自衛隊ニュース
機略縦横(84)
航空支援集団准曹士先任
准空尉 鵜飼 俊哉
若年隊員の時は先輩や上司に見守ってもらい、指導や助言をしてもらうことでだんだんと成長し、周りが育ててくれることで自衛官として一人前となっていきます。
年齢を重ね、自衛隊歴を重ね、階級が上がるごとに自衛官として完成形に近づき指導をされなくなっていきます。
ある時点で自衛官として完成したとしても成長や変化を止めてはいけません。なぜなら時代とともに基準や価値観が変化してしまうため、そこに対応すべく自分の考えを逐次変えていかないといけないからです。
周りから指導を受けなくなった状態で、自分が今の時代にマッチしているか、外れたところはないかを意識しておかないと気付かぬうちに時代に取り残され過去の遺物となり、時にはハラスメントなどの服務事案を起こすような自衛官となってしまいます。
人のふり見て我がふり直せと言われますが、自衛官として完成したと思っている人ほど各種事例を参考に自分自身をよく見つめ直して自分を修正する必要があると思います。
とは言え、なかなか自分自身を客観的に、第三者的に見ることは難しいこともあります。そこはやはり何でも話せるような気の置けない同期や同僚などから意見や指摘をしてもらえることが有用だと思います。
私は現在52歳で、あまり指導を受けなくなった年代・階級ですが、私自身時代に取り残されないよう努力する中で、同期からの指摘を真摯に受け止めるとともに、併せて大きな要素としては第三者としてフラットに私を見てくれる妻からの助言や厳しい指摘のお陰で何とか時代に取り残されずに勤務できていると思います。
殉職隊員追悼式しめやかに
新たに32柱の御霊を顕彰
追悼の辞を述べる石破首相
10月26日、防衛省のメモリアルゾーンにおいて「令和6年度自衛隊殉職隊員追悼式」がしめやかに執り行われた。任務遂行中に不幸にして職に殉じた隊員を追悼するために、毎年この時期に防衛大臣主催で行われているもので、今年度は内局1柱、陸自16柱、海自13柱、空自2柱の計32柱が新たに顕彰された。これにより警察予備隊時代の昭和32年からの顕彰者数は、陸自1138柱、海自503柱、空自439柱、機関32柱で計2112柱となった。
追悼式には今年度新たに顕彰された隊員の御遺族と殉職後10年・20年目の御遺族、来賓として石破茂内閣総理大臣や歴代防衛省政務三役等が参列した。中谷元・防衛大臣による名簿奉納に続き、防衛省関係者を含めた参加者約300名が御霊に対して拝礼・黙祷を捧げた。
「御遺志を受け継ぐ」
「御霊の御功績を長く継承」
石破総理は「尊い犠牲を無にすることなく、御遺志を受け継ぎ、激変する安全保障環境の中、国民を守る、日本を守る、世界の平和と安定に貢献する、そのために全力を尽くすことを、自衛隊の最高指揮官として、ここに固くお誓いいたします」と追悼の辞を述べた。
中谷大臣は「御霊の御功績を長く継承し、国民の命と平和な暮らし、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、全身全霊で取り組むことをお誓い申し上げます」と続いた。
遺族を代表して、今年発生した能登半島地震での災害派遣中に帰らぬ人となった隊員の御息女が挨拶を行った。自身が困った時に真っ先に駆け付けて寄り添ってくれた父。「私たちの、皆のヒーローでした」と振り返った。「亡くなる寸前まで誰かのヒーローであり続けた父を誇りに思います」と気丈に述べた。
最後は特別儀仗隊による弔銃が3発、灰雲に覆われた空に向けて放たれて追悼式は閉会となった。
AASAM 国内競技会
優秀隊員5名を表彰
10月21日、「AASAM国内競技会」において優秀な成績を収めた隊員5名が森下泰臣陸上幕僚長から表彰された。AASAM(アーサム)とは、毎年オーストラリアで行われる戦闘射撃技術の世界一を競う大会で、日本勢は毎回優秀な成績を収めている。大会前に全国から選抜された隊員が富士学校で集合訓練を行うが、今年は大会自体が中止となってしまったため、9月に約半年間の訓練の集大成として国内競技会を実施した。
戦闘射撃の部の佐藤凌人3陸曹(第11普通科連隊)は、「技術の向上には「射撃への興味」を持つことがとても重要で、部隊でもそれを心掛けて普及したい」と述べた。また、特別賞の日美涼太3陸曹(第2通信大隊)は、普通科部隊以外の所属ながら受賞し、その実力に森下陸幕長も舌を巻いた。受賞者は以下のとおり。戦闘射撃の部‥佐藤凌人3陸曹(第11普通科連隊、特別賞‥中村大喜2陸曹(普通科教導連隊)・日美涼太3陸曹(第2通信大隊)、狙撃の部‥大谷利朗2陸曹(普通科教導連隊)・藤永優3陸曹(第51普通科連隊)
カナダ海軍司令官と懇談
連携強化を推進 齋藤海幕長
11月1日、齋藤聡海上幕僚長は、カナダ海軍司令官・トップシー中将の表敬を受けた。
齋藤海幕長は、「カナダはG7パートナー国であり、我が国にとって普遍的な価値を共有する重要なパートナーだ」と述べ、カナダが2022年に発表した「インド太平洋戦略」に基づき、北朝鮮の瀬取り監視を含む当該地域への貢献を強化していることに対して「大変心強く感じている」と歓迎した。
また、6月に初めて行われた日米加比による共同訓練、7月および9月に行われた日加2カ国共同訓練等、今年は既に3度の共同訓練を行っていることを踏まえ、「我が国周辺を含むインド太平洋地域へのアセットの派遣を促進している貴海軍と共に、今後も共同訓練を通じて戦術・技能の向上および人的交流を通じた連携強化を推進していきたい」と述べた。
トップシー司令官は、2010年に初めて行われた2カ国間共同訓練に、ミサイル駆逐艦「アルゴンキン」の艦長として参加していたことを明かし、「当時から日加の協力関係がこれほどまで発展してきていることを嬉しく思うと共に、更なる強化に取り組んでいきたい」と述べた。
またカナダ海軍は、今年は初めてクリスマスをまたいだ艦艇派遣を予定しており「緊密な連携・ご協力をお願いしたい」と呼びかけた。