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2007年2月1日号
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大空に落下傘の華
第1空挺団 降下訓練始め
《習志野》
 第1空挺団(団長・岡部俊哉陸将補)による「降下訓練始め」が1月7日、千葉県船橋市の習志野演習場で行われ、久間章生長官(現防衛大臣)、森勉陸幕長、北原巖男施設庁長官、澤山正一東方総監をはじめ招待者や地元住民など約6000人の観客を前に一連の訓練内容を披露した。訓練には空自航空支援集団、陸自第1ヘリコプター団、第1師団、東部方面航空隊、富士教導団が支援部隊として参加。航空機17機、車両37両の規模で訓練展示を実施した。CH-47の上空からの進入・地上での偵察の模擬戦闘が行われたほか、恒例の空挺隊員による落下傘降下、軽物料の投下など迫力の訓練展示で観客を魅了した。(写真はC-1輸送機からパラシュート降下する隊員)

久間防衛大臣・櫻井よしこ氏
防衛省昇格「特別対談」
制作官庁としてスタートラインに立つ
(1〜2面)
 1月9日、半世紀の悲願が叶って防衛庁は防衛省として発進した。今まで内閣府の一外局だったため悔しい思いをしたこと、じれったさを味わったことは誰にもあったはずだ。海外では会議の席順もAGENCY故に差をつけられたこともあったと聞く。それだけに自衛官 職員 家族 関係者には素晴しい新年、防衛省元年になった。本紙ではこれを記念して初代防衛大臣・久間章生氏とフリージャーナリストの櫻井よしこ氏との対談を1月23日防衛大臣室で行った。話は「自衛官の安全と誇り」から「集団的自衛権」など熱い問題にも及び活発な議論となった。(司会=本紙・所谷尚武)

 --防衛省への昇格は、新年早々の国民最大の関心事だったと思います。初代防衛大臣の感慨は十分想像できますが改めましてお気持ちを聞かせて下さい。
 久間章生防衛大臣 ようやく政策官庁として一人立ちできたという、そういう感じですね。それと同時に、これはゴールではなくスタートであり、これから国の安全、国民の生命・財産をどう守っていくか、あるいは国の平和と安定をどう確保していくか、やはり長期的視野に立って、防衛省が政策をたてて、それで各省と連携を図りながら各国に働きかけていくという、そういうスタートラインにやっと立ったという感じがしますね。
 --櫻井さん、新生防衛省には難問がひしめいています。期待されていることはなんでしょうか。
 櫻井よしこ氏 ローマ帝国の時代から国家にとっての最重要の課題は国防の基(もと)を固めることにあります。そこが固まってこそ国を守ることができます。だから国民が、賢く考え、政治家が勇気を持って決断して、国民と国土を守る、安全と幸せを守るというその決意を支えるのが軍事力です。軍事力を非常に賢く運用していくことによって、軍事力を使わずして国土を守ることもできるわけですね。私は軍人たる人が、外交官よりもなお国際政治を知り、政治家よりもなお政治を知る、外交・政治両方を誰よりもわきまえた人が軍人であって欲しいと思います。そして軍人であることに誇りをもてるような防衛省になってほしい、と願っています。
 中国の様子などを見ると、日本に対する脅威はかつてないほど高まっています。北朝鮮の核の問題も同じです。この一番大事な時に、防衛庁が省になりました。最も大事な時に最も重要な変化が起きた。だから本当に働き時である、だから大いに期待しているというのが私の意見です。
大臣は究極的にはどういう形の日本の安全保障のあり方がよろしいという風にお考えですか?
 久間大臣 一番大事なことは、みんなが自分たちの国は自分たちが守るという気持ちを持つこと。それと同時に、そういうことを形としても備えるということ。そして形だけでなくて、それが機能できること。それと同時に国際関係で敵対関係にならないように、配慮していくこと。それでも力が及ばない時はアメリカとの同盟関係をしっかり結んで、それによってカバーしてもらうということが一番大事です。だから、防衛庁が省になったのをきっかけに、教育基本法もそうですが、自分たちの国を自分たちが大事にして守っていくという意識をしっかり持たないといけないと思いますね。

集団的自衛権とは
 櫻井氏 そうしますと、安倍内閣のひとつの課題は所信表明演説でもおっしゃったように集団的自衛権の問題になりますね。いま大臣がおっしゃったように自分の国を自分で守るということを具体的にお話しくださいますか。
 久間大臣 集団的自衛権という言葉をよく使うのですが、国連憲章でもそうですが、個別的又は集団的自衛の固有の権利という言い方をしております。2つの権利が全く別々にあるのではなくて、自分の国を守るためには、自分自身で個別で守る場合もあるし、あるいは集団的に守る場合もある。しかし、一部の人々は、同盟を結んでおけばその相手国が危ない時にはいつもその国を救うかのように、自国の自衛権かのように言っているわけですよ。それは違うので、アメリカがヴェトナムと戦争をやっている時は、日本の平和と安全が直接脅かされるわけではないから、その時日本は集団的自衛権を行使できないと言っているわけです。自分の国にとって、危ないかどうかが自衛権という言葉の重要な要素だと言っているんです。そういう考え方を見ると、アメリカがニカラグアを攻めている時とか、アメリカはアメリカの国策に基づいて戦争をやっているのであって、日本の自衛権は関係ありませんよと。
 櫻井氏 そうすると久間大臣のお考えとしては日本の安全に、玉突きのように影響が及ぶとなれば一緒に戦うのは当然だと、そういうお気持ちなんですか、しかし、世間では反対にとられていますね? 久間大臣が集団的自衛権を否定しているような…
 久間大臣 そうではなくて、集団的自衛権という言葉が一人歩きするからそういう意味で誤解されるので、私はよく例として挙げるのですが、例えば、2台ジープが走っていて、アメリカ人が乗っているジープと自衛隊が乗っているジープが、こうして2台して一緒に並んで走っていて、そして共同作業していてね、日本のジープが先にいる時に先に撃ってきたら、それに対して反撃するけれども、米軍の方が先に行っていたら、一切反撃できないかのような、そんな馬鹿な話はないのであって、撃ってきているのがね、個別に関係なく日本のジープにも撃ってきている場合は、反撃すべきだと、私はそれは当たり前のことだと言っているわけですよ。だから自衛隊の艦船が米軍艦船に補給活動をやっている時に、その艦船が攻撃されたらどうしますか? それは補給しているその2つが一体として攻撃されている場合は、それは反撃を当然すべきであるというようなことを言っているわけですよ。
櫻井氏 なるほどね。

