自衛隊ニュース
ラジオでPR
<熊本>
熊本地方協力本部(本部長・笹島昭佳1陸佐)は3月12日、「FMK RADIO BASTERS」に渉外広報室長(日野雄大1陸尉)を出演させ、マスコットキャラクター「ゆうポン&えび次郎」と自衛隊のPRを実施した。
「RADIO BASTERS」は毎週月曜日から木曜日の夕方に放送され、広く熊本県民に親しまれている人気番組。
今回出演依頼があったのは、熊本のいろいろな情報をさまざまな角度から取り上げる「AROUND BASTERS」というコーナー。火曜日はご当地キャラに携わる人々に話を聞くということで、「どうやら熊本の自衛隊にもご当地キャラがいるらしいぞ」と当地本マスコットキャラクター「ゆうポン&えび次郎」に白羽の矢が立った。
収録は火曜日パーソナリティの松本亮介さんの進行で和やかな雰囲気で進んだ。ゆうポン&えび次郎誕生エピソードや活動状況、自衛隊におけるマスコットキャラクターの役割、自衛隊の活動や今後当地本が参加するイベント情報や自衛官募集情報等を、この機会を活用してPRした。
リスナーの方から「熊本の自衛隊キャラといえば迷彩のくまモンと思っていたが、違うキャラもいたんですね。8年前の熊本地震の時、日頃の国防の仕事もありがとうございます」とのメッセージが届くなど、反響の大きさに驚くとともに、自衛隊のさまざまな取組を熊本の皆様に知っていただく手応えを得た。
熊本地本は、さまざまな広報活動を通じて自衛隊の各種活動について積極的にPRし、自衛隊の活動に対する理解を促進するとともに、地域との連携を深め、将来の自衛隊の活動基盤の醸成をしていく所存である(ポン!)。
なるしお公開<鹿児島>
鹿児島地方協力本部(本部長・松浦幸一1海佐)は3月18日から20日までの3日間、鹿児島本港北埠頭(鹿児島市)における潜水艦「なるしお」(艦長・瀬戸和美2海佐)の一般公開・特別公開を支援した。
潜水艦の鹿児島本港北埠頭での艦艇公開は令和になって初めてであり、募集課広報班は成功に向けて地本ホームページへの掲載及びSNSを最大限に活用した告知を行なうとともに、配布用のチラシを作成し県内各所で配布するなど、積極的な事前告知を行った。告知段階からSNSにおいて告知の投稿に2万以上の「いいね」がつけられるなど、潜水艦への関心の高さがうかがえた。
一般公開は上甲板のみの公開であったが、開始前から長蛇の列ができ、約2600名の来場者が訪れ、大いににぎわいを見せた。
一般公開が始まると、見学者は、上甲板での見学や潜水艦の撮影ポイントでの記念撮影等を楽しむとともに、乗員に潜水艦の仕組み等について質問をするなど、潜水艦を十分理解していただける内容であった。
参加者からは「なかなか見ることのない潜水艦にとにかく感動した。ありがとうございました」等の感想を頂いた。
特別公開では事務処理を行う区画で構造等について説明があり、続いてオペレーション区画において潜望鏡の体験、さらに魚雷発射管の見学と、水上艦との違いを充分感じていただいた。
特別公開に参加した募集対象者からは「水上艦との違いがよく分かった。エンジンのオイルの匂いなどでリアル感が増しました。良い体験ができました」など、感想と感謝の言葉を頂いた。
また、鹿児島募集案内所(所長・柴田良和1陸尉)が募集ブースを開設し、来場者に入隊試験等について案内するとともに、100名以上にアンケートに協力いただき、とても有意義な艦艇広報となった。
鹿児島地本は、引き続き艦艇公開等あらゆる機会を活用して多くの鹿児島県民に自衛隊の活動等を紹介する機会を設けるとともに、防衛省・自衛隊に対する理解促進及び認知度向上に一丸となって努め、適質人材の確保に尽力していく。
五輪代表地元へ<京都>
京都地方協力本部京丹後事務所(所長・原一尉)は3月19、20の両日、パリ五輪のレスリングフリースタイル74キログラム級で日本代表が内定している高谷大地2陸尉の地元京丹後市訪問に同行した。
高谷2尉は京都府立網野高校(現・丹後緑風高校網野学舎)から拓殖大学へ進学し、現在は自衛隊体育学校レスリング班に所属している。
19日の京丹後市役所訪問ではレスリング界の豪華な面々が同席した。オリンピック銅メダリストで同校レスリング班監督の井上謙二2陸佐と、金メダリストで同班コーチの米満達弘3陸佐。また、高谷2尉夫人で元レスリング班所属の高谷芙早乃さん、さらに母校の恩師である吉岡治先生も同席した。
高谷2尉は、中山泰京丹後市長との懇談で「オリンピックが平和の祭典であるということを皆が肩を抱き合って皆で応援して楽しんで皆で味わっていただきたい。また、レスリングというスポーツを通じて人や街が活性化していければ」と熱く語った。中山市長は「悔いなく思い切りやっていただければ、それだけでうれしい」と惜しみないエールを贈った。
