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神田淳

<第140回> 凋落し続ける日本の国力

 「凋落し続ける日本の国力」など元日のテーマとしてふさわしくないが、新年を迎えあらためて日本について考えるとき、これが最大の問題と思われるので、以下に論ずる。

 国力を構成するものに、経済力、軍事力、科学技術力、そして文化力があると思うが、根底をなすのは経済力だと私は思う。すぐれた文化も、あるレベルの豊かさがなければ生まれない。

 その豊かさが平成以降凋落し続けている。日本の一人当たりGDPは、2023年35千ドルで、アメリカ80千ドルの半分以下、イタリア37千ドルより少なく、G7の中で最下位である。2000年から2023年にかけてアメリカの一人当たりGDPは2・2倍となり、ドイツは2・1倍、フランス1・9倍、イギリス1・6倍と増加しているが、日本だけが0・9倍と減少している。

 OECD加盟国における日本の一人当たりGDPは22位(購買力平価、2022年)で、加盟国38カ国中の下位グループに属し、韓国(18位)よりも下位にある。賃金でみても、日本人の平均賃金は39千ドルで、OECD諸国の中で低い方に属する。すでに韓国や東欧のリトアニア、スロベニアなどよりも低い。日本は1990年代末から全く賃金が上昇せず、貧困化が進んでいる。

 さらに衝撃的な国際評価がある。IMD(国際経営開発研究所)が毎年公表している報告によると、日本の国の競争力ランキングは2023年、世界64カ国中35位である。アジア太平洋地域での日本の順位は14カ国中11位で、第1位はシンガポール(世界第4位)、第2位台湾(世界第6位)、第3位香港(世界第7位)、中国第5位(世界第21位)、韓国第7位(世界第28位)である。マレーシア、タイ、インドネシアも日本より上位にあり、日本より下位はインド、フィリピン、モンゴルのみである。1989年IMDが世界競争力ランキングを発表し始めた頃、日本の競争力は世界第1位だった。ここ三十年の日本の凋落は衝撃的である。

 近い将来日本の経済力が劇的に回復するようにも見えない。日本の財政は危機的状況にある。社会保障費の増大をはじめとする歳出の増加に税収が不足し、国債の増発による財政運営が恒常化して、国債の残高が1,042兆円(2022年度末)の巨額に達している。予算額の約10倍、GDPの約2倍である。日本政府は財政健全化を放棄したように見える。こうした財政運営のつけは必ずどこかで払わなければならないのではないか。78年前日本は太平洋戦争に敗れ、経済も破綻した。戦後ハイパーインフレが起き、国民は塗炭の苦しみを味わったが、これは戦時の膨大な戦費を国債でまかなってきたつけの解消ではないか。戦争末期1944年当時の政府債務(国債と借入金の合計)はGDPの267%に達していた。現在(2022年)264%に達している。不気味な一致である。

 日本の経済力を長期で通観すると、世界のGDPに占める日本のGDPの割合は、1700年4・1%、1820年3・0%、1913年2・6%、1950年3・0%、1973年5・7%、1985年10・2%、1995年17・5%、2005年10・0%、2017年6・0%、2022年5・3%となっている。ここに、日本の経済力は1980年代から二、三十年、例外的に大きかったのであって、今普通に戻っているのだという歴史的な見方が存在する。

 しかし、私はそう思わない。今後国力が経済よりも文化力で評価されるウエイトが高まると思われるが、日本はなお一定の豊かさを失うことなく、国力が保たれなければならないと思う。

(令和6年1月1日)


神田 淳(かんだすなお)

 元高知工科大学客員教授。

 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。

TPP作業工程管理課程

6ヵ国51名オンラインで

<施設学校>

 施設学校(学校長・圓林栄喜陸将補=勝田)は、国際連合活動支援局が実施する「令和5年度国連三角パートーナシップ・プログラム作業工程管理課程(オンライン)」を担任・実施した。

 本課程は、令和3年度に開始され、今年で3年度目となる事業であり、国連PKO工兵部隊の現場指揮官に必要な土木工事の工事管理について、オンライン形式による講義及び実習を行っているものである。

 今年度は、アジア地域国に加え、アフリカ地域国が新たに参加することとなったことを受け、11月13日~17日及び12月4日~8日の2回に期間を分け、各地域国(第1回:モンゴル、タイ、ベトナム)(第2回‥ケニア、タンザニア、ウガンダ)から計51名が受講した。

 講義を通じて工事管理の基礎的知識を付与し、その成果を練習問題や確認問題により逐次に確認しつつ、双方向のコミュニケーションを促進して着実に内容を理解させるとともに、これらの集大成として作業工程表作成の総合実習及び修了試験を実施し、受講者が所期の知識及び技能を習得したことを確認した。

 施設学校は、本課程を通じて得られた参加各国との繋がりを今後も大切にし、様々な活動を通じて日本を取り巻く安全保障環境の安定と改善に寄与していくこととしている。

西方初のカーシェアリング

相浦駐屯地の魅力化に貢献

 「メリットしかない」「休日の行動範囲の幅が広がる」ーー。そんな隊員の声に応え、12月14日、相浦駐屯地業務隊は、西部方面隊で初となる「カーシェアリング」のサービスを開始した。予約から開錠・施錠、支払いまでスマホで簡単にでき、買い物やレジャーなど隊員の利便性向上が期待されている。

 佐世保市中心部から遠く公共交通機関も少ないため、全国から集まる隊員や単身赴任者等の「生活の利便性向上」と「駐屯地の魅力化向上」を目的として、共済組合相浦支部長(業務隊長、岩村福雄1陸佐)とトヨタレンタリース長崎との委託契約により実現したもの。「タント」「アクア」「シエンタ」の3種類が利用でき、料金は15分200円(ガソリン代、基本保険料込み)からと、レンタカーよりお得に利用できる。駐屯地に隣接した宿舎地区に設置され、営内者及び単身赴任者にも利用がしやすい。

 14日のオープニングセレモニーで駐屯地司令の梨木信吾陸将補=当時=は「水陸機動団をはじめ駐屯地隊員の生活が便利になるとともに、厳しい募集環境の中、自衛隊を目指す若い方のためにも駐屯地の魅力化にもつながる施策であり、交通ルールと共同使用のマナーを守って安全・快適に活用してほしい」と期待を込めた。

 岩村業務隊長は「カーシェアリングは今の時代に合った福利厚生施策、営内者だけでなく単身赴任者も、車を持たない隊員等にとって長く活用される施策であってほしい」としている。

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