軍事大国になるのか
 --よく防衛省になって軍事大国になるんじゃないかという話が出ますけど、安倍総理がこの前、式典の時に、フィリピンのアロヨ大統領から省昇格を歓迎するというメッセージをいただいたということを披露していました。
 久間大臣 私は1月初めにタイに行きました。その時にプレム枢密院議長をはじめとして、ブンサーン軍最高司令官とも会いましたが、タイのブンロート国防大臣や向こうのみなさんは、みんな『おめでとう』と言ってくれました。それは日本が軍事大国ではない、外に向かって戦争をしに行く国ではないということをもうみんな分かっているんですよね。
 --櫻井さんは外国との交流が大変深いとうかがっていますが、いずれの国から何かメッセージはありましたか
 櫻井氏 私もかなり幅広く取材をしているんですけれども、どの国の方々も日本が軍事的に怖い国だなんて言う政治家や役人は一人もいないですよ。むしろ彼らは全員と言っていいくらい中国を恐れているんですね。むしろ日本に軍事的に、防衛庁が防衛省になってくれと、自衛隊をちゃんと軍隊として位置づけて我々と一緒に軍事演習もして欲しいという声が少なからずあります。私は日本はとてもアジアでは信頼されていると思います。
 --今まで自衛隊の国連の平和維持活動だとか人道支援活動の場合は、その都度作られた自衛隊法の雑則だとか付則が根拠となっていましたが、今度自衛隊法第3条の2項に本来任務と明記されて自衛官の人たちはプライドというかステイタスといいますか、そういったものができたと思うんですが、今からそういう本来任務に基いた国際貢献っていうのは変わってくるんでしょうか
 久間大臣 今まで多くの隊員が海外に行っていますからね、そういった経験に基づく教育というのをこれから先やっていく必要があります。効果のある方法とか色々問題点とか、失敗談もあるでしょうから。そういう意味で、今度は教育隊みたいなものを作ろうと思うんですよ。それと国際貢献をしなければならないということで要請があった時に、すぐに調査に行けるように即応集団みたいなものを用意しておいて、直ちに調査とか準備行為に入るとかね。やっぱりもうこれだけ国際平和協力活動というものが国際社会で、各国とも必要だということになってきている。日本も海外に出て行くのが、それはもう当然のことだという前提に立って構えなければいけませんから。そういう意味では、今までの雑則ではなくて本来任務にしておいて、今言ったような教育隊とか即応部隊を置いておくことが大事だと思います。それはやろうと思って、次の段階で再編を考えているところですね。
 --それで安倍総理がNATO発言といいますか、NATOに出動してもいいということを言いましたね。
久間大臣 それは、国際協力部隊としての出動なのか、それともNATOに行って向こうの経験を、共同の演習なり、あるいはオブザーバーで行くのか知りませんが、色々見聞を広めるという意味かもしれませんし、具体的にまだこういう考え方で部隊をNATOに派遣するというところまでいってませんから。

国民の期待に応える
 --熱い熱い話が続きました。もっとお聞きしたいのですが時間がきました。大臣、防衛ホーム新聞は隊員の皆さんとご家族の皆さんにも読んで頂いているのですが、省になったということで、改めてご家族のみなさんに何かメッセージをおねがいします。今まで随分肩身の狭い思いをされたことを聞いています。
 久間大臣 とにかく国民から期待されているわけですからね。そういうような期待されている内容を作ってやっていくというのが私の役割です。そういう点では、我が国は専守防衛という枠があるから、他国の軍隊と同じとは言いませんが、胸を張って、こういう国の防衛をやっているんだと外に向かって言えるようになりましたと、そういうことは言ってもらっていいと思います。
 --櫻井さんはサマワ一次隊の出発式にも出席されたり各地を回られています、部隊に友人も多いのではないでしょうか、彼らに一言おねがいします。
 櫻井氏 私は自衛官は、他のどの省庁の人よりも顕彰されてしかるべきだと思います。なぜならば、いざという時、本当に命を投げ出して国を守る、国民を守るということは外務省はしない、財務省もしない、防衛省の方だけなんです。軍人だけなんです。だから自分の命をかけて任務についているということについて、もっと国民も感謝しなきゃいけないし、それを顕彰していくということ、感謝するということはとても大事なことだと思うんです。同時に、みなさんにはそのことにもっと誇りを持っていただきたいと思っています。
(文責・防衛ホーム編集部)

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