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自衛隊ニュース   1124号 (2024年6月1日発行)
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ノーサイド
北原巖男
外交努力&防衛外交努力

 5月23〜24日、中国は台湾本島を全て包囲するかのように5つの演習区域を設定し、更には、台湾が実行支配する中国本土に近接している金門島や馬祖島等なども今回初めて演習地域に入れた大規模軍事演習を実施しました。
 5月20日に発足したばかりの民進党・頼清徳政権を威圧するものであり、あろうことか、沢山の発射されたミサイル等が台湾本島に次々と着弾して行くといった威嚇以外の何物でもない衝撃的なCG映像も世界に向けて流していました。
 台湾海峡の緊張を高めかねない、また日米に対するけん制でもある大規模軍事演習。中国は、これからも事あるごとにこのような軍事演習を実施して行くに違いありません。
 こうした中で、我が国としては、軍事大国を自認する覇権主義的な中国の意図と行動を冷静に把握・分析し、自重を求めて行く常日頃からのしたたかな外交努力&防衛外交努力の展開が不可欠です。抑止力・対処力を備えた防衛力の整備努力と相俟って、欠くことの出来ない国としての不断の責任です。
 木原防衛大臣「防衛省としては、関連の動向について重大な関心をもって注視をしている・・・台湾をめぐる問題が対話により解決されることを期待するというのが、我が国の従来からの一貫した立場・・・中国は、我が国周辺全体での活動を活発化させるとともに、台湾周辺での軍事活動も活発化させてきている・・・引き続き関連の動向を注視するとともに、我が国周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期してまいる所存」(5月24日記者会見抜粋)
 上川外務大臣「中国側の関連の動静については、政府として、強い関心を持って注視している・・・中国側に対しては、我が国の懸念を伝達した・・・台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要である・・・台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来からの一貫した立場・・・台湾海峡の平和と安定の重要性につきましては、引き続き、中国側に直接しっかりと伝えるとともに、米国を始めとする同盟国・同志国と緊密に連携しながら、各国共通の立場として、明確に発信していくということが重要である・・・今後共、こうした外交努力を続けてまいりたい」(5月24日記者会見抜粋)
 米国務省は5月25日に声明を発出し、米国がこの度の軍事演習を深く憂慮していることを表明「The United States is deeply concerned over the People's Liberation Army joint military drills in the Taiwan Strait and around Taiwan.」するとともに、中国政府に強い自制を求めています。「We strongly urge Beijing to act with restraint.」
 5月31日から6月2日にシンガポールではアジア安全保障会議が開催されます。同会議出席に合わせて、米国国防長官は、同盟国や同志国の国防責任者のみならず中国国防大臣とも二国間会談を予定していると伝えられています。
 現下のような厳しい国際軍事情勢下にあって、こうしたマルチの会議出席の機会も活用しての、立場を異にする国防責任者同士の会談は、平時から相互の信頼関係を醸成し、絆をより一層太いものにして行く上で重要であることは論を待ちません。
 中国、台湾に最も近い地政学的位置に在り、台湾海峡問題の影響をストレートに受ける我が国こそ、こうした貴重な機会を逸することが無いよう、独自の防衛外交を展開することを願って止みません。
 それは、一段と厳しさを増す我が国周辺の軍事情勢の中にあって、いかなる事態が生起しようと国民の負託に応えて行くため、使命の完遂・練度の向上に不退転の決意で取り組んでいる全国の自衛隊員の皆さんとの一体化でもあります。
 ところで、そんな自衛隊員の皆さんにとっても、先月の母の日(今年は5月12日)に比べると、正直、影がかなり薄いと思われる父の日が間もなくやって来ます。6月の第3日曜日・今年は6月16日(日)。
 皆さんのお父さんは、どんなお父さんでしょうか。
  "「お父さん(おやじ)元気でね!」と私(僕)が言ったから6月16日は父の日" (俵万智さんのサラダ記念日参考)

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


レンジャー訓練実施中
最強戦士目指し
<14旅団>
 第14旅団(旅団長・大場剛陸将補)は、旅団レンジャー集合教育を実施中だ。
 本教育は、第15即応機動連隊長(連隊長・徳淵文雄1陸佐=善通寺)を担任官とし、体力、水泳、身体能力検査の厳しい基準を突破した隊員が陸上自衛隊の中で最も厳しいとされる訓練に自ら志願し、約3カ月にわたり困難な状況を克服して任務を達成するための能力を身につけていくものである。
 基礎訓練では、険しい山地への潜入に必要な山岳登はん技術やヘリコプターを使用した潜入に必要なリぺリング降下要領、水辺からの潜入に必要なボートの漕舟技術などレンジャー隊員として必要な知識・技術などを身に付けるとともに、体力調整などを通して疲労困ぱいの状態でも任務を達成し得る強靭な体力と気力を身につけた。
 基礎知識及び技術を身に付けたレンジャー隊員の卵たちは、レンジャーき章という光り輝くダイヤモンドを獲得し最強戦士となるべく、次のステップである行動訓練へと駒を進めた。今後は、睡眠・食事などが制限され極限状況のなかで行われる行動訓練に、これまで助け合い信頼する同期とともに挑んでいく。

