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   2003年10月1日号
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慰霊碑地区新たにオープン 2面

小泉首相「イラク支援、周到な準備を」
高級幹部会同開く
小泉首相と石破長官が特別儀仗隊を巡閲(9月10日、A棟前儀仗広場で)
 防衛庁A棟2階講堂で9月10日、第39回自衛隊幹部会同が行われた。防衛庁の政策方針を自衛隊の高級幹部に周知徹底させ、当面する自衛隊の重要課題について意見交換を目的とするもので、防衛庁・自衛隊の高級幹部多数が出席した。
 午前の部ではまず、小泉純一郎内閣総理大臣と石破茂防衛庁長官が訓示を述べ、小休止の後に赤城徳彦副長官と小島敏男政務官が、それぞれ挨拶を続けた。

 午前9時、小泉首相と石破長官が庁舎正面の第1儀仗広場で栄誉礼を受け、巡閲したあと、講堂に移動。登壇した小泉首相は高級幹部を前に「新たな役割」を強調し、高まる国民の期待に応え信頼を構築するよう訓示した。具体的には、国際社会における「新たな役割」としてのイラク派遣を、よく理解し、困難な任務にも十分対応できる心構えをもって周到な準備をしてほしいと述べ、統合運用を強化するなど、現在の組織や装備を新たな脅威にも対応できるように見直し、効率化を図っていく必要を訴えた。
 続いて石破長官は、全く新しい時代に突入し、国民の意識も大きく変わりつつあることを踏まえて、「存在する自衛隊から機能する自衛隊へ」全力を傾け国民や諸外国に対する説明責任を果たすよう、また統合運用や防衛力のあり方についても、批判に正面から答えなければならない旨を述べた。最後に、国民の信頼を勝ち得る組織でなくてはならないと強く訴え、専門家の意見交換の場である当会同に有意義な成果を祈念すると訓示を述べた。
 休憩をはさみ、赤城副長官が挨拶し男女共同社会実現と国民の信頼獲得のために不祥事防止を訴え、続いて小島政務官が登壇、自衛官の身の安全を第一とする信条と地域交流の重要性を、自らの体験で明快に訴えた。
 新しい時代における新しい自衛隊をテーマに、第39回幹部会同は午後4時まで意見交換が行われ、閉会した。 
小泉首相訓示
 本日、自衛隊の中枢を担う幹部諸君と一同に会する高級幹部会同に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
 先の通常国会において成立したイラク人道復興支援特別措置法は、自衛隊に国際社会の安定と繁栄のための新たな役割を付与するものです。今後、現地情勢の把握に努め、状況を見極めた上で、隊員諸君の安全にも十分配慮しながら、派遣を検討してまいります。諸君にあっては、支援活動の趣旨をよく理解し、困難な任務にも十分対応できる心構えをもって周到な準備をしていただきたいと考えます。
 冷戦が終結し、21世紀を迎え、世界はテロや弾道ミサイル等の新たな脅威に直面しています。旧来型の戦争の脅威が低下する中で、自衛隊の統合運用を強化するなど、現在の組織や装備を新たな脅威にも対応できるように見直し、効率化を図っていく必要があります。自衛隊の中枢を担う諸君にあっては、最近の安全保障環境を踏まえ、防衛力のあり方につき、引き続き精力的に議論を深めるよう期待します。
 自らの国は自らの手で守るという国民の強い意志と決意を具体的に形で示したのが自衛隊であります。そうした決意があって初めて、他国との間で強固な信頼関係、同盟関係を築くことが可能になるのであります。わが国は、冷戦期から一貫して、適切な規模の防衛力と日米安保体制の堅持を国防の二本柱としてきました。わが国が米国との間で築き上げてきた政治、経済、社会などの幅広い分野での信頼関係を一層強化し、日米安保体制をより緊密かつ実効性のあるものとすることが重要であります。
 政府は、先の通常国会で有事関連3法が成立したことを受け、国家の緊急事態に着実に対処できるよう、引き続き、国民保護法制の整備などに努めてまいります。
 このような中で、わが国の平和と安全を確保する役割を担う自衛隊に対する期待はかつてないほど高まっています。こうした期待にこたえ、国民の信頼を確保するためには、自衛隊員1人ひとりが厳正な規律を保持するとともに、組織としての緩みを戒め、防衛庁・自衛隊全体が、一致協力、団結して任務に邁進しなければなりません。精強、信頼される自衛隊の構築のため、諸君が今後とも大きな力を発揮していただくよう切望し、私の訓示といたします。
石破長官訓示
 高級幹部会同を開催するにあたり、本会同が防衛庁の政策方針を自衛隊の高級幹部に周知徹底させるとともに、当面する自衛隊の重要課題について意見を交換することがその目的であることに鑑み、所見を申し述べます。
