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   2004年6月15日号
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空自創立50周年記念イベント
華やかに航空祭
雨天にもかかわらずファン殺到
展示飛行、アトラクションなど大人気
 今年創立50周年を迎えた航空自衛隊では、「美しき大空と共に」をキャッチフレーズに各地で関連イベントを展開している。特に5月は、第3日曜日である16日に美保基地(鳥取県境港市)、第4日曜日の23日には静浜基地(静岡県志太郡大井川町)と、2週にわたり立て続けに大掛かりな航空祭が実施された。
 今年は両会場共、天候には恵まれず、展示演習「」の舞台といえる大空からは冷たい雨が会場・客席に降り注いだ。だが、雨天というあいにくの天候にもかかわらず、会場には早朝からたくさんの人が詰めかけ、基地内はいつもの静粛なムードとは全く異なる盛り上がりをみせていた。来場者は地元の人々ばかりか、このイベントを心待ちにしていた航空ファンが撮影準備を携えて全国から訪れる姿も目立った。
<静浜>
ヘリコプターを使って遭難者救助を再現
 航空自衛隊静浜基地(司令=田口千秋1等空佐)では5月23日、毎年の恒例行事となっている航空祭が開催された。
 来場者数は6万9,795人。昨年10万人を超えた来場者数には及ばないものの、晴天だった一昨年の6万5千人を上回る人出となった。
 小雨まじりの気象状況で、予定していた飛行展示のうちF2やブルーインパルスなどいくつかのフライトは中止となったが、T−3は開始予定時刻を繰り下げ、天候回復を見計らったかたちで実施、会場からは大きな歓声・拍手が沸き起こっていた。注目をあつめたのは、実際に人命救助用ヘリコプター「UH−60」を使用して、遭難者救助の現場を再現した展示飛行。ホバリングで空中停止した機体から、2人の救難員(栗原1空曹と和田2空曹)=写真=がロープをつたって垂直降下、隊員たちの呼吸もピタリ合っていた。ピッツによるアクロバット飛行は、元空自出身のパイロットによるもの、軽快な身のこなしで大空にシュプールを描き人々を魅了する。通常の目にする飛行機では決してみられない曲芸飛行の技の妙、連続曲技にエプロンサイドの観客席はスタンディングオーベイション状態となった。
静岡県警も参加
 ヘリコプターの飛行展示では、ほかにも静岡県警の「ふじ1号」がスパイラルダンスなどの飛行技術を披露した。パイロットは静岡県警航空隊所属の岩本巡査部長(静岡市出身)、副操縦士席には夏目警部(藤枝市出身)が搭乗をつとめた。7月に地元・大井川港で開かれる町のイベント「踊夏祭(おどらっかさい)」のPRなどもあり、静浜基地と地域との緊密な協力関係を感じとることができた。
 地上展示は滑走路脇のエプロン部分に、飛行展示でも活躍したT−3、UH−60など多数の機体がならび、間近でみる実物の大きさと重厚感に観客のため息が止むことはなかった。格納庫では「空自50周年記念」の写真パネル展示、装備品展示も行われ、轟音とともに活況の航空祭が今年も繰り広げられた。
<美保>
3輸空のユニコーンマークが描かれたC-1輸送機
 美保基地(司令=飯田克幸1空佐)では5月16日、「美保基地航空祭」が行われた。
 今年は、空自50周年記念の塗装を施した航空機も登場。C−1、YS−11、T−400の3機種を使用した。機体の機首部分には、第3輸送航空隊のシンボルであるユニコーンマークが大きくペイントされ=写真=、普段目にする“おとなしい感じ”の自衛隊機とは異なり“躍動感”を印象付けるデザインに変身した。
 美保基地は鳥取県西部の弓ヶ浜半島に位置し民間機が離発着する米子空港との共用飛行場であることから地域での知名度や関心も高い。そんな地元のファンに負けじと、前日より多数の車が並んでいた。「いつもこんなに早くから?」の問いに前日の予行から見ているという岐阜県の坂田さんによると「場所取りも大変だけど、今日みたいに本番が雨でも昨日のように予行は超晴天という事もあります。何が起るか分からないのが航空祭なんです」。そんなファンの為か、基地開放時間も40分繰り上げ、8時20分開門となった。
