防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
spacer
防衛ホーム
spacer
home
spacer
news
spacer
購読
spacer
2024年 INDEX
7月1日
6月1日 6月15日
5月1日 5月15日
4月1日 4月15日
3月1日 3月15日
2月1日 2月15日
1月1日 1月15日
2022年 2023年
2020年 2021年
2018年 2019年
2016年 2017年
2014年 2015年
2012年 2013年
2011年 2010年
2009年 2008年
2007年 2006年
2005年 2004年
2003年 2002年
2001年
-
スペーサー
自衛隊ニュース   1123号 (2024年5月15日発行)
-
1面 12・13面 17面 18面 20面 21面 22面 23面 24面

令和6年度
防衛基盤整備協会賞候補募集中
ー前年度受賞4項目を紹介ー

 (公財)防衛基盤整備協会(理事長:鎌田昭良)は、令和6年度防衛基盤整備協会賞の候補の募集を次のとおり開始した。同賞は、防衛装備品等に関連し、防衛装備庁の後援を受け、民間で自主的に行われた研究開発あるいは生産技術等の向上及び防衛装備品等の実現に参画した下請負、協力企業等が保有する代替困難な特殊技術、部品、製品等について、特に優れた業績を挙げた技術・研究者の個人又はグループに対し、その努力を賞揚するとともに、この種の研究活動及びサプライチェーンの維持及び発展に貢献した活動を一層奨励することを目的として贈呈するもの。受賞件数は昨年度までに233件に及ぶ。
応募期間 4月1日(月)から6月7日(金)
表 彰 等 表彰状及び賞金100万円
応募方法 (一社)日本防衛装備工業会、(一社)日本造船工業会及び、(一社)日本航空宇宙工業会を通じ、または当協会に直接申し込みすることができます。詳しい内容及び申込用紙等は当協会HPから入手可能です。
https://ssl.bsk-z.or.jp/

問合せ先 公益財団法人
 防衛基盤整備協会総務部業務課
 TEL.03-3358-8754
 FAX.03-3358-8752
 E-mail:soumu-g@bsk-z.or.jp

後援 防衛装備庁
主催 公益財団法人防衛基盤整備協会


日本電気株式会社
三波工業株式会社
横浜ゴム株式会社
UNICORN 複合通信空中線
(NORA- 50)の開発

 令和5年度の防衛基盤整備協会賞に輝いた「複合通信空中線(NORA- 50)の開発」は我が国の海上防衛力の強化に大きく貢献する技術である。これまで艦艇のマストに配置されている個々の空中線群を相互干渉のない最適配置、RCS低減、耐雷性確保、整備性向上、ぎ装簡略化などを考慮して1つの空中線システムとして統合することを目指して開発されたものである。開発は日本電気株式会社を主契約者として三波工業株式会社、横浜ゴム株式会社の各技術と長年のノウハウを結集して行われた。

 NORA-50(通称UNICORNはUNIfied Complex Radio aNtennaの略称)の構成は図のとおりである。これまでマストで一番優位な位置を占めざるを得なかったTACAN空中線の形状を従来の円盤型から、艦載用としては世界的に例のない中空のドーナツ型へと変更しマスト下方に配置。それにより、ES空中線をマストトップに配置することができ、脅威が発する電波の最大探知距離向上に貢献した。さらに各空中線や支柱の形状についても、RCSシミュレーションから導いた最適形状としたことでUNICORNの低RCS化を実現し、結果、搭載プラットフォーム全体のステルス性能向上に大きく寄与している。また、装置全体をレドームで覆うことで耐候性を向上させるとともに、従来の避雷針から航空機用の耐雷部品としても実績のあるダイバータストリップをレドームに装着でき、空中線の電波視界や電波透過性に影響を与えることなく、内部機器を雷撃から保護している。
 艦艇へのぎ装においても、従前のように各空中線メーカーが各自の製品を建造所に納入し、一つ一つ装備していく方法ではなく、8つの空中線が組み込まれた本装置を艦艇上部に搭載するのみで装備が完了するため、作業面、工程面においてぎ装の簡略化を実現した。

