防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1055号 (2021年7月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第81回>

民主主義が良い

 世界で民主主義に対する懐疑が広がっている。近代の欧米で発展し、成立した民主主義は世界的に最も進んだ政治体制と見なされてきた。しかし、民主主義国のリーダーたるアメリカ前大統領トランプが、選挙に不正があったとして大統領選の結果を認めず、支持者たちが議事堂に乱入する事件を起こした。民主主義を信奉する先進諸国はこれに眉をひそめた。
 中国は胡錦濤時代までは、将来的に直接選挙や言論の自由の導入を含め、欧米的な民主化を目指すとしていた。しかし、習近平体制に移行して以来、欧米流の民主主義を完全に否定した。重要なのは国の秩序の維持と国民生活の向上であり、これを達成した共産党による一党独裁をよしとする。中国モデルに魅力を感じる途上国の指導者も少なくない。
 コロナウィルス・パンデミックが民主主義の優越性に対する疑念を深めた。中国は初期対応に失敗したものの、その後、都市封鎖による隔離の徹底、PCR検査の徹底、健康コードによる個人行動情報の管理などを行い、感染拡大の押さえ込みに成功した。昨年2月時点で9万人に達した累計感染者数はその後全く増加していない。一方アメリカは今年4月には感染者数の累計3千万人に達し、1日の新規感染者数が最大30万人にもなった(現在1万人程度まで減少)。民主主義の大国インドでも累計3千万人に達し、1日の新規感染者数は減少して5万人となったが、まだ終息していない。これを見ると、民主主義国の方が劣っているのではないかと。
 民主主義の歴史を振り返ると、民主主義は歴史の大半において、どちらかというと否定的な意味合いで使われてきた言葉であることがわかる。プラトンはアテネの民主政を衆愚政として否定したし、アリストテレスは政治形態を君主政、貴族政、民主政に区分したが、特に民主政が良いとは言っていない。
 現代につながる民主主義が発展したのは近代の欧米に於いてである。近代における民主主義の成立にはまず、イギリスで名誉革命による議会主権の確立があった。次にイギリスより独立したアメリカで進展した。独立宣言とリンカーンの「人民の、人民による、人民のための政治」は民主主義の不滅の理念を示すと言われる。そして、革命で旧体制を倒したフランスにおいて進展した。人権宣言は人民主権と自由平等の基本的人権をうたい、西欧が民主主義による市民社会へと進むきっかけとなった。
 欧米の民主主義は議会制を中心に発展した。選挙が実施され、普通選挙への歩みも進んだ。イギリスのジョン=スチュアート・ミルは、代議制民主主義が最善の政治形態であると言った。こうして英米仏で発展した民主主義制度と理念の優越性は、英米仏の富裕化と強国化と相まって、19世紀には世界的に広く認められるようになった。
 冒頭述べたように、昨今民主主義に対する世界的な疑念が広がっているが、私はなお欧米で発展した民主主義を良しとする。それは、民主主義が日本の伝統にあると思うからでもある。古くは十七条憲法の「衆とともに論ずべし」があり、明治は「広く会議を興し、万機公論に決すべし」で始まった。戦前近代憲法を定め、民選議員による議会を実現した実績と、戦後新憲法のもと、民主主義国家の建設に励んだ歴史は軽いものではない。
 私は長期的な視野に立つ国策決定能力に、民主主義の弱点を感じている。これを克服する賢明さと能力を持ちたいと思う。
(令和3年7月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


