防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース 防衛ホーム新聞社 防衛ホーム新聞社
   2003年8月15日号
 1面 3面 6面 7面 8面 9面 10面 11面 12面

新自衛隊中央病院起工式を実施
 平成19年開院を予定する新自衛隊中央病院の起工式や式典が7月26日、三宿の中央病院に大ぜいの関係者が参加して賑やかに行われた。
 建設予定の三宿グランドで行われた起工式では白濱龍興中央病院長をはじめ小島敏男長官政務官、伊藤康成事務次官、先崎一陸幕長ら11人がクワ入れを行い工事の無事故、完成を祈った。その後の祝賀会は看護学校講堂に移り、約200人が出席した。その中で小島政務官は先日視察したイラクの不衛生な実状から、同国の復興には医療を含めた支援が必要だと話した。また建設業者を代表して山下設計事務所の横山社長は世界水準の病院建設を目指すなどとあいさつを行った。同席には目黒区や世田谷区の助役らも参列し、地元からも期待されている。
 この計画は、47年前に開院した今の自衛隊中央病院の施設の老朽化や近年の精密・大型化されている医療機器の整備に適応しようとするもので、大規模災害等の危機にも強い病院を目ざしている。
 そのために、自衛隊の最高・最終病院としての機能の充実を図り具体的に次のような点が計画されている。▽大量傷者受け入れの場所を随所に確保(外来待ち合い、講堂等)▽CH-47対応の大型ヘリポートの採用▽緊急時各病室は1床を2床、2床を3床、4床を6床に増床可能にし、計画の500床が1,000床にできる▽指揮官の入院時の指揮活動にも対応できるように個室を増加、電話回線等も準備する▽自己完結の病院として一定期間自立できる施設として5日分の備蓄等をする▽病院長の指揮活動に必要な場所を確保▽有事・災害時のトリアージ(治療順番)スペースを確保など。また建設にあたっては免震構造として6〜7クラスの大地震にも耐え、計器類にも影響がでないようにし、屋上緑化も行う。(所谷尚武)

横須賀音楽隊
コンサート2003開催
 海上自衛隊横須賀音楽隊は9月25日、「ファミリーコンサート2003」を開催します。申込用要領等は次のとおりです。
〈日時〉9月25日(木)1830〜2030
〈場所〉よこすか芸術劇場大劇場(京急汐入駅下車徒歩3分)
〈申込要領〉
◎住所・氏名・年齢・性別・電話番号を記入した「往復はがき」でのお申し込みとなります。〒238-0046横須賀市西逸見町1丁目無番地海上自衛隊横須賀地方総監部広報「防衛ホーム」係宛
◎往復はがき1枚で2名様分の入場整理券をお送りします。(なお、応募多数の場合は抽選)
◎満員の際は入場をお断りする場合もあります。
◎9月8日(月)必着
◎お問い合わせ 電話046-822-3500(内線2208)広報係まで

彰古館往来
シリーズ(19)
陸自三宿駐屯地・衛生学校
我が国最後の刀の戦争
「神風連 暴動時 刀傷図」
 彰古館の旧陸軍史料で最も古い所蔵品に「神風連暴動時刀傷図」があります。
 神風党の乱は、明治9年(1876)10月、廃刀令に激怒した熊本の元士族たちが起こした暴動です。陸軍が出動し鎮圧しますが、当時「百姓兵」と蔑視されていた徴用兵と元士族との戦いは、多数の負傷者を出します。
 現地の病院で治療を受けていた重傷者77名は、翌年3月2日、大阪陸軍臨時病院に後送されました。
 石黒忠直は刀傷の特異性に気付きます。「我が国の戦争でお互いに切り合うような刀傷は、これが最後になるだろう」と絵師の五姓田芳柳を招き、負傷者を描かせました。芳柳は現在でも宮内省が保有している「明治天皇御影」を描いた高名な洋画家です。この刀傷図は、20年以上たった明治30年代に、陸軍軍医学校図書室の反古紙入れから発見されます。いかに貴重な記録でも、20年の月日の経過で来歴が不明となり捨てられたのでしょう。幸いにも、これを発見した学校副官の植木第三郎一等軍医が、その貴重性を看破し、一冊に纏めたのが「神風連暴動時刀傷図」なのです。
 この刀傷図は、日本刀による刀傷という貴重な症例が、緻密な水彩画で描かれています。カラー写真のない時代に、刀創の症例を現在に伝えた石黒の着眼は素晴らしいものです。
 明治有数の洋画家芳柳の画力は冴え渡り、本来なら気味の悪い絵になりかねないのに、思わず見入ってしまう程綺麗な精密画です。
 一人で何太刀も受傷している患者が多いのは、圧倒的な力の差だったのでしょう。また、苦痛にゆがむ顔や、泣き顔でも無く、姿勢を正して毅然とした態度をしているのは、死線を越えて生き残った者だけが持つプライドなのでしょうか。
 さて、彰古館に現存する55枚の絵の中から、今回ご紹介するのは、刀のみを使用した神風党の暴徒によって、両腕を負傷した中岡黙少尉です。
 実は、影古館から発見された「我が国最古の臨床X線写真帳」に、中岡のX線写真が貼付されています。受傷から23年後の明治32年(1899)に陸軍軍医学校で撮影されたものです。撮影時の中岡は、陸軍省の人事課長の要職にあり、階級は大佐になっておりました。
 陸軍軍医学校での所見は「左腕は肘関節が完全に固着。右腕は尺骨の中央で撓骨に癒着して治癒した、すこぶる面白いもの」と記録されています。本来は前腕の骨は尺骨と撓骨の2本あるのですが、尺骨が刀で切られてしまったため、撓骨の途中にくっついてしまった異常治癒です。100年前のX線写真でも、ハッキリ理解することが出来ます。
 X線診断を終えた中岡は科学の進歩に驚き、さらに自分の受傷時の写生図を見せられると涙を流して感激したと伝えられています。
 この一件で、国内の病院に先駆けて最新医療器材のX線装置を導入し、また軍創設時からの古い記録をも保存している軍医学校は、大いに賞賛されたのです。
 その切っ掛けとなった「我が国最後の刀の戦争」を記録した「神風連暴動時刀傷図」は、現在でも医学史上貴重な逸品です。