 UNICORNの開発は平成27年度にさかのぼる。当年度に護衛艦搭載空中線の統合化実現可能性についての勉強会や基礎資料作成などを行い、平成28年度から2年間にわたり空中線統合化に向け空中線同士の電波干渉の影響、質量バランス、被雷をはじめとする耐環境性の検討及びそれらの仮作・試験評価をおこなってきた。平成30年度には、防衛装備庁と2式分の量産契約が締結され、令和2年度に初号機が海上自衛隊に納入された。以降「もがみ」型護衛艦の建造計画に伴い、年間2式ずつ令和5年度までに合計8式が納入される。
◇◇
 受賞にあたって3企業は、引き続き協力体制のもと、今後も継続的に製造を行うとともに、将来ビジョンとしてカスタマイズ性に重点を置き顧客や艦艇の運用ニーズに合わせた空中線に仕様変更する等のバリエーション化にも対応していくとしている。


川崎重工業株式会社
艦艇用主発電機ガスタービン(M7A-05)の開発
【護衛艦「まや」採用】
 川崎重工業は「将来護衛艦はハイブリッド電気推進を経て統合電気推進化へ向かわせたい」との防衛省の要望に沿うべくまた、さらなる電力要求の増大にも対応できるよう国内外で多くの販売実績を持つ産業用純国産ガスタービンM7Aの舶用化に着手し、平成25年度に6千キロワット級の艦艇用「M7A-05」型を開発完了、護衛艦「まや」、同「はぐろ」に採用された。
 艦船に搭載される主発電機は艦内のライフラインの要であり、艦の行動に即した安定的な電気の供給に柔軟に対応できる必要がある。
 また、振動、騒音が少なく、負荷変動に対する周波数安定性が高いという特性を生かし、ガスタービンを駆動源とした発電装置は52DD以降の艦船において採用が拡大され、川崎重工業はこれまでに150台以上の発電装置を艦船に供給してきた。
【供給電力飛躍的に増大】
 艦船により必要とされる電力量は異なるが、新型艦になるたびに所要電力量は拡大基調にあり、当初、52DD型等では1台当たり千キロワットクラスだったガスタービン主発電機は16DDH「ひゅうが」で2400キロワットまで増大された。
 さらに27DDG「まや」ではハイブリッド電気推進が採用され、推進用電動機が必要とする電力も主発電機が賄うようになったことにより、6千キロワットまで飛躍的に増大した。
【全社の技術結集し開発】
 本ガスタービンは、信頼性の高い川崎重工業の産業ガスタービンの技術をベースに航空エンジンを含む全社の技術を結集して開発完了した。
 航空転用型ガスタービン発電装置に比較して大幅な低価格化を実現し、艦建造費用低減にも寄与した。
 またTBO(Time Between Overhaul)の延伸による整備費用の低減を達成することで、装備化から運用費に至るまでのライフサイクルコストを低減することができた。
 舶用化開発では、海上雰囲気、艦船用燃料、傾斜・揺動、耐衝撃、起動性能、冗長化、艦内での整備性などさまざまな開発・設計変更を行い、艦船での使用に適したものとするとともに、艦艇用のサイクル耐久運転試験にて性能維持や耐久性を確認した。
 初採用のガスタービンエンジンであり、防衛省に安心して採用・使用してもらえるよう日本海事協会(NK)、米国船級協会(ABS)の型式認証も取得している。
 主発電機は決められた時間(TBO)を運用後予防保全を目的とした開放検査(オーバホール)を実施している。TBOが長ければ長いほど開放検査をする回数が減り、稼働率が向上するとともにライフサイクルコスト低減に大きな効果をもたらす。
 M7A-05は、最新の設計手法により導入当初から既存機種より長い1万2千時間のTBOを設定しており、稼働率向上及び費用低減に寄与することができる。
【純国産で安定運用も】
 また、M7A-05はM1Aシリーズの主発電機ガスタービンと同様、純国産であり、海外製主発電機に比べて部品を安価かつ安定的に供給可能であることも、艦の安定運用に欠かすことができない重要なファクターの一つとなっている。
◇◇
 川崎重工業は、防衛整備基盤協会賞受賞に対し次のコメントを発表している。
 このたびは「艦艇用主発電機ガスタービン(M7A-05)の開発」に対し、防衛整備基盤協会賞という輝かしい賞を頂き大変光栄に存じます。
 本開発は防衛省殿、防衛装備庁殿、建造所殿及び関連する企業をはじめ多くの皆様からの多大なるご指導・ご支援がなければ成しえなかったものであり、改めて深く感謝申し上げます。
 本開発で得た経験を生かし今後も防衛基盤の強化・発展に貢献すべく、よりよいものづくりに邁進してまいりますので、一層のご指導・ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

