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   2004年4月15日号
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< 論陣>
あまりに多い情報流出
詐欺・脅迫など犯罪の温床に
 "個人情報"が、あまりにも多く世の中に流出し過ぎている。それが善意の商売に使われているだけなら、ある意味で許せる面もあるが、最近では詐欺や脅迫まがいの犯罪に利用されているのだから、もう許せる範囲を越えている。一方、情報屋の存在も増えている。氏名、住所、職業、年齢などは1人分円単位だそうだが、それに不動産、年収、預金などが付くと、とほうもなく高い値段で取引きされているという。政府も、諮問機関である国民生活審議会の個人情報保護部会から「個人情報保護関運法案」の答申を受け、この4月中には「5法」にまとめた基本方針を閣議決定する。「5法」のうち基礎理念部分だけは施行済みだが、大切な「罰則規定」などの施行は来年4月からとなっている。これでは「対策があまりに遅すぎないか」との声も上がっている。もっとも詐欺、名誉き損など犯罪に引っかかるケースについては「現行刑法などを適用して、取り締りを強化する」と言っている。
 個人情報がどれほど多く流出しているかは、われわれの家庭に送り付けられてくるダイレクトメールや電話、ファックスの数を見ればひと目で分かる。マイカー売り込みのパンフレット、一戸建て住宅、マンション、宝石、和洋服、各種証券、保険、預金の誘いなど数限りない。
 電話では外貨取引き、お墓、マンション、などが圧倒的に多い。
 ダイレクトメールだから、住所、氏名、郵便番号まではっきり書かれているし、電話の場合だと、受け手の職業まで知っている。誰かが"個人情報"を流しているから、これだけのことが分かるのである。流出源として考えられるのは会社の社員名簿、大学の教職員録、企業のお得意様名簿などである。だがプレス資産となると金融機関しか考えられない。いかがわしい電話の請求代行会社からの流出も多い。「3千人分の電話請求代行名簿が手に入ると、相手が支払い済みだろうと、どんどん請求する。すると1日に50万円ぐらいは稼げる」と業者は豪語する。「振り込まなければ脅迫する」という。
 「消費者相談センター」とか「消費者センター」など公的まがいの社名を使って"詐欺をする"手口もある。例えば、10年前そこの会員になり、利用せずにそのままにしておくと突然、ある日、電話が入り「未納会費300万円を支払え」。「関係ない」と言うと「いま解約すれば100万円ですむ」といわれ、泣く泣く100万円支払わされたケースである。「とにかく、何度、電話がかかってきても相手にしないことが一番」と専門家は語る。これも古い名簿が"情報"として売買されていることを証明している。
 情報流出で最も大きかった最近の例としては、通販大手の「ジャパネットたかた」(長崎県佐世保市)の場台がある。「ジャパネットたかた」といえば、若手のバリバリ社長が自らスタジオで商品を前に大宣伝。流暢な語り口でぐんぐん業績を伸ばし、自前の大スタジオを作り、立志伝の人と注目されていた。
 同社から顧客情報が流れていた。当初は「わが社から流れた顧客情報は148人分だけで、それは1994年から98年7月までの名簿の一部」と言っていた。ところが同社内部で再調査した結果、なんと66万人分の"個人情報"が社会に流出していた疑いが濃厚になった。そこで「ジャパネットたかた」の高田明社長は「当分の間、同社の営業休止」を公表するとともに、3月中旬「犯人不明」として捜査当局に告訴状を提出した。
 これほどではないが、変わった情報流出のケースもある。東京の有名大学で外国要人の講演が行われた際、大学当局が要人警備に当たる警視庁に出席学生の名前を提供していた。情報と警備−−むずかしい問題である。
 情報流出を元にインターネットなどハイテクを駆使した犯罪も横行している。「この商品は選ばれたあなただけにお分けいたします」。街に行けば、いくらでも売っている品物を"エリート仕立て"の人物に売る新商法である。情報が善意に使われればいいが、とかく「悪へ、悪へ」と進んでいく世の中。注意したいものである。

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