MFO司令部要員
出国報告
 5月13日、シナイ半島でエジプト・イスラエル間の停戦監視等を行う「多国籍部隊・監視団(MFO)」の司令部(エジプト北東部)に約1年間派遣される陸上自衛官4名が、森下泰臣陸上幕僚長に出国報告を行った。森下陸幕長は「日本人として誠意・真心を持って業務に従事してほしい。それが仕事の確実性と相まって日本に対する信頼感を向上させる」と要望。また隣国イスラエルでのガザ紛争が継続していることから、「十分注意するように」と伝えた。派遣要員の抱負は以下のとおり。
・森竹辰哉2陸佐(連絡調整部計画担当副部長)
 これまでの海外勤務を含む経験を活かし、上司ともしっかりコミュニケーションとり、日本国陸上自衛隊としてのプレゼンスを発揮したい
・二宮寛3陸佐(連絡調整部計画運用幹部)
 多国籍であるMFO司令部幕僚として、他国の同僚と協調性をもって調整等を実施し、MFOの任務遂行に寄与したい
・山田佳弘3陸佐(後方支援部施設幹部)
 これまで勤務で培った施設科職種としての知識・技能を思う存分発揮して、日本国陸上自衛隊の施設技術力の高さをアピールし、更に日本国への信頼感を向上させたい
・森雅昭1陸曹(後方支援部施設課員)
 後方支援部施設課員の同僚と協力し勤務に邁進したい。また、施設科隊員としてこれまでに培った施設に関する知識を思う存分発揮したい
 自衛隊はMFO司令部には平成31年から毎次2名、令和5年からは4名に増加して派遣しており、今次で述べ16名の派遣となる。

予備自衛官等制度が70周年

 予備自衛官等制度は7月1日に発足70周年を迎える。5月23日から27日の間、東京市ヶ谷等において祝賀行事や表彰、中央訓練等が行われ、全国から選抜された60名の予備自衛官等が参加した。

災害派遣で活躍
年齢制限等の緩和で充足率向上へ

 予備自衛官等は普段は社会人・学生としてそれぞれの職に就きながら、年間決まった日数の訓練に応じ、有事や災害等のいざという時は自衛官として活動する。制度には、主に後方支援の任務に就く「予備自衛官」、第一線部隊の一員として活動する「即応予備自衛官」、自衛官未経験者を予備自衛官に教育する「予備自衛官補」の3つからなり、年間の訓練日数等や処遇が異なる。平成23年の東日本大震災での初招集以来、今年1月の能登半島地震まで8回の災害派遣活動に従事する等、戦後最も厳しい安全保障環境において予備自衛官等に対する期待は高まっている。防衛省も年齢制限や訓練期間の緩和、雇用企業に対する補償の充実を図り、予備自衛官等の充足向上を目指している。

国民との架け橋に

 24日、防衛省では表彰式や講話が行われた。表彰式では、防衛大臣表彰(予備自衛官としての勤続年数が30年以上)10名と陸上幕僚長表彰(同20年以上)10名がその功績を称えられた。
 森下泰臣陸幕長は訓示冒頭で、本職が多忙の中で招集訓練に応じる予備自衛官等に対して敬意を表した。また、「国民と陸上自衛隊の架け橋たれ」と要望、「予備自衛官として自らを鍛練する傍ら、雇用企業等で活躍することが国防に対するより多くの理解者を得ることができる」と述べた。
 同日午後からは能登半島地震における災害派遣に、実際に従事した即応予備自衛官と予備自衛官による講話が行われた。「現場に行かないとわからないことがたくさんある」「被災者のお役に立てた」等と活き活きと話す姿に、聴講した予備自衛官等の士気も上がったようだ。(講話を行った2名のインタビューの様子は次号でお伝えします)

予備自衛官等制度のあゆみ

昭和29年7月 予備自衛官制度発足
  45年5月 海上自衛隊で制度導入
  61年12月 航空自衛隊で制度導入
平成5年3月 女性予備自衛官採用開始
  10年3月 即応予備自衛官制度発足
  14年3月 予備自衛官補制度発足、予備自衛官の災害招集の導入
  16年6月 国民保護等招集の導入(予備自衛官・即応予備自衛官)
  23年3月 初の災害招集(東日本大震災)
  28年4月 2回目の災害等招集(熊本地震)
  28年5月 海上自衛隊に予備自衛官補制度導入
  30年7月 3回目の災害等招集(7月豪雨)
  30年9月 4回目の災害等招集(北海道胆振東部地震)
令和元年10月 5回目の災害招集(台風19号)
  2年2月 6回目の災害招集(新型コロナウイルス)
  2年7月 7回目の災害招集(令和2年7月豪雨)
  6年1月 8回目の災害招集(能登半島地震)
  6年1月 予備自衛官補の採用時年齢要件を34歳未満から52歳未満に緩和


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