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自衛隊ニュース   1125号 (2024年6月15日発行)
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読史随感
神田淳
<第151回>

神道の世界的普遍性

 神道は日本の固有の民俗信仰で、キリスト教、イスラム教、仏教のような世界宗教(普遍宗教とも呼ばれる)ではない。しかし、神道はこうした世界宗教と違った人類的普遍性をもつ信仰・精神・教えだと私は思うので、今までこのコラムで二、三度神道について書いてきたが、今回また論じる。
 そもそも神道はいかなる信仰か。そのエッセンスはまず、(1)清浄信仰。清浄に至高の価値を置き、汚れ(=穢れ)をはらい、心身を清浄にして生命力を回復する信仰。(2)自然信仰。自然の中に神の存在を感じ、自然を畏敬し、自然を神とする。自然の理法に帰依する。(3)祖霊信仰。祖先を崇め、祖霊を祭る。祖先は祭られてと神なり、子孫を加護する。(4)産霊(むすひ)信仰。万物を生成し、生命を生む神の霊力を産霊(むすひ)と言い、畏敬し、信仰する。(5)言霊(ことだま)信仰。言葉には霊が宿り(言霊という)、発せられた言葉は現実化することを信じる。(6)感謝。神道は感謝教(有難教)。神、自然、祖先、周囲に感謝し、おかげさまでとの思いで生きる。(7)中今。来世ではなく、今を精一杯生きること(=中今)を最も重視する。(8)多神教、全肯定。神道は八百万(やおよろず)の神が存在する。多くの神、存在するもの、生成するものをすべて肯定する。(9)世のため人のために尽くす。神道を倫理としてみるとき、神道の教えは、祝詞で唱えるこの教えに尽きる。
 こうした神道の教えのもつ人類的普遍性について、特に神道が多神教であることに視点をおき、二、三考えてみる。
 現在キリスト教、イスラム教のような一神教は世界人口の半数を超える信者数をもつが、キリスト教やイスラム教が広まる以前の世界はすべて多神教だった。ローマ時代にキリスト教一色となる以前の古代地中海世界は多神教の世界で、自然崇拝と祖先崇拝が行われていた。人は死して神となり、家族は先祖の墓を大事に守るなど、信仰生活が驚くほど日本の神道に似ている。また、キリスト教が広まる以前のヨーロッパのケルトおよびゲルマン社会も多神教で、自然崇拝と祖先崇拝の社会だった。ケルトでは森羅万象に神が宿ることが信仰され、太陽や大地に宿る神々を崇めた。またゲルマンの自然崇拝は、例えば森の大きな木を神木として崇めるなど、全く神道と同じである。
 多神教世界における自然崇拝はアニミズムである。アニミズムは自然界のあらゆるものに(人間、動植物だけでなく、山、川、岩石などにも)霊魂や意識が宿るという信仰・世界観で、一神教以前の地中海世界、ケルト、ゲルマン世界だけでなく、アジア、アフリカ、ヨーロッパ人入植以前の南北アメリカなどに広くみられた、全人類的な世界観である。神道もアニミズムである。英国の人類学者タイラーはアニミズムを原始的な宗教意識と見なしたが、私はアニミズムの方が近代の機械論的自然観よりも、良き世界観だと思う。地球環境が意識され、人間が自然を尊重し、自然とよく共存することが求められる現代人にふさわしい世界観である。
 多神教は多くの神(=多くの価値)を受け入れ、肯定し、寛容である。多神教である神道も、自然に存在するもの生成するものすべてを肯定し、多様であることが自然の姿なので、人類諸民族も多様な価値観をもちながら、そのまま共存共栄していけばよいと考える。こうした神道の世界観は現代人にふさわしい。
 (令和6年6月15日)

神田 淳(かんだすなお)
 元高知工科大学客員教授。
 著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。



