自衛隊ニュース

来て、見て、体験!中央音楽隊をのぞいてみよう
<陸自中央音楽隊>
6月29日、陸上自衛隊朝霞駐屯地にある中央音楽隊(隊長・志賀亨1陸佐)に、大型バスで学生らが降りてきた。彼らは、中央音楽隊を就職先の一つとして見るための催し「来て、見て、体験!中央音楽隊をのぞいてみよう」に参加した学生らである。今回は以下の学生(武蔵野音大・日芸・東邦音大・東京芸大・洗足学園大学・国立音大及び大学院・東海大学・桜美林大学)と会社員の約40名ずつが午前と午後に参加した。 まずは、「音楽隊の勤務地は、全国をカバーしている。海外演奏や国賓の方への演奏もあり、日本という看板を背負っている。また、隊員の士気高揚のためにレンジャー帰還式や災害派遣先での演奏も行っている。しかし、警衛などの仕事も自衛官だからあることも知ってほしい」などの概要説明から始まった。射撃訓練の「真ん中に当たった時は、演奏で高音が決まった時のような達成感があり、全ては音楽に通じている」などの話になると、固かった参加者たちの顔がニコニコとし始めてきた。 次いで、施設見学。各奏室を覗き「こんなところで練習できるんだぁ」と感激し、中音のトラックは音楽隊員が運転すると聞くと「大事に運べるね」と嬉しそう。楽器室では、種類の多さに驚き、楽譜室では「手書き時代の楽譜がある」と喜んだ。 最後はお楽しみの合奏体験、憧れの中音隊員約30名との合奏だ。ホルスト作曲「吹奏楽のための第1組曲」の練習を行なった。はじめはバラバラだった音も副隊長柴田昌宜2陸佐の指導をほんの15分ほど受けただけで一つの音になってきた。そばにいる隊員たちの優しい手ほどきも暖かかった。 今回参加した学生らは「採用枠は少ないけれど頑張って受かりたい」「ずっと音楽の仕事をしていきたい」「ここのような素晴らしい環境で練習したい」「今日の合奏はめっちゃ楽しかった」「ぜひ受験したい」「仲間になりたい」と目を輝かせて帰っていった。 陸上自衛隊音楽職種説明会は、関東・中央音楽隊9月19日~22日、北海道・北方音楽隊9月24日、東北・東北方音楽隊9月25日、関西・中方音楽隊9月27日~29日、九州・西方音楽隊10月1日、沖縄・第15音楽隊10月3日にて開催。参加申し込みは8月21日まで。詳しくは中央音楽隊HPで。 |
乗艦協力プログラム
防衛省は、6月19日から29日まで「第6回日ASEAN及び東ティモール乗艦協力プログラム」と「第2回日太平洋島嶼国乗艦協力プログラム」を実施した。これは、2016年に発表されたビエンチャン・ビジョンに基づくもので、ASEAN加盟国の士官、太平洋島嶼国の沿岸警備隊や警察関係者を招待し、艦上で海洋に関する国際法セミナーや訓練見学、海洋安全保障に関する発表を行うもの。今回は東ティモール以外では、ASEAN加盟国からブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・フィリピン・シンガポール・ベトナムが、太平洋島嶼国からミクロネシア・キリバス・ナウル・パラオ・パプアニューギニア・サモア・ツバルが各1名参加し、護衛艦「いずも」で実施された。また、海上保安庁や海自厚木基地、市ヶ谷等艦を降りて部隊研修やセミナーが行われた。
28日は防衛省で、戦時中に大本営陸軍部等の防空壕として作られた地下壕跡と、極東国際軍事裁判や三島事件の舞台となった市ヶ谷記念館を見学。人気の市ヶ谷台ツアーでも見どころとなっている場所で、ガイドの説明に興味深く耳を傾け、歴史の重みを肌で感じているようだった。
東京音楽隊第66回定例演奏会
5月21日、海上自衛隊東京音楽隊(隊長・植田哲生2海佐)の第66回定例演奏会がすみだトリフォニーホールで開催された。
演奏会は、第1部の指揮者で教育科長の渡邉1海尉が作曲した「コンサート・ファンファーレ 躍動」で華々しく幕を開けた。続いては、吹奏楽界の大作曲家A.リード作曲の「吹奏楽のための交響的素描 オセロ」の全5楽章からなるロマンティックで劇的な音楽が熱演された。続いて三宅2海曹の歌で、アメリカ合衆国の民謡「シェナンドー」。美しいコントラバス・ソロから導かれる慈しみを持った歌声に、会場は温かな雰囲気に包まれた。第1部の最後の曲「スクーティン・オン・ハードロック」のジャズの手法と目まぐるしく変化するリズムを、東京音楽隊のドライブ感溢れる演奏で第1部を締めくくった。
休憩を挟み、第2部の指揮は東京音楽隊長の植田2海佐。「マーチ プロヴァンスの風」、続いて「ハウルの動く城 ファンタジー」が演奏された。そして今回の演奏会のために編成された小編成バンドと三宅2海曹の歌で「明日への手紙」が演奏されると、会場内が優しさに包まれていった。演奏会の締めくくりは、ガーシュイン作曲の「パリのアメリカ人」が演奏された。東京音楽隊の各演奏者の技がキラリと光る演奏でこの曲の楽しげな雰囲気を表現、さながら会場は音楽によるパリ旅行を楽しんでいるようだった。
鳴り止まない拍手の中、アンコールとして「行進曲 軍艦」が演奏され、演奏会は大盛況のうちに幕を閉じた。
