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自衛隊ニュース   1119号 (2024年3月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第145回>

普遍的価値について

 ロシアの起こしたウクライナ戦争は、政治体制と価値観をめぐる戦争でもある。EUは価値の共同体と言われ、自由、民主主義、基本的人権、法の支配などの「普遍的価値」を自ら実現すべき理念として掲げてきた。ウクライナ戦争で、西欧の普遍的価値の強靭さが問われている。
 世界に先駆けて近代市民社会を成立させた欧米は、自由、平等、民主主義、基本的人権、法の支配を人類の普遍的価値とみなし、世界の他の国々も、社会の発展とともにこうした価値観を自然に受け入れるようになると思われていた。しかし、近年これが疑問視されている。
 まず、普遍的価値を主導する国とみなされてきたアメリカが変化している。トランプ大統領の就任演説(2017年)には歴代大統領の常套句だった自由、平等、民主主義などの言葉は一切なかった。アメリカには普遍的価値のもとに自国の利益と世界の利益とを調和させようと苦闘した歴史があるが、トランプはその苦闘の歴史を否定した。価値認識が希薄で、アメリカファーストを唱えるトランプが再び大統領になるかもしれない。
 普遍的価値を共有する最先進国とみなされるG7のサミットは一致してロシアのウクライナ侵略を非難し、ウクライナを支援する声明を出しているが、世界でのG7の影響力は急速に低下している。G7に中国、インド、ブラジル、ロシア、メキシコ、インドネシアなどを加えたG20の影響力が大きくなっているが、G20には自由、民主主義、人権などを人類普遍の価値とは見なさない国も多い。
 そして中国。中国は習近平の時代になって普遍的価値を西側世界の価値であると否定し、富強、民主、和諧、自由、平等、公平、法治、愛国などの「社会主義の革新的価値」や平和、発展、公平、正義、民主、自由などの「全人類共通の価値」を唱えるようになった。自由や民主が含まれているが、中国には政府を批判する言論の自由はなく、民主は一党独裁の人民民主なので、西欧の普遍的価値と同じとは言えない。
〓小平による改革開放以来驚異的な経済成長を達成し、自信を深めた中国が欧米の普遍的価値に対抗する価値として、中国独自の価値を主張するようになった。中国が欧米の普遍的価値を拒否するもう一つの理由として、欧米による自由、民主、人権といった価値の主張を内政干渉ととらえる意識がある。
 そして日本。日本が普遍的価値を口にし始めたのは安倍内閣からである。安倍首相が唱えた「自由で開かれたインド太平洋」構想は、価値観を共有する米国、英国、EU、オーストラリア、インドから基本的に支持されたが、中国はこれを対中国包囲網の構築とみなし、警戒している。現岸田内閣は安倍内閣の価値観外交を踏襲している。
 「普遍的価値」に対して日本はどのような態度でいくべきだろうか。自由、民主主義、法の支配、基本的人権などを日本も普遍的価値と認め、国の運営、外交の方針として堅持するのがよいと私は思う。こうした価値は欧米で発展したが、日本の伝統になかったものでもなく、開国後170年の経験を経て日本に定着した。特に敗戦を経験して、日本は文明的に成熟したと考えてよいのではなかろうか。中国をはじめとする普遍的価値を共有しない国との交際は、相手国の価値批判は控えながらも、自国の奉じる価値は謙虚な自信をもって堅持し、戦略的に付き合う。
 価値には良し悪しが伴う。自由、民主主義などを普遍的価値とする国の方が、そうでない国よりも良い国だと私は思う。
(令和6年3月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