翌20日には京丹後市網野町のアミティ丹後で壮行会が行われ、華やかな雰囲気に包まれた。会場には、地元網野町少年レスリング教室の小中学生や現役部員にOB、そして地元の自衛隊協力団体など、高谷2尉を応援する多くの市民が集まった。高谷2尉はあいさつの際、サポート役で関わった東京オリンピックの兄の惣亮さんの初戦敗退という厳しく辛い体験を振り返り、涙ぐむ場面もあった。
しかしコーチである米満3佐からの「オリンピックを目指す過程で生まれる成長に価値がある」という言葉に背中を押され、「パリで自分が限界に挑む姿を見ていただき、みなさんに夢や希望を与えたい」と力を込めて締めくくった。
京都地本は、日の丸を背負って世界に挑む京丹後市出身のオリンピアン高谷2尉を全力で応援する。
防衛省・自衛隊 地方協力本部
読史随感
神田淳
<第148回>
文明の盛衰とエネルギー史観およびエネルギー政策
太古から人類は文明を発展させて現代に至っているが、文明発展の根底にエネルギーがある。新しいエネルギーの獲得により新しい文明が生まれる。人々が豊富なエネルギーをもつとき文明は栄え、エネルギーが枯渇するとき文明は衰退する。これを「文明のエネルギー史観」というが、こうした史観をもつ識者は多い。「類人猿の水準から現在に至る文化の発展は、新しいパワー源が開発されることによって、一人当たりの年間エネルギー利用量が繰り返し増加した結果なのである(人類学者レスリー・ホワイト)」、「人間の精神とエネルギーが一つになるとき、人類の進歩に限界をもたらすのは、最終的には人間の着想ではなくエネルギー源である。歴史上のどんな社会にとってもいちばん肝心なのは余剰エネルギーの有無である(社会学者ハワード・オダム)」等々。
現代社会は工業文明であり、工業文明は産業革命によって勃興したが、産業革命は近代のエネルギー革命に他ならなかった。エネルギーの変革によって新しい文明が生まれたのである。中世農業社会の木材等バイオマスを主体とするエネルギーから、石炭等化石燃料への転換が起きた。イギリスでガラス製造、石鹸製造等の燃料として石炭が使われ始めた。18世紀には石炭から得られるコークスを使った製鉄業が可能となった。ワットが蒸気機関を発明し、石炭等の燃焼による熱エネルギーを動力に変える技術を得、産業用、輸送用動力として広く使われ始めた。世界に先駆けて産業革命を達成したイギリスは19世紀、世界最富強の大英帝国となった。これを支えたのは石炭だった。
20世紀、最富強国はアメリカに移った。アメリカの富強をもたらしたのは石油である。覇権国のイギリスからアメリカへの移動は、主エネルギーが石炭から石油に移ったのと期を一にしている。石油の連続掘削に成功したアメリカで、豊富な石油が急成長する自動車産業等の産業を支え、自動車等輸送用のエネルギーを支配した。また石油を原料とする石油化学工業が成立し、20世紀、アメリカは圧倒的な石油王国となった。1913年時点でアメリカは世界の石油の65%を生産していた。
現在、世界は一次エネルギーの82%を石油、石炭、天然ガス等の化石燃料に依存し、現代文明はまさに化石燃料文明であるが、二次エネルギーを含めた最終エネルギーで見ると、電気が非常に重要なエネルギーとなっていることがわかる。電気は動力にも、照明にも、また熱源としても利用でき、瞬時に移動する非常に優れたエネルギーである。電気は通信・情報としても利用され、電気なくして現代社会は成り立たなくなっている。現代文明は電気文明ともいえる。
文明はエネルギーによって興隆し、その枯渇により衰退する。エネルギーが文明を成り立たせる経済の根底にあるからである。文化もあるレベルの豊かさがなければ生まれない。一国の国力の根本も経済力であると私は思うが、その経済力の根底にエネルギーがある。エネルギーの安定供給が失われると、国の経済は衰えていく。
地球温暖化問題が世界的課題となり、この問題に人間のエネルギー利用が直結するため、現在の日本のエネルギー政策は、CO2削減を至高目的とする環境政策的なエネルギー政策となっている。今年国のエネルギー基本計画が改訂される。新しい基本計画では、エネルギーの本来の役割と目的を重視する政策、すなわち、国の経済を成り立たせる根本としての性格を堅持するエネルギー政策とし、併せて経済安全保障の観点を強化した計画にする必要があると思う。
(令和6年5月1日)
神田 淳(かんだすなお)
元高知工科大学客員教授。
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。