 昨年9月30日に防衛庁長官を拝命いたします際、内閣総理大臣より、特に次の2点についてご指示をいただきました。すなわち第1点として、国民の信頼を回復するため、綱紀の粛正に努め、内局と制服とが一体となった組織運営に努める。第2点として、陸・海・空3自衛隊の統合運営や有事法制への対応を含め、わが国の安全保障体制を一層充実強化する。以上であります。
 1年を経た今日、これがどれほどに達成されたか、私は自らに問いかけるとともに、諸官におかれても、これを各々検証していただきたく思うものであります。この2点はなぜ必要か、それは時代が変わり、国民の認識も変わったからであります。
 常に申し上げております通り、冷戦の終結は必ずしも平和の到来を意味しない、そして明日は時あたかもあのニューヨークにおける同時多発テロから丸2年を迎えますが、世界はいつ、誰が、誰から、なぜ、どこで、どのようにして攻撃を受けるのか、全く予断を許さないテロとの戦い、ポスト9・11の時代に突入を致しております。加えて、まさに冷戦のさなかにはわずか2ヶ国しか保有していなかった弾道ミサイルが、今や46カ国に拡散し、核・生物・化学兵器の拡散も極めて懸念されております。このような中にあって、わが国が憲法を遵守し、専守防衛に徹して、いかに抑止力を発揮するかが、国民に対する我々に課せられた喫緊の責務であります。さらには、テロの撲滅や弾道ミサイル・大量破壊兵器の拡散防止が、国際社会の有力な一員としてのわが国に課せられた責任であることに思いを致すとき、我々はその使命の重大性を痛感しなくてはなりません。
 先の国会において、いわゆる有事関連3法が国会議員の9割近い賛成で可決・成立いたしました。また本年、内閣が行った世論調査によれば、有事に際して何らかの形で自衛隊に協力したいと答える国民は過半数にのぼっております。
 冷戦期において、防衛庁・自衛隊は黙々と訓練に励み、装備を充実させて参りました。日米安全保障体制と相俟って、それはまさしくわが国の平和の維持に大きく寄与したのでありました。しかしながら、先ほど申し述べましたように、我々は全く新しい時代に突入を致しております。国民の意識も大きく変化を遂げようと致しております。
 私は着任時に「今日が明日になり、明日があさってになると思わないでいただきたい。昨日よりも明日が、どれだけ物事が進み、どれほど問題が解決したか、残る課題は何であり、それを解決するためにはどうすればよいかを日々検証したい」と申し上げました。「存在する自衛隊から機能する自衛隊へ」、我々はこの達成に向け全力を傾けるとともに、今まで必ずしも十分ではなかった国民・納税者や諸外国に対する説明責任を果たすべきであります。先般刊行いたしました防衛白書を、都道府県知事や市町村長をはじめとする地域の方々に、各部隊の責任者が説明するようにお願いしておりますのも、この趣旨に基づくものであり、また私が先般の中国訪問を含め、この一年間に6カ国を訪問し、各国の防衛首脳と意見交換して参りましたが、専守防衛に徹し、海外において国際紛争を解決する手段としては武力を行使しないことを明確にしつつ、わが国の果たすべき国際社会における責務を説明してゆかねばなりません。
 統合運用や、ただいま総理からのお言葉にもありました防衛力のあり方についても同様であります。ともすれば今まで陸・海・空バラバラの運用であるとか、正面装備偏重であるとか、我々に加えられてきた批判に正面から答えなければなりません。
 最後に、我々は本当に国民の信頼を勝ち得ているのか、そのことに深く思いを致さねばなりません。防衛庁・自衛隊は国民にとって最後のよりどころであります。そうであるが故に、我々は日本国における他のいかなる組織よりも、国民の信頼を勝ち得る組織でなくてはなりません。隊員の数が多いのだから、あるいは過酷な任務を遂行しているのだから、などということは何のエクスキューズにもならないと考えます。
 私はこの国において、本来の意味における民主主義的な文民統制を実現したいと考えております。それは主権者たる国民に説明責任を果たし、政治が正確な知識に基づく判断を下すということであります。その課程において、いわゆる軍事の専門家である自衛官の諸君と法律や予算や技術などの専門家である事務官、技官などの諸君とが車の両輪となり、最高指揮官である内閣総理大臣を支えることがもっとも肝要であります。法律や、予算や、装備・運用に対して、それぞれの専門家である諸官が意見を申し述べることは、諸官の権利であり義務であります。自衛隊が国民に信頼される組織であるとともに、我々政治が諸官に信頼される存在であること、それが「事に臨んでは身の危険を顧みず、もって国民の負託に応える」との宣誓をされた諸官に応える唯一の道であり、わが国の平和と独立、さらには世界の平和を確立する礎となるものと信じます。
 この高級幹部会同が有意義なものとなり、大きな成果を収められんことを心より祈念して、私の訓示と致します。

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