♪音楽隊特集♪
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いま大いなる和のもとに
陸自中央音楽隊第171回定期演奏会
 前日の暖かさとは打って変わり冷たい小雨の降る2月21日、「すみだトリフォニーホール」にて、陸上自衛隊中央音楽隊(隊長・志賀亨1陸佐=朝霞)による「第171回定期演奏会」が熱く行われた。今回は、「Great Harmony〜いま大いなる和のもとに」をテーマとし、祖先から大切に受け継いできた「和」の心を表現、今こそ世界に向けて伝えていくという思いが込められていた。
 「今現在も我々の仲間は、能登半島地震の復旧・救援活動に出ている。我々も志は一緒で、熱い想いを全ての自衛官は持っている」「中音だから表現できる日本の四季を感じて欲しい」と演奏だけでなく丹羽綾子最先任上級曹長による司会のコメントも熱かった。
 演奏は2部構成で、第1部は佐藤文俊2佐の指揮により、色々な楽器の花による「お花たちのパーティ」や世界平和の思いを込めて鶫真衣3曹が歌い上げた「花の街」、恋の迂用曲折を奏でた「束の間の恋の歌」など5曲。
 第2部の指揮は副隊長の柴田昌宜2佐で演奏され、目には見えない何かを感じる「鳳凰が舞う」の大迫力の演奏や今回のテーマでもある「Great Harmony〜いま大いなる和のもとに」の鶫真衣3曹の熱唱など4曲。アンコールでは、初披露となる「東京ブギウギ」を会場と一体になってノリノリで演奏。最後は、阪神大震災時に慰問で行った先でリクエストが多かったという「軍艦マーチ」で締めくくった。
 プログラムが進むにつれ、観客の演奏後の拍手のタイミングが遅くなっていく。これは、最後の音をビシッと決め揺れる空気、陸上自衛隊中央音楽隊の奏でる音の余韻を噛み締めているからなのだろうと思う。その瞬間、会場が一体になるのを感じる。
 新しいことに挑戦し続ける陸上自衛隊中央音楽隊、次回定期演奏会は6月7日。詳しくは中央音楽隊ホームページまで!
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海自東京音楽隊第63回定期演奏会
 2月12日、海上自衛隊東京音楽隊(隊長・植田哲生2海佐=用賀)の「第63回定期演奏会」が東京オペラシティコンサートホールで開催された。
 演奏会のオープニングは、金管楽器の煌びやかなサウンドによる「ウィーン・フィルハーモニーのためのファンファーレ」で幕を開け、続いて、橋本晃作2海曹が軽快に「音楽の夜会よりラ・ダンツァ」を、三宅由佳莉2海曹が6人の女性コーラスとともに透き通った歌声で「Song of Life〜生命の奇跡〜」を披露すると聴衆は「歌と吹奏楽」の魅力に引き込まれていった。そしてルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの音楽からモチーフを取り出し再構成したヨハン・デ・メイ作曲の「エクストリーム・ベートーヴェン」が演奏されると、その多彩な音楽的変容と重厚感によって会場は驚嘆の様子をみせていた。
 休憩を挟み、第2部は「エクストリーム・ベートーヴェン」と同じくヨハン・デ・メイ作曲の「交響曲第1番 指輪物語」を演奏した。吹奏楽を代表するシンフォニックで大規模なこの作品が、荒木美佳2海曹のナレーションを曲間に交えながら全5楽章が熱演されると、壮大な音楽と物語の世界へ誘われ、あっという間の45分間であった。
 鳴り止まない拍手の中、三宅2海曹、橋本2海曹が再びステージに登場し、アンコールとして歌詞が猫の鳴き声だけで歌われる「猫の二重奏」では、遊びの要素ありの楽しさで聴衆を和ませ=写真=、ラストは海上自衛隊制式行進曲「軍艦」を演奏し、演奏会は大盛況のうちに幕を閉じた。
 東京音楽隊の演奏会情報は、東京音楽隊ホームページで紹介されている。
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第19回第6師団音楽まつり
絆 〜心をひとつに〜
 第6師団(師団長・楠見晋一陸将=神町)は、2月18日、天童市市民文化会館(山形県天童市)において「絆〜心をひとつに〜」をテーマに「第19回第6師団音楽まつり」を開催した。
 第6音楽隊(隊長・石村1尉)による国歌斉唱、師団の活動紹介映像に合わせた祝典行進曲「ライジング・サン」で幕を開けた。
 第1部は、福島駐屯地に所在する第44普通連隊及び第11施設群の隊員で構成された「ファンシードリル」が5年ぶりに統制美あふれる演技を披露した。
 第2施設団の「船岡さくら太鼓」の力強い和太鼓演奏、第20普通科連隊のダイナミックな「山形花笠踊り」がこれに続き、隊員一人ひとりの息のあった迫力のある演奏演技により来場者を魅了した。
 第2部では、米国空軍太平洋音楽隊「ファイナル・アプローチ」の8名による演奏で「聖者の行進」、日本語で歌われた「花は咲く」など6曲を披露した。
 第3部は第6音楽隊、福島駐屯地音楽クラブ、郡山駐屯地音楽クラブ、米国空軍太平洋音楽隊の合同演奏で、映画作品の音楽の中から「トップガン・アンセム」「スターウォーズ・コンサートセレクション」を披露した。
 全出演者で迎えたフィナーレでは手拍子とともにホールに響き渡った「明日があるさ」によって来場者を含めた会場の心がひとつとなり、音楽まつりは大盛況のなか終了した。
 音楽まつりは、第1回・第2回公演ともにほぼ満席の各回約1000名の観衆が訪れ、「素晴らしかった」「とても感動しました」「また来年も見に来たい」など賞賛の言葉が多数寄せられた。

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