防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース 防衛ホーム新聞社 防衛ホーム新聞社
   2003年1月15日号
1.2面 3面 5面 6面 7面 9面 10面 11面 12面

副長官政務官『新年のメッセージ』

第1ヘリコプター団(木更津)で初飛行訓練
鎌倉市上空を初飛行。後方は先崎陸幕長が搭乗するスーパーピューマ(陸上自衛隊撮影)
 第1ヘリコプター団(団長・角裕行陸将補)は1月7日、24機編隊で近郊約1時間の年頭飛行訓練を実施、スーパーピューマに搭乗した先崎一陸幕長が空中から隊員に向け訓示した。

石破防衛庁長官『年頭の辞』
国民から最も信頼される組織に
高級幹部を前に「自衛隊が更に精強であるように」と年頭の辞を述べる石破長官(1月6日、防衛庁A棟講堂で)

 石破茂防衛庁長官は1月6日、防衛庁A棟講堂で防衛庁・自衛隊の高級幹部を前に「年頭の辞」を述べ、その内容は全国各地の隊員に向けても放送された。石破長官は昨年9月30日に防衛庁長官に着任。これまで国際観艦式をはじめとした行事に加え、11月30日には沖縄を訪問、12月9日に陸自練馬駐屯地を初度視察するなど、寸暇を惜しんでその任をこなしている。年頭の辞の全文は次のとおり。

 平成十五年の新春にあたり、全国各地並びにゴラン高原、東チモール、インド洋、南極、更にはそれぞれの防衛駐在官としての任地におきまして、世界各地におきまして、日本国の平和と独立のため、世界の平和実現のため、献身的な活動を続けておられる皆様方に心から敬意を表し、一言御挨拶を申し上げます。皆様明けましておめでとうこざいます。本年も、私も、そしてまた副長官、政務官、精一杯その任を果たしてまいりたいと存じます。何卒よろしくお願いを申し上げます。

 昨年は、冷戦後の世界のあり方、それが徐々にその姿を現した年であったと、このように考えております。9・11同時多発テロ以後、自由と民主主義に至上の価値を認める国際社会の結束がより明確になってまいりました。この自由と民主主義、これを否定し、誰が、誰から、いつ、どのように攻撃を受けるかわからない恐怖の連鎖を生み出すことにより、自由の体制を揺るがし、政治的な目的を達成しようとするテロリストに対して、国際社会は断固たる取組を示すようになりました。

 新年、色々な報道番組を見ておりますと、「テロも悪いけれども、テロから攻撃される側にも問題があるのではないか。どちらもどちら。」というようなもっともらしいことを言う方々がありました。それはある意味俗耳に入り易い言葉なのかも知れません。しかし、私どもは、この自由と民主主義、この価値を至上のものと思うが故に、このテロに対する闘いはどうしても勝利をしなければいけない。そのため、日本は国際社会の一員としてその責任を果たす年でありたい。そのように考えております。同時に、私どもは、大量破壊兵器の拡散、その運搬手段である弾道ミサイルの拡散、このような事態に直面を致しております。このことは非常に深刻なことだというふうに考えます。従来、防衛力は抑止力をその本質とする、私どもはそのように考えてまいりました。しかしながら、守るべき国家もない。守るべき国民もいない。そして自らの死をも恐れない、そのようなテロリスト達に対して、従来の抑止力概念がそのまま通用するとは考えられません。このことにどのように対応していくか、私どもはこのことにも答えを出していかねばなりません。

 年末にある方とお話をしておって、「今年いろんなことがあったね。」というお話をしておりました。その時に、「石破さんね、今年一番大きな出来事って何だったと思う。」という問いかけを受けて、私はいろんなことを考えたのですが、その方がこういうことを言われた。「アメリカがABM条約から脱退をした。このことの重みは非常に大きい。」ということをおっしゃいました。私はそれはそうだと思うのであります。良かれ悪しかれ相互確証破壊という理論があって、恐怖の均衡というものがあって平和が保たれてきた。そういうような事実は一面真実であろうかと思います。ABM条約から合衆国が脱退した。その後にどのような平和の枠組みを構築していくのか。どのように平和を確実なものにしていくのか。私どもはそのことに対する答えも、平和を実現するという観点から見出していかなければならない、このように考えております。中東情勢も北朝鮮情勢も依然として予断を許しません。私どもは、このことにどのように立ち向かっていくのか、真剣に考え、行動してまいりたい、このように思っております。
平和と安全を期して、だるまに目入れする(左から)石破長官、伊藤事務次官、竹河内統幕議長(1月6日、大臣室で)
 国内におきましては、昨年有事関連三法案を初めて国会で審議を行いました。残念ながら継続審議となったまま、今年の通常国会におきましてその成立を期したい、期さねばならない。

