防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1030号 (2020年7月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第56回>

「草木国土悉皆成仏」思想を考える

 「草木国土悉皆成仏」という世界観が、日本仏教の中心思想であり、日本文化の本質をなすと昨年93歳で死去した哲学者・日本学研究者梅原猛は言う。
 「草木国土悉皆成仏」とは、人間や動物はもちろん、草木や国土も仏性をもち、成仏できる(仏になる)という思想である。梅原猛は、日本思想の原理について50年近く考え続け、80歳近くになって、それは鎌倉新仏教以来の「禅」ではなく、平安時代末期に完成した「天台本覚思想」と、その端的な表現の「草木国土悉皆成仏」であると思うに至ったという。そして梅原は、この思想が西洋哲学の限界を超えて、人類哲学の根本となりうると説く。
 「天台本覚思想」とは、天台宗が密教を取り入れて完成させた思想で、人は本来悟っており(仏であり)、現実のありのままの現象世界がそのまま仏の顕現した世界であると見る。これを一歩進めると、全ての有情(人や動物)、非情(木石など)が仏になるという「草木国土悉皆成仏」思想となる。
 「草木国土悉皆成仏」思想はインドの仏教にはない。中国で生まれ、日本で深化した。インドの本来の仏教は、草木に仏性の存在を認めない。しかし、中国天台宗の湛然は、『摩訶止観』にある「一色一香中道でないものはない」の解釈をめぐり、中道に仏性を読み込んで、非情(木石など)にも仏性があるとした。
 最澄によって日本天台宗が開かれたが、最澄の後継者たちは、非情(木石など)にも仏性がある思想を発展させ、「山川草木悉有仏性」、「草木国土悉皆成仏」といった天台本覚思想を発展させた。天台座主を務めた忠尋(1056-1138)は、「草木国土悉皆成仏」について、(1)草木は仏智の相分として、そのままで清浄、当体常住であり、仏そのものである、(2)自己の心身と国土(環境、自然)は不二一体であり、切り離せない(つながっている)。ゆえに仏身を生じれば(自己が仏となれば)、仏国土も生じて(国土が成仏)、そこに草木も成仏する、と説いている。
 「草木国土悉皆成仏」思想は、日本人にはきわめてすなおに肯定された。室町時代に始まる能や謡曲に「草木国土悉皆成仏」という言葉は頻繁に出てくる。この思想は日本の風土と日本人の感覚によく合い、日本文化の基層となってきた。
 梅原猛は、「草木国土悉皆成仏」は日本の縄文文化の伝統の上に成立したという。縄文文化は日本の豊かな自然の中で発達した高度の漁労採集文化で、なお日本文化の基調にあるという。私は日本の神道も縄文由来で、「草木国土悉皆成仏」思想も、自然を畏敬し自然を神とする神道の影響下にある思想ではないかと思っている。神道は自然道であり、起きてくる全ての現象を自然(〓神)の顕現としてそのまま肯定する。
 「草木国土悉皆成仏」の根底に地上の万物、すなわち人間を含む動物、植物、さらに山、川、海、石などの自然物もすべて生きている(生命すなわち霊性をもつ)存在と見る思想が横たわっている。この伝統的な日本人の感覚の上に、自己は万物とつながって存在している、すなわち自己と環境は不二一体であるという仏教思想が加わって、「草木国土悉皆成仏」思想が深化した。
 人類が深刻な地球環境問題に直面する現在、環境(自然)は生きており人間と一体であるとする「草木国土悉皆成仏」思想は、人類のもつべき良き哲学たりうると考える。
(令和2年7月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授
著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


防衛省・自衛隊 地方協力本部
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Twitterフォロワー1万人達成!
<山形>
 山形地本(本部長・齋藤信明事務官)は5月31日、公式ツイッターのフォロワー数が、1万人を突破した。
 山形地本は、平成30年7月に公式ツイッターを開設。主に地本マスコットキャラクター「地本 さくらんぼ」(陸自)、「地本 ら・ふらんす」(海自)、「花笠 音頭之助」(空自)たち3人と、自衛隊員の親しみある動画を通じて、自衛隊に興味を持ってもらえるよう活動してきた。
 最近では、「鍛えているんじゃない。備えているんだ」のキャッチフレーズで話題を集めた筋肉動画や、自宅でできるトレーニングなどが注目を浴びた。5月からは、公式ツイッターのアイコンに事務官キャラ「山賀田ちほ」を採用し、各地域事務所の紹介等、山形訛りを交えて発信している。今後も、つぶやきを通じて、各種イベントPRなど、活躍していく予定。6月2日現在、フォロワー1万人達成記念として、限定缶バッジ等のプレゼントを企画し、更なるフォロワー獲得を目指している。
 山形地本では、新型コロナウイルスの影響をマイナスと捉えず、新しいことを始めるチャンスと捉え、今後も各種SNSを通じた広報活動に力を入れ、ツイッター等をきっかけとし、多くの方々に自衛隊に興味を持ってもらい、志願票の獲得につなげたいとしている。
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将来設計をイメージ
自衛隊制度を説明

<鳥取>
 鳥取地本(本部長・村岡正智1空佐)米子地域事務所(所長・橋本薫2陸尉)は5月15日、日本海情報ビジネス専門学校(米子市)において公務員コースの学生6名に対し、自衛隊制度の個別説明会を実施した。
 本説明会は新型コロナウイルス感染拡大を受け延期となっていたが、5月14日に鳥取県の緊急事態宣言が解除されたことを受け、広報官3名が各教室に分かれて三密回避を重視しながら実施し、自衛隊の職種・職域などについて分かりやすい説明を心がけた。学生からは疑問に対してその都度質問等があり、一つ一つ納得しながら説明を聞いていた。特に、中部方面総監部オリジナル資料である「自衛官の道しるべ」を配布することで、自衛官になるコースの紹介及び将来設計をイメージしてもらうことに努めた。
 大人数での説明会よりも質疑応答の回数が多く、個別説明の効果を感じるとともに、志願者獲得の手応えを感じた。今後も学校との関係を継続し機会を捉えることで、募集目標の達成へ邁進していく。
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新しいやり方で
一般曹候補生説明会
<大分>
 大分地本(本部長・井村昭利1陸佐)は、緊急事態宣言の解除等を受け「各種説明会の自粛」から「感染対策下での説明会の実施」に方針を切り換え、6月7日に大分合同庁舎において、令和2年度一般曹候補生説明会を実施した。
 説明会は、三密を防止するために対象者を少人数として、説明者等も含めてそれぞれの間隔を十分とり、マスク及びフェイスシールドを着用して行った。この他、防衛省が通達している「多く人が参加する場での感染対策のあり方の例」を参考に体温測定や行動歴確認等も実施している。説明には、一般曹候補生出身の若手隊員(第41普通科連隊所属)にも加わってもらい、経験者ならではのコメント等を含めて一般曹候補生の実情や魅力等を伝えることに努めた。
 参加者からは「一般陸曹候補生出身隊員の方から直接、体験談が聞けて良かった。」「三密対策が十分に実施され不安がなかった」等の声が聞かれた。
 大分地本では、対象者等が安心して参加できる環境をしっかりと整えつつ、効果が得られる説明会を目指し今後も様々な工夫を続けていきたい。

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