はまな洋々
RASボード製作、発着艦400回も

35周年記念し

 補給艦「はまな」は令和7年3月29日をもって、就役35年となる。
 その1年前の3月29日現在で洋上補給(RAS=Replenshment At Sea)の累計回数が3500回を超えることに気付いたはまな掌運用士田代准尉は、海外の補給艦が補給ステーション等に掲示しているRASボード(洋上補給の回数を受給艦に対して示すもの)が就役35周年の良い記念になるのではないかと考えて製作することを発案。佐世保造修補給所工作部の協力を得てこのほど、同ボードを完成させた。
 RASボードの背景は海の青。白字は波の白。星は羅針盤と任務行動艦を陰で支えていることを表す黒。「HMN」(HaMaNaの略)の赤は、使命に真っ赤に燃える補給艦はまなを意味する。
 佐世保造修補給所工作部の高い技術を生かし、軽量、丈夫なアルミ素材を使用し製作することで取扱いも容易。裏から数字を入れ替えられ安全な運用ができるよう製作していただいた。
 洋上補給時の受給艦の士気高揚だけではなく、広報の際にウェルカムボードとして設置し、一般の方々の海上自衛隊の補給艦の理解促進にも活用していく。

回数増に対処

 補給艦「はまな」は5月14日、航空自衛隊那覇ヘリコプター空輸隊の発着艦訓練支援で通算400回の航空機発着艦を達成した。
 平成2年の就役から約30年経過した令和4年3月14日に通算300回を達成しており、その後約2年2カ月で100回の発着艦を実施した。
 これは、陸上、航空自衛隊への発着艦訓練支援や他国艦艇との共同訓練等により増加しているものであり、統合運用や他国海軍との共同が重要視されている状況の表れと言える。
 航空機を搭載していない「はまな」だが、引き続き航空安全に万全を期し、任務遂行に邁進していく。


徳島教育航空群
地元高校書道部と "コラボ"

「大空を翔る」

 海上自衛隊徳島教育航空群(群司令・稲崎精一郎1海佐)はこのほど、徳島県立板野高等学校を訪れ、令和6年度の当群キャッチコピー「大空を翔る」を書道で書いた同校書道部へ感謝の意を伝えるとともに、作品を受領した。
 同高書道部とのコラボレーションは、令和4年の「大空に挑む」に続き今回が2回目となる。
 板野高校書道部は部員3名(2年生2名、1年生1名)と少ない。書道部顧問は「部員数が少なく、書道パフォーマンスなどを披露する機会が少ないため、書道部学生のモチベーション向上と書道部員の勧誘につながり良い機会となった」、「今後もさまざまな行事等で自衛隊とのコラボレーションを継続し発表の機会が得られればうれしい」と語った。
 徳島教育航空群ではポスター等を作成し、募集広報等での活用を図っていく。


しもきた
1術校教育参考館を研修
 第1輸送隊所属の輸送艦「しもきた」(艦長・寺岡寛幸2海佐)は江田内に入港し4月15、16の両日、第1術科学校の教育参考館において研修を実施した。
 本研修は4月26日の「海上自衛隊の日」に先立って、教育参考館に展示されている海上自衛隊創設から現在に至る活動を学習することを目的としたものであり、先人の活動及び現在も継続されている活動への理解を深めた。
 研修には「しもきた」に乗艦している陸上自衛官も参加。「先人の平和への思いを改めて心に刻むことができた」などの声が聞かれた。
 また、艦内において江田島市職員及び第1術科学校、幹部候補生学校の職員・学生に対する見学を実施した。
 江田島市長や多くの江田島市職員が来艦され、「海上自衛隊における輸送艦が行う活動の重要性をよく理解できた」などの所見を頂き、相互理解を深めた。

「防人」応援隊
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水交会
遠洋練習航海乗員励ます
 公益財団法人水交会(河野克俊理事長)は、5月14日、東京都渋谷区の東郷記念館で「令和6年度遠洋練習航海」の壮行会を行った。水交会会員以外にも、協力団体等関係者、海自現役幹部等が多数参加して、同月20日に世界一周の長旅に出た実習幹部ら約190名を激励した。
 会は、河野理事長の挨拶に始まり、練習艦隊幹部等の紹介に続いて、西山練習艦隊司令官が意気込みを語った。その後、来賓や祝電紹介が行われ、平成23年度遠洋練習航海部隊司令官で、現靖國神社宮司の大塚海夫元海将が壮行の辞を述べた。歓談の時間はあっという間に過ぎ、最後は実習幹部代表が参加者の前で「帰国の際は、一回りも二回りも大きくなった姿を見せたい」と力強く宣言した。壮行会を通して、人として、自衛官としての諸先輩から金言を得た実習幹部は、盛大な拍手を背中に受けながら会場を後にした。

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