(2面)
このように思っております。私は、着任のときにも申し上げましたが、「この有事法制こそは、民主主義国家を守るためにどうしても必要なものである。民主主義国家であればこそ有事法制が必要なのである。」「いざとなったら自衛隊は超法規で動けば良いのだ。」そのような考え方は、法治国家にあって到底取りうるものではないと考えております。昨年、私は特別委員会に一員として参加を致しました。そのときになされました議論は、「有事法制なんぞというものを作るから戦になるのだ。」とか、甚だしきに至っては、「有事法制を作ることによって自衛隊と国民が対立をするのだ。」とか、そのようなお話をされる方がありました。私たちは、このようなある意味ためにするような議論、そのようなものを決して等閑視することなく、きちんとした説明責任を果たしていきたい、そのように思っております。私どもは、自由や民主主義やそして国民の福祉、それを至上の価値というふうに心得ております。しかし、その自由や民主主義や国民の福祉、それを守ってくれる最後の主体は国そのものだと思っています。その国そのものが、脅威を受けた時にどのように対応すべきなのか、それを法体系としていかにあるべきなのか、先の大戦において、どうしてあのように多くの民間人が犠牲となったのか、その犠牲を避けるためにどのようにすればいいのか、そのことの答えはきちんと出す責任がある。このように私は考えておる次第でございます。先の大戦の後に、多くの民主主義国家は、その悲惨な経験の故に民主主義を守るためには有事法制が必要である、真摯にその課題に取り組んでまいりました。ただ、我が国のみが、それに取り組むことを怠ってきたと思っております。「有事法制なんか無くったって日本は平和だったではないか。」と言われる方がおります。しかし、それは有事法制がなかったから平和なのではないのだ、ということをきちんと認識をしなければいけないと思っております。
 この正月に久方ぶりに、昭和四十年代だったと思いますが、ベストセラーとなった『日本人とユダヤ人』という本を読み返してみました。そこには、「日本人は水と安全はただで手に入ると思っておる。」そのように指摘がなされております。今から三十年も前の本であります。残念ながらその言葉は今でも通用するのかも知れません。大切なものは決してただではありません。大切なものを守っていくためには、多大の努力を必要とする、そのようなごく当たり前の認識を持たねばならないと思っております。本年、私は国民の皆様方に対します説明責任を果たすことに、全力を尽くしていきたいと思っております。議論になることを恐れることは、それは自らの保身にはつながっても、決して国民に対する責任を果たしたことにはならない、そのように考えるからであります。根本論から議論を起こし、国民の叡智により正しい判断をいただく。それがあるべき姿だと信じております。そのためにも私ども防衛庁・自衛隊は、国民にとって最後の拠り所であるが故に、国民から最も信頼される組織でありたい、このように思います。また、昨年、初度視察で東部方面の視察をさせていただき表した。そのときに私はこのようなことを申し上げました。「国民の皆様方に信頼される自衛隊でなければならない。同時に自衛隊の皆様方から信頼される政治でなければならない。それこそが、シビリアン・コントロールの最も肝要なところである。」というふうに思っております。国民に信頼される自衛隊であると同時に、自衛隊に信頼される政治でありたい。私ども四人はそのように考えて、防衛庁で働かせていただいておるところでございます。加えまして、防衛力の在り方につきましても更なる検討を進めたい、そして統合の在り方につきましてもきちんとした答えを出したい。納税者に対して、誠実な防衛庁・自衛隊でありたい。そのようにも考えております。更には沖縄の問題、このことにもきちんと取り組んでまいりたい。このように思っております。今私どもは、恐らく数十年に一度あるかないかの重大な歴史の変わり目に生きているのだと、そのように思っております。このような時期に私どもに与えられた責務は重且つ大であり、私どもが何を果たすか、そのことが今後数十年の我が国の運命を決めると言っても過言ではないのかも知れません。
 昨年末、市ヶ谷エリアの若い方々を対象として、「国益とは何だと思いますか」というようなそういう論文の募集をさせていただきました。お正月に随分と読ませていただきました。多忙な中にあって、「国益とは何なんだろう。」、「防衛庁・自衛隊のあるべき姿とは何なんだろう。」その思いを書いて下さった。そういう方々に対して心から敬意を表する次第であります。中には、「こんな論文なんか書かせるから、益々忙しくなるんだ。」とか、「一体あいつ何考えているんだ。」とかいうことをおっしゃった方もありました。あるいは私の言い方が悪かったのかも知れません。しかし、数十年に一度の境目に遭遇しておるが故に、国益とは何なんだろう。どの国も全てが自分の国の国益とは何なのか、ということを突き詰めて考えております。昨年末、2+2、防衛首脳会談におきまして、ラムズフェルド長官やパウエル長官とお話をしておって、そのことを痛切に感じました。我が国にとっての国益とは何なのか。我が国が世界平和のために果たすべきことは何なのか。そのことをきちんと考え、答えを見出していきたい。国民の皆様方に選択肢をお示しをしてまいりたい。そのように思っておる次第であります。この時代にその任を負った者の重さを共に噛み締めたい。このように存じております。
 終わりに臨みまして、本年が皆様にとって幸多い年となりますように、そして自衛隊が更に精強でありますように、私どもの、そして日本国の真摯な取組によって、この世界が平和により近づかんことを心から祈念を致しまして、念頭の御挨拶と致します。


