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   2007年9月1日号
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《論陣》
不耕起栽培は無農薬米作り
期待される21世紀の健康農法
 友人が小さな出版を祝って10人ほどの仲間を集めてくれた。不思議な知り合いだからだろう、予想外の名刺交換となった。その中に「日本不耕起栽培普及会」という聞いたこともない肩書きの名詞が気になった。
 聞けば「おいしい健康米を作っている」という返事だ。途端に興味が沸いた。無農薬というのもいい。一体、どういう米作りなのか。我が故郷では7月にはいると、何度もヘリコプターによる農薬散布が年中行事となっている。途端に蛍が消えてしまうのである。いやなのだが市と農協に誰も逆らえない。空気は有毒化する。こんなわけで、無農薬米作りについて、さらに聞き出そうとすると、資料を送ると約束してくれた。
 現在、日本の米作りは世界の最高水準にある。「おいしい米」というと、魚沼産の「コシヒカリ」という日本人は多い。先ごろ、中国に輸出された。中国米に比べて、べらぼうに値段が高い。ところが、べらぼうな金持ちがいるから売れるのである。
 以前、農協勤務の友人がこんな話をしてくれた。「何種類かの米を炊いて味を見てもらった。一番おいしいという米がなんと中国米だった。理由は、日本の品種と技術で作った米だからだ」と。戦時中、中国で迷惑をかけた生き残りの日本兵が、戦後米作りをしていて罪滅ぼしに少しでもお返ししたいという背景からだった。
 最近、注目の資料が届いた。岩澤さんとか福岡さん、藤崎さんという固有名詞が出てくる。彼らが90年代に研究開発して、既に無農薬米作りを始めているのである。
 農業とは、土を耕すものだと信じられてきた。しかし、これは耕さないのだ。しかも、こうして栽培する米は異常気象や病虫害に強い。「夫婦で10町歩を楽につくれる」というのだから、正に驚きである。農薬を使わないとなると、水田は生物の棲家・天国だ。蛙は当然としても、今日では姿を消してしまったドジョウ、メダカ、タニシの生息地となる。
 冬季に水を張ると、草が生えないか生えにくい。除草剤がいらなくなるのだ。無農薬・無除草剤によって、田んぼの小魚に水鳥が群がり、その鳥たちの糞が肥料になって土壌を肥沃にさせる。施肥も不要になるのだ。なんとすごいことか。これぞ本物の近代合理主義農法ではないだろうか。
 生物が群がる水田は、さまざまな幸を人間に与えてくれるだろう。本来の生態系へと日本列島を再生もする。鶴も舞う日本古来の豊かな自然が目の前に誕生するだろう。農林水産省は、この画期的な米作りを推奨すればいい。
 これは、お年寄りでも楽にできる農法だ。仕事が見つからないで遊んでいる、きつい仕事嫌いの若者も農村にどんどん入り込んでいくだろう。農村が活性化するとは、こういうことを言うのである。
 今日を生きる人間は洋の東西を問わず、食の安全に異常な関心を抱いている。命を大事にする世界だ。昨今、中国産に批判の声が至る所で噴出しているが、それもこれも食の安全についての問題だからである。来年のオリンピックに向けて中国政府は、真剣に取り組んでいるが問題が深刻だからであろう。
 とりわけ、米を主食としている日本人にとって無農薬の米こそが、究極の食の安全であろう。農水省は消費者の立場に立って、このすばらしい無農薬米作りに率先して取り組む責任と義務がある、と強く訴えたい。

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