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1059号 (2021年9月15日発行) |
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機略縦横(24)
作戦システム運用隊准曹士先任准空尉 小倉亜矢 |
最近、Z世代という言葉をよく見聞きする。Z世代とは、アメリカの概念で1996年頃から2010年頃に出生した世代を指し、生まれた時からインターネットが身近にある環境で育ち、多様性や自分らしさを重んじる傾向にあるという。
一方、私はY世代を挟んで2世代前のX世代というものに分類される。特徴としては、インターネットがない時代から普及されるまでの過程やワークライフバランスに関する人々の意識や制度の変遷を見て過ごし、変化に対応する能力は比較的高い傾向にあるが、個人主義で冷めているらしい。
若い隊員との間に仕事や生活に対する考え方で価値観の相違を感じた時、私は自分自身が若かった頃を思い返すようにしている。当時の先輩たちから見ると自分は理解しづらい存在であったのかもしれないと思い返すことで、『「最近の若い子は」と言ってしまうのは、自分が歳を取って若い時の気持ちを忘れてしまっただけのことであり、そもそも世代で一括りにして先入観を持ってしまうことこそが固定観念であり時代遅れなのかもしれない』と思い起こすことができる。
先輩方が築いてこられた良き伝統を継承しつつ、私たちの世代から新しい世代に歩み寄り、ともに理解しあえる関係を築き上げていくことが、准曹士先任としての職務であると思う。そのために、私自身が常に価値観のアップデートを図り、固定観念や思い込みに縛られることなく、笑顔と本質を追求することを心掛けていきたい。 |
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雪月花 |
障がい者のスポーツの世界最大の祭典、東京パラリンピックがオリンピックに負けないほどの感動を世界に発信した。障がいのある人もない人も認め合う共生社会の実現を目指して「失ったものを数えるよりもあるものを大事にしよう」と謳われているパラリン憲章を選手たちは実践してくれた。戦い終わってテレビに映し出される選手の顔は勝者も敗者も一様に爽やかであったが選手ひとり一人のストーリーには胸を打つものがあった。トライアスロンで銀メダルの宇田秀生選手は結婚式から5日目に作業中に根元から右腕を失った。至福のスタートをしたばかりの二人にはいかに絶望の衝撃であったか想像は容易い。妻の亜紀さんの励ましもありパラリンピックを目指すことになった。「障がい者」ではなく「アスリート」としての存在価値を二人は評価してもらいたかったのだ。左手でブーケを高く掲げる宇田選手の顔は羨ましい程に美しかった。両手がなくても背泳で二つのメダルを獲得した山田美幸選手、感謝の言葉を交えてインタビューに答える14歳の少女は屈託もなく無邪気に感謝の言葉を交えてインタビューに答えていた、温かい環境で育てられていたのだろう。選手だけでなく強度の視覚障がいのブラジルの報道カメラマンもいた、選手の動きや表情を撮る時は音と空気と試合の流れを手掛かりにするのだと言う。目の不自由なブラインドサッカー選手、3時間も車いすを操りながらラリーを続けるテニス選手。この人たちを初めて見たときは同情が先だったが彼らの強力な精神と活躍を見るとそれがいかに失礼な見方だったことかと気が付いた。金子みすゞの詩に「みんなちがって みんないい」という一節がある、誰もが対等なのだ。 |
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