新年明けましておめでとうございます
赤城徳彦 副長官
国民の負託に応える

 全国及び世界各地で勤務している隊員諸君、新年明けましておめでとうございます。
 昨年は、日朝首脳会議が実現する等、わが国の安全保障にも大変意義深い出来事がありましたが、他方で、北朝鮮は濃縮ウランによる核兵器開発やIAEA監視要員の追放・核関連施設の再稼動を表明しています。さらに、イラク情勢やテロという新たな脅威等を考えると、国際情勢は依然として不透明・不確実な要素をはらんでいます。
 このような国際情勢下において、防衛庁・自衛隊は、わが国の防衛を基本としつつ、テロ・不審船等の多様な事態にも適切に対応し、国民の期待と負託に応えなくてはなりません。また、わが国がテロとの闘いに取組んでいる国際社会に積極的・主体的に貢献するため、引き続きテロ特措法に基づく自衛隊の諸活動は重要であります。隊員諸君には、より一層緊張感をもって日々の任務に精進されるよう期待します。
 私は、自衛隊がその能力を遺憾なく発揮できる環境を整えることが政治の役割と考えます。そのためには、有事法制の整備、テロ等の緊急事態における関係機関の連携強化、防衛庁の「省」への移行が、喫緊の課題であると考えます。
 私は、防衛庁副長官として、防衛庁・自衛隊が直面するこれら課題・政策に全身全霊をかけて取り組んで参る所存です。
 最後になりましたが、本年が隊員諸君及びご家族にとって、更なる飛躍の年であることを祈念申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。


小島敏男 政務官
防衛庁の役割は重大

 新年明けましておめでとうございます。本年が隊員諸君やご家族にとって、幸多い年でありますよう心より祈念しております。さて、皆様御承知の通り、近年我々を取り巻く安全保障環境は大きく変化しています。世界は、テロリストや一部の冒険主義的な国家からの新たな脅威にさらされています。特に、これらの者が大量破壊兵器を保有しようという動きを活発化させていることは極めて深刻な問題です。本年は、昨年以上にこれらの問題について世界が、そして日本が真剣な対応を迫られることになるでしょう。
 防衛庁・自衛隊の役割が、本年も引き続き重大であることは間違いないと思います。
 また、昨年来の積み残された課題としては有事法制や防衛序の省昇格といった問題があります。これらについては、次期通常国会で法案の成立を図らなければなりません。
 最後に、隊員諸君におかれては、昨年そして今現在もインド洋や東チモール、あるいはゴラン高原に代表される過酷な環境の下、本当に頑張って頂いています。様々な御苦労が当然あろうかと思いますが、隊員一丸となり、互いに助け合いながら本年も頑張って頂きたいと思います。
 私も、長官・副長官を支えながら、隊員の皆さんとともに、これからの一年を防衛庁・自衛隊にとって実り多き年とするよう全力を尽くす所存です。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


佐藤昭郎 政務官
重要課題に全力尽す

 新年明けましておめでとうございます。本年が隊員の皆様にとって実り多い一年となりますことを心よりお祈りいたします。
 さて、昨年を振りかえりますと、国際社会が協力して大規模テロによる脅威の除去に努める一方で、各地でテロの発生が報告されています。イラク情勢も予断を許さない状況です。また、東アジアに目を向けると、北朝鮮による核開発の問題など注視すべき大きな動きがあります。
 こうした中で自衛隊は、インド洋への艦艇の派遣などにより、国際的なテロ根絶の活動に着実に寄与して参りました。また、東チモールなどへの自衛隊の派遣により、国連を中心とした平和協力活動への協力を引き続き行っております。
 これらの活動を着実に実施していくことは、防衛庁・自衛隊に対する国民及び国際社会からの理解と信頼を得ることとなり、ひいては、我が国の平和と安全の確保や国際社会の平和と安定に寄与するものと確信しております。
 こうした自衛隊の活動を支えているのは、日々の訓練と隊員一人一人のたゆまぬ努力であります。私としては、新年に臨み、武力攻撃事態対処関連三法案の成立、防衛力の在り方検討、防衛庁の省昇格といった防衛庁の直面する重要課題に全力を尽くすとともに、自衛隊の活動を支える現場の隊員の方々と意見交換も行いながら、自衛隊がその実力を遺憾なく発揮できる態勢づくりに努力して参りたいと考えております。


3面へ
(ヘルプ)

Copyright (C) 2001-2014 Boueihome Shinbun Inc