自衛隊ニュース
第2回陸模展を開催
現役自衛官と一般参加モデラーが交流
写真=自衛官・一般参加者・一般来場者が交流
2月15日、陸上自衛隊広報センター「りっくんランド」(埼玉県朝霞市)で、陸上自衛隊模型同好会「陸戦模型製作部」主催による「第2回陸模展」が行われた。部員・一般参加者の力作約70作品が展示され、多くの来場者で賑わった。
「陸戦模型製作部」は、模型を趣味とする自衛官相互の親睦やワークライフバランスの推進、展示会開催やコンテスト参加を通した広報活動および市民との交流等を目的に、部長の西山2佐(システム通信・サイバー学校=久里浜)が2023年に立ち上げた同好会で、所属・年齢・階級を問わず現在、北は北海道(名寄)から南は沖縄県(宮古島)までの約35名の自衛官が所属している。普段は駐屯地(支部)ごとで活動を行うが、他支部とは月1回の定例会やSNS等で連絡を取り合いながら、合同製作会や懇親会等で交流を深めている。「陸模展」は年に一度この時期に開催される部の一大イベントだ。
<自衛隊の魅力を伝えたい>
「私も小さいころ、親父と一緒に模型を作っていました」。前日、久しぶりに父親と電話で話したという初出展の現役自衛官モデラ‐「わんや(鈴木3曹)」さん(朝霞支部)。「子どもの頃の記憶はどこか残っているものです。今日は小さな子もたくさん見にきてくれています。模型を通じて自衛隊の魅力を伝えられれば」と話す。そんな「わんや(鈴木3曹)」さんは教育隊入校時に、中隊先任から話を聞いてから一度は見てみたかったという「60式自走無反動砲」を出展した。
<出会いと交流の場>
「ちょっとやってみるか、が地獄の始まりでした」。こちらも初出展の現役自衛官モデラ‐「小松製作所(小松准尉)」さん(久里浜支部)。作品はシステム通信科の主要装備品の「野外通信システム」だ。陸自の中型トラックのプラモデルは市販されていないため、タイヤ以外はなんと完全自作とのこと。気の遠くなるような作業を経てなんとかこの日に間に合わせた。「挫折しかけましたが、普段関わることがない人との出会いや、今日のように一般の人と交流する機会があり、入部して良かったです」と笑顔で話してくれた。
<予備自補を検討>
「自衛官の方は実物を知っているため、僕たち一般の人が気づかない細かい部分まで再現されていて勉強になります」。参加者の中で最年少、19歳の一般モデラ‐「kuu‐ne(クゥネ)」さんは感心する。コンテストで受賞(第1回全国プラモデル選手権大会優秀賞)するほどの腕の持ち主は「87式偵察警戒車」を出展した。「フィギア用の関節パートを使ってタイヤが切れるように改造しています」というこだわり。「僕も陸上自衛隊が好きなので、予備自衛官補への志願も検討しています」と明かしてくれた。
自衛隊のPRに寄与
今回も多忙な業務の傍ら準備を進めた西山部長。展示会を盛り上げるため、今回は生成AI(人工知能)を活用し研究した。生成AIでの研究結果を基に前回以上に事前告知に力を入れ、出展作品を次々とSNSで公開したり、オリジナルシールを来場者に配布した。
今年も陸戦模型製作部は、5月に開催される世界最大規模の模型展示会「静岡ホビーショー2026」に出展する。「陸上自衛隊を代表した模型同好会として参加するので、陸自の装備品に限定して作品を募っているところです」と、広報活動としての一面も忘れない。今後について「情報発信しながら興味がある人を発掘していき、今年こそ部員50名を達成したいですね」と意気込む。
共通の趣味が、全国の隊員と隊員を繋げるだけではなく、国民との触れ合いの場も創り出している。活動自体が自衛隊の広報活動として、募集に寄与する。少し大げさかもしれないが、陸戦模型製作部のような活動が増えることが、防衛力強化をソフト面で支えることになるのかもしれない。
ラストフライトセレモニー
<北方航空隊>
写真=安達1佐に水かけ
北部方面航空隊は、3月23日付で離任する第38代北部方面航空隊長兼ねて丘珠駐屯地司令安達弘典1佐のラストフライトセレモニーを実施し、エプロンで多くの隊員が飛行任務を終えて帰投した安達1佐を拍手をもって出迎えた。