 気温18度・天候は雨。来場者数は3万8千人・入場車両は6千台。天候不良のため多くの編隊飛行が中止とされながらも、3機種の記念塗装機の展示飛行や、空挺降下などの演目は実施された。
 地上でも様々なアトラクションが行われ、来場した家族連れや子供達に大変な盛況ぶりだった。午前は第12飛行教育団の航空学生によるファンシードリルが、昼頃には「沖縄舞踊エイサー」が那覇基地からの応援で実施され軽快な音楽とともに明るい雰囲気を演出した。
 通常は航空機を牽引するタグに被り物をほどこした「SL−日本海」の遊覧走行は、瞬く間にちびっこ達の眼差しをとりこに。子供達の試乗に、家族連れが行列をつくる一幕もみられた。
 第1格納庫では「空自創立50周年記念」パネル展示が、映写講堂ではアニメ映画上映会が、基地内には所狭しと模擬売店が立ち並び、子供から大人までが一日楽しめる航空祭となった。12時30分にブルーインパルスの飛行中止アナウンスが流れた時、場内は「え〜っ」のため息だらけに。そんな気持ちを挽回するかの様に全機が帰投するまで見送る姿が印象的だった。

話題の新刊
人生で大切なことはすべて自衛隊が教えてくれた
関はじめ・監修
元第1教育団長  坂 聖夫・著
 著者坂聖夫は防大(6期)卒業後、第45普通科運隊長、熊本地方連絡部長、第11師団幕僚長、第1教育団長などを歴任、平成7年陸将補で定年退官し、高校や専門学校で教鞭をとる教育者である。厳父は陸士46期の故坂清陸将補、外祖父は陸士17期の故鈴木重康中将という軍人一家の出身である。
 本書は、現在の日本の教育現場に欠落している基本的な躾や徳義心などの人間教育のあり方について、自衛隊の新隊員教育課程における教育訓練の実態をありのままに判り易く描写し範として提示するものである。
 著者は、本書執筆の動機を「自衛隊における新隊員教育の成果は、自衛隊の精強性の淵源であるに止まらず、歴史と伝統を忘却した我が国の戦後教育の無軌道・無節操に歯止めをかけ、真の国民教育の模範たり得るものである」と主張する第1空挺団レンジャー課程を修了した唯一かつ異色の元防衛官僚である関はじめ氏の熱心な推奨によるものであったと述懐している。
 著者は、現役時代の自分自身の陸上自衛隊における教育訓練の体験のみに依存することなく、退官後の私立高校や専門学校における若者たちとの切磋琢磨の経験から得た新たなる視点からも自衛隊の教育訓練の全てを反芻することから始めた。更にかって奉職した第1教育団の隷下部隊等に自ら足を運び、かっての知己部下たちのみならず、新しく自衛隊に加わった若者たちとも文字通り膝を付き合わせ語り合い、自衛隊の教育訓練の現場のありのままの姿をけれんみなく彷彿と描写して見せてくれている。
 推薦の序文を寄せたのは陸軍士官学校出身で、「コクがあってキレがある辛口のスーパードライ」の開発で、ユウヒ・ビールと揶揄されていたアサヒ・ビールの再生を見事に果たした功労者の中條高徳氏である。氏は、『おじいちゃん戦争のことを教えて』の著者でもある。氏は、「自衛隊は国家の本質論から人生の有り方に到るまで、あらゆる人生で大切なことを教えてくれる最高の教育、躾の場である。納得の上での合意こそ限りない力を発揮する。教育の本質が崩壊しているわが国の現状からみて、本書は教育の有り方を示す好書と言えよう」と評価している。
 また遠くはフランクフルト在住の教育評論家クライン孝子氏は、「自衛隊の教育は、個性と自主独立を本当に大切にする教育だ。教育の原点がここにある」と激賞している。
 少年工科学校出身で創業九年で東証一部上場を果たしたグッドウィル・グループ株式会社会長の折口雅博氏との対談も読み応えがある。(杉之尾宣生)
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