間政仁空将による搭乗視察等及び感謝状贈呈式が行われた。
 中空感謝状贈呈式は、9日午前に司令部庁舎2階特別応接室で執り行われ、中部航空方面隊に多大な貢献をされた個人及び団体に対し、感謝状と記念の盾が贈呈された。
 表彰された田崎氏は、百里基地委託歯科医師として、基地医務室における診療及び衛生指導等の継続的な実施により隊員の健康維持増進に尽力された。
 東綱商事株式会社土浦営業所は、航空自衛官の能力を評価し、多くの退職自衛官を雇用されるとともに、地域住民に対する防衛思想の普及に尽力される等、中部航空方面隊の任務遂行に貢献された。
 午後は、門間司令官が基地内施設巡視(飛行場地区及び隊舎等)および隊員懇談(空士、2・3曹、上級空曹)が行われ、懇談は話も弾み和やかな雰囲気で行われた。
 翌10日は晴天で桜が見事に満開の中、門間司令官の搭乗視察(F2戦闘機)が行われた。その後、基地グランドで隊員に対し訓示を述べ、会食後、陸路にて基地を後にした。

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