ノーサイド
北原巖男
常に国民と共にある国民の自衛隊
昭和29(1954年)年7月1日に発足した防衛庁・自衛隊は、本年7月1日、創設70周年を迎えました。(2007年1月9日、防衛庁は防衛省に移行。)
僕が防衛庁・自衛隊に入ったのは、発足から18年目・今から半世紀も前の昭和47年(1972年)。沖縄県の本土復帰や日中国交正常化がなった年でした。
今日の防衛省・自衛隊に対する国民の信頼や期待の大きさを目の当たりにするとき、感慨もひとしおです。自衛隊OBの一人として、国民の一人として、これからも、是非、こうあって欲しいと思います。
防衛庁・自衛隊に入るべきかどうか迷っていた当時の僕たちに、昭和30年に防衛庁1期生として採用された上野隆史さん(故人)が語った言葉が思い出されます。
曰く、「わが国の安全保障政策について、極めて鋭角的に対立する様々の議論がくり返され、現在もまだ続いている。一国の国防政策についてこのように大きな国論の分裂と混迷は、諸外国にその例をみない。・・・今や戦争体験の無い世代がわが国の安全保障政策に携わり、着々政策決定の中枢を占めんとしている。・・・とらわれた感情論、情緒論とは生まれながらにして無縁の若い優秀な諸君が、複雑な国際関係、国内情勢を冷静に分析判断し、冷厳な国際環境の中にあるわが国と子孫の安全を将来に亘って確保するため、国防の中枢たる防衛庁に集い来らんことを望むや切なるものである。」
更に、昭和31年採用の2期生西廣整輝さん(故人)は、このように僕たちに言われました。
「私は制服の人達が、日本に対する侵略が現実のものになった場合に、どのようにして戦闘に勝ち、侵略を排除するかということを中心にして防衛を考える立場にあるのに対し、私達シビリアンは、どうすれば戦争の生起を抑止しうるかといった観点から、国の安全保障を考えていくべきものだと思っています。
また、防衛問題では、軍事という特殊でかなり専門的なことを扱うので、それを国民一般にわかり易いものにして伝えることが私達の仕事であり、同時に国民一般の世論を、あるいは外交、経済、社会等各般の政策上の配慮を、具体的に防衛政策に反映させることが私達の重要な役割であると考えています。」
改めて防衛庁・自衛隊草創期の皆さんの原点の思いに対面する時、今も身震いを禁じ得ません。
木原防衛大臣は、防衛省・自衛隊発足70周年にあたって防衛大臣談話を発出しました。(2024年7月1日 筆者抜粋)
「・・・発足直後、木村篤太郎初代防衛庁長官は、職員は皆、防衛庁・自衛隊の「新しい伝統」を自分たちで作っていくという希望に燃えていると語りました。・・・今日、1つの節目を迎えるに当たり、木村長官が語った「新しい伝統」とは何かと考えました。
それは、いついかなる時も「国民のための自衛隊」である、ということではないかと思います。
今では、国民の9割が自衛隊を信頼していると言われていますが、それは、隊員一人ひとりが、この「新しい伝統」を胸に、ひたむきに任務に励んできたからこそです。
現在、我々は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らしを守るため、防衛力の抜本的強化に取り組んでいるところですが、これからも国民の信頼と期待に応え続けられるよう、防衛大臣として隊員諸君と共に一層努めていく所存です。
・・・任務が増大する中で、我々自身もまた、新たな伝統を作っていかなければなりません。」
現職の防衛省・自衛隊の皆さんには、まず健全な社会人として、そして、平時においても、いかなる事態の生起に際しても、誇りと謙虚さを兼ね備えた真に精強な自衛隊員として、国民の負託に応え得るよう、使命感を持って精進・訓練を続けて頂きたいと思います。
「防衛省・自衛隊がその実力を最大限に発揮して任務を遂行するためには、国民の支持と信頼を勝ち得ることが不可欠である。そのためには常に規律正しい存在であることが求められている。」(令和5年版 防衛白書) 当然です。
しかるに、防衛省・自衛隊を巡って、我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要である「特定秘密」の違法・杜撰な取り扱い、裏金をプールしていた防衛産業との癒着、「手当」の不正受給、そして、自衛隊員相互の信頼関係を失墜させ組織の根幹を揺るがすことから一切許容しないと誓ったはずのハラスメントについて、更には最高幹部の去就に係る報道までもが、連日各紙・テレビで報じられています。いずれも、残念とか遺憾では済まされない、断じてあってはならない事ばかりです。
国民の信頼や期待を築き上げて行くことは、隊員一人ひとりが真摯な努力を不断に要する困難な道程です。しかも到達点はありません。常に現在進行形です。
他方・・・。
防衛省・自衛隊の皆さんの、一過性でない自浄能力を信じます!
皆さんは、常に国民と共にある国民の自衛隊の隊員なのですから!
北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事