広報官等によるプレゼン競技会を実施
WEB環境下で初
<大阪>
 大阪地方協力本部(本部長・濱田博之陸将補)は、6月16日大阪合同庁舎及び大阪府内各募集事務所等において「広報官等によるプレゼン競技会」を実施した。
 本競技会は、社会の情報化やコロナ禍によりWEB依存度が増大するなか、募集事務所単位でWEB説明会が実施できるよう、WEB環境下での説明能力及び器材操作練度の向上を目的として今回初めて実施されたものである。
 競技会には、大阪地本に所属する14コの募集事務所等が、それぞれ曹候・自候及び進学種目(防大・防医大・航学・高工校)から説明種目を選択して大阪府内の各所在事務所から参加。高校生に対する募集活動の解禁直前の6月に、高校生等に対する説明会を模擬し、15分という時間制限のある中で自衛隊の魅力、採用制度について、創意を尽くしてプレゼンテーションを行った。審査員には、各管理職のほか大阪地本に所属する募集対象者と同年代の事務官、非常勤隊員を起用し、「対象者の目線で魅力を感じたか」を主眼に審査が行われた。
 参加した広報官からは「はじめてWEBで説明を行ったが、画面越しだと相手の反応が分かりづらく、もっとコミュニケーションをとる工夫が必要と感じた」「作成したプレゼン資料がスマートフォン越しに見ると見えにくいことが分かった。スライドにも工夫が必要と感じた」との声が聞かれた。また、審査員として参加した募集対象者と同年代の事務官、非常勤隊員からは「いろんな角度から自衛隊の魅力や採用制度の説明があり、広報官の人柄や人となりが伝わってきた」「募集事務所に行ってみたいと思わせる内容だった」との意見が出された。
 大阪地本は、募集広報活動の原動力である広報官の識能向上のため毎月広報官等勉強会を行っているほか、年に2回の他地本の研修、年に3回の部外講師による講話を計画しており、現在の対面・接触型の募集広報能力を維持しつつ、WEB等非接触型の募集広報にも力を入れ、困難な募集環境を克服して募集目標を達成していくとしている。

女性のための職業紹介
「ガールズ・トーク」を開催
<大分>
 大分地方協力本部(本部長・井村昭利1陸佐)は、6月12日に大分地方協力本部において、女性のための職業紹介「ガールズ・トーク」を開催した。
 本催しでは、陸・海・空女性自衛官と、応募した女性11名(母親含む)で和やかな雰囲気の中、女性自衛官の仕事からプライベートにわたることなどについて、談笑した。自衛官の教育訓練や、普段の生活に関する女性ならではの疑問点、自衛官を目指した動機、恋愛に関すること等、積極的に質問がなされた。
 参加者からは、「女性自衛官に直接話が聞けて、仕事内容について理解が深まった」「結婚、出産を経ても仕事を継続できる等、貴重な話が聞けた」などの声が聞かれた。
 大分地本は、今後も創意工夫し、様々な機会を捉えて広報活動を行い、募集基盤の拡充を図っていきたい。

鳥取城北高校単独 職業紹介説明会実施
<鳥取>
 鳥取地方協力本部鳥取募集案内所(所長・森村仁志准陸尉)は、5月21日、濱尾2陸士(令和2年度一般曹候補生入隊)と共に鳥取城北高校の女子学生1名に対してWEB職業紹介説明会を実施した。本説明会は、鳥取募集案内所と鳥取城北高校就職指導室をインターネットで結び、濱尾2士の実体験に基づく説明が20分間、質疑応答が10分間の計30分間で実施した。
 濱尾2士は、鳥取城北高校出身の卒業生であり、現在、朝霞駐屯地で一般曹候補生の前期教育期間中である。学生と年齢も近く、さらに同じ出身校でもあることから学生にとって親近感を与える存在。説明会開始当初は慣れないWEB環境のため両者ともに「堅さ」が目立ったが、質疑応答に入ると慣れてきた様子で両者ともに笑顔が見られた。学生からも「自衛官として」という全体的な視点から「女性自衛官として」と、具体的な視点へと入り込んだ質問に変化していった。
 学生は、女性が働きやすい環境、いわゆる、「ワークライフバランスの推進」について深い興味を持っており、濱尾2士の返答も入隊して僅かではあるが新米自衛官ならではの視点で説得力十分だった。学生は「30分間という短時間ではありましたが、非常に参考になりました。また、とても気軽に参加できる環境であることが良かったです」と述べ、好評であった。
 本説明会は、学生が自衛官に深く関心を持っているとの先任広報官の情報獲得から、コロナ禍における対面での説明が制限されている現状に対し、案内所ベテラン広報官の「ひらめき」により実現したものだ。濱尾2士が入隊してからの行動を先行的に掌握しており、適切かつ効果的なタイミングで実施することができた。
 また、当日までの準備を所員全員が積極的かつ迅速に行っており、まさに「阿吽の呼吸」だった。鳥取募集案内所は所員が新たに結成されて約2カ月程だが、所内の連携が密にできている証拠であり、今後も予想される募集活動の制限に、所員一丸となって立ち向かえると確信した活動であった。

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