話題の新刊
地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊
わずか1,000人のエリート戦士が戦争を決める
元グリーンベレー水中作戦隊隊長 三島瑞穂 著
 時代は高度経済成長を謳歌する間にも、闘い続けた一人の日本人がいた。千人針に目頭を熱くしてはジャングルで故郷を思い、カントリー&ウエスタンを聞きつつ部隊で友情と信頼を築く。米国特殊部隊「グリーンベレー」に入隊し隊長にまで上り詰めたAチーム軍曹。待ち伏せ、捕虜捕獲など対ゲリラ戦に従事。極限状態でどこまでも強く、21年間、弾雨をくぐり戦場を縦横無尽に駆け巡った不死身の快男子……。
 映画・劇画の話ではない、とお気づきの方はおそらく著者・三島瑞穂氏の名を思い出したに違いない。
 氏は、奄美出身。数奇な運命で1959年、米陸軍に志願入隊。60〜72年、ベトナム在第5特殊部隊グループ、沖縄第1特殊部隊グループおよびMAC/SOGに在隊し、長距離偵察、対ゲリラ戦など、ベトナム戦争の全期間に従事。特殊部隊情報・作戦主任、潜水チーム隊長をへて、80年退役。現在、危機管理コンサルタントとして活躍する一方、軍事雑誌に記事を執筆。近年はNATO加盟国や友好国の特殊部隊を訓練している。
 カリフォルニアに在住だが、講演会で来日の折は「三島軍曹」と呼ばれ、絶大な尊敬を集める。サイン会にはファンの行列ができる。「特殊部隊には猛々しい気風よりも優しく忍耐強い気風が適している」と説く豪快な人物だ。
 最強の特殊部隊でベトナム戦を闘い抜いた日本人軍曹による衝撃のノンフィクションは、週刊プレイボーイで一部連載され話題を呼び、89年6月にはタイトル「グリーンベレーD446」(並木書房)が刊行された。「D446」のDはグリーンベレーに10年以上在隊した隊員が取得するイニシャルで、三島氏はその446人目。このたび改題・大幅に加筆再編集、文庫化されたのが本書だ。
 最大の変更は、第1部の序章で「新しい戦争」への警鐘を鳴らしている点だ。この10年でますます重要性を帯びてきた特殊部隊の役割について、イラク、アフガンの事実を用いて解説している。また氏は予てより、日本周辺の軍事情勢を楽観視せず、自衛隊のための実践的提言として「有事に備える」(かや書房)を著した。専守防衛の弱点は、侵略者が時と場所を選び自衛隊が常に後手に回ることだと説き対策を穿った。
 これら持論が1冊に結実したのがこの文庫の第1部だ。「専守防衛」の日本にこそ特殊部隊が必要だと説く。いかにして卑劣なテロと戦うか。どのような特殊技術があるか。「新しい戦争」の主役となるべき特殊部隊の役割について述べ、個別具体の方法論を語る。
 著者はミリタリー関連の翻訳でも高名だ。従軍記やコミックでは等身大の戦士たちの姿を完訳することに努め、また「ヴェトナム戦争米軍軍装ガイド」はミリタリーファンや歴史研究家の間でバイブルといわれる。体験をもとに寸評を加え、記述の正確さの向上に貢献。本当を伝える無二の人である。
 英語圏で生活している著者だが、じつに巧みな日本語を使う。熟語を的確に用いて読みやすく、正確な日本語はテンポよく読める。かつて在日米軍連絡官もつとめ、軍事関係の翻訳に関しては、文字通り第一人者だ。
 第2部では「戦場日記」を披露。貴重な写真も見ることができる。「男たちが命をかける戦場には、貧富、人種、宗教などの違いを超越して育まれた美しい花が咲き香るものだ」。
 文庫の帯に「血煙が漂う暗闇…」とあるが、それほど血生臭くはない。事実を事実として正確に伝えようという平常な気持ちが、淡々とした記述に渋く表れている。そこには戦友を思いやる義に厚い米兵、一人の日本男児がいる。〈入船〉
(講談社十α文魔、定価880円税別、6月20日初版)

9面へ

(ヘルプ)

Copyright (C) 2001-2014 Boueihome Shinbun Inc