安達1佐は、令和7年3月17日に着任、座右の銘「ONE FOR ALL ALL FOR ONE」を掲げ、明るく活発な航空隊、駐屯地とするため、時間があれば現場進出し、隊員一人ひとりと対話して労をねぎらいつつ、ユーモアをもって接してきた。航空科では、無事故飛行や新たな門出を祝う際、水かけをしており、この日は、気温2℃の中、航空科の伝統行事を行い、安達1佐に対する感謝の意を表した。
爽やかなルックスと気さくな人柄でカリスマ性のある安達1佐は、多くの隊員から愛され、惜しまれながらの栄転となるが、隊員一同、心から新しい門出を祝うことができた。
読史随感<第193回>
神田 淳
真善美について
古来、真(真理)、善(良いこと)、美(美しいこと)は人間にとって最も価値あるものとされる。哲学で価値あるものの定番である。現代は哲学をあまり論じないが、私は今まで生きてきて、真善美がやはり根本的に重要な価値だと思うようになった。真善美を、人間にとって価値ある三つの基本概念として最初に語ったのは、古代ギリシアの哲学者プラトンである。プラトンは、真、善、美を理想的実在(イデア)とし、特に「善のイデア」は最高位にあり、真と美を統合する根源的価値であるとした。
以下、現代社会においても、真善美が根本的に重要だと思うところを述べる。まず、真であるが、真は真理、真実、本当のこと、嘘・偽りのないことである。人間は真を求めてやまない存在で、今も昔も人は虚偽を嫌う。現代は高度情報社会で、複雑化し、フェイク(虚偽)が横行しやすい社会になっている。フェイクの政治的プロパガンダも横行している。しかし人は真実を求め、虚偽を拒否する。人は社会の様々な問題に対して、科学的に判断しよう、などという。これは人が真理、真実に価値を置き、科学という有効な手段でこれを明らかにしようと言っている。科学は真理を求める人間の真摯な営みの成果である。人はなぜ真を重んじるのか。自然の成り立ちが真だからである。虚偽は自然の成り立ちから外れるため、ものごとを壊していく。真理、真実は、複雑な自然となった現代社会においてますます重要な価値になっていると思う。
次に善であるが、善は良いこと、道徳的に正しいことである。動物と違い、人は善悪の観念を身に付けて人となる。幼児は言葉を覚えるように善悪観を身に付けて成長する。古来、哲学者は何が善であるか追求してきた。アリストテレスは、人間の最高の善は「幸福」であり、それは徳に基づく活動であると説いた。ソクラテスは、善は「知」であり、悪は「無知」から生まれると説いた。トマス・アクィナスは、神が最高善であり、人間の善は神の目的に沿うことによって成立すると説いた。近代、イギリスの功利主義哲学では、最大多数の人が最大幸福になるのが善だと説いた。そして、基本的に「快」が善であり、「不快、苦痛」が悪であるとした。これに対してカントは、善は幸福に関係なく、義務に基づいた普遍的な行為が善であるとした。
現代、何が善であるかに関し、絶対的な見解は確立していない。しかし、現代は人が益々善悪の確かな判断を求める時代になっている。現代社会を変えつつあるAIは悪用もされ、これを規制すべきかどうかがホットな課題となっている。ここにも根本的に善を重視する人間の姿がある。
最後に美について。プラトンは善のイデアが真と美を統合すると説いたが、むしろ、美が根本であり、真も善も美に統合されるという哲学的見解がある。数学者は、数学的真理はなぜか必ず美しく、美しくない理論は間違っていることが多いと言う。そして、何が善であるかについても、美が善であるという哲学的見解を肯定する。実はこれは、日本の道徳に横たわる伝統的感覚である。日本では、美しいことが良いことで、汚いこと(美しくないこと)が悪いことである。日本人は子供に、そんな汚いことをするなと教える。善悪を美醜で教える。日本人のこの道徳的感覚を多くの外国人がユニークだと肯定的に指摘している。この道徳的感覚に清浄を尊ぶ神道の精神が横たわっている。清浄の美の価値が自然に善の価値ともなっている。
(令和8年4月1日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』(https://utsukushii‐nihon.themedia.jp/)などがある。