川崎重工業株式会社
住友精密工業株式会社
低雑音型油圧管制弁の開発
【求められる潜水艦の静粛化】
 潜水艦の建造会社である川崎重工業株式会社と、艦艇向け油圧機器の設計・製造において実績を有する住友精密工業株式会社が、社内自主研究により開発した「低雑音型油圧管制弁」が「令和5年度防衛基盤整備協会賞」を受賞した。潜水艦では被探知防止の観点から、艦外放射雑音の低減による静粛化が求められている。潜水艦には油圧により作動する機構が多く採用されており、両社で開発した「低雑音型油圧管制弁」の採用で、これらの作動音低減による潜水艦の静粛化、さらには艦の能力発揮が大きく期待できる。
【比例電磁方式の活用で従来の課題を克服】
 従来の油圧管制弁は、まずパイロット弁と呼ばれる小型の弁を切換え、一定のパイロット圧によって主弁を切換える方式で、動作速度を主弁開度に応じて任意に設定できない構造だった。油撃の発生を防ぐため、パイロット弁を流れる作動油の流量を絞る必要があるが、絞りすぎると油圧シリンダの作動開始が遅くなり、機器の応答性が悪化するため、調整に限界があるのが課題であった。
 そこで、油撃を低減しつつも、応答性の悪化を最小限にすべく、比例電磁方式を活用した油圧管制弁の開発を行った。比例電磁方式はパイロット弁が減圧弁となっており、任意の圧力まで減圧したパイロット圧によって主弁を切換える方式であるため、主弁開度に応じた任意の動作速度に設定できる構造である。これにより、油圧回路の切換えに際して細やかで精度の高い調整が可能となった。
 しかし、潜水艦で使用するために必要な応答性を確保するため、主弁開度の動作速度を開度により変える必要があった。この課題に対しては、2種のばねを使用することで対応。パイロット圧に対する主弁開度の応答性を調節する機構(特許技術)を採用し、必要な応答性を満足しつつ、油撃の原因である流量変化及び機器作動時の衝撃を小さくすることを達成した。
【置換えが容易な仕様と小型化で実艦に採用】
 比例電磁方式の適用にあたっては、既存機器の改造及び系統の大幅変更を不要とし、従来型管制弁からの置換えが容易となるよう考慮した。制御システムについては、制御装置等の機器を別途増設する必要が無いよう、耐衝撃性を備えた専用コントローラを管制弁に内蔵することとした。また、形状についても、インターフェースを従来型管制弁と共通化し、既存の装備スペースの範囲で装備が可能となるよう、管制弁の小型化を図ることとした。
 試験を繰り返し完成した「低雑音型油圧管制弁」は、防衛省でもその性能向上が認められ、建造中潜水艦での採用に至った。
【開発の成果 まとめ】
(1)比例電磁方式を活用した管制弁開度制御システムの構築
 比例電磁方式を活用した油圧管制弁及び専用コントローラの開発により、油圧シリンダ作動開始及び停止時の雑音低減に最適化した管制弁の開度制御システムを構築した。これにより、油撃による圧力変動の大幅低減及び油圧機器作動音の低減に寄与した。
(2)既存の装備スペースに装備可能な小型比例電磁弁技術の確立
 専用コントローラを内蔵し、かつインターフェースを従来型管制弁と共通化できる小型比例電磁弁の技術を確立した。これにより、すでに搭載されている油圧管制弁からの置換えを容易とし、装備に必要な付帯工事の極小化に寄与した。
◇◇
 住友精密工業と川崎重工業の担当者は「我々が長年培った潜水艦建造技術、油圧制御技術を応用することで、油圧系統に起因する雑音の低減に寄与することができたものと考えております」としている。

三菱重工業株式会社
AAM-5Bの開発
 三菱重工業株式会社が主契約者として研究・開発・量産に携わった「AAM-5B」は、航空自衛隊の戦闘機に装備し、航空優勢を確保するために使用する空対空ミサイルだ。現有装備「AAM-5」からの能力向上を図るべく、平成23〜26年度に航空幕僚監部の要求を受け、防衛装備庁にて試作開発され、平成26〜27年度の技術試験、平成27〜28年度の実用試験での評価を経て、平成29年度から装備化が開始された。(AAM‥Air to AirMissile)
【開発の経緯】
 「AAM-5B」が研究・開発・量産された背景として、近年の以下3点の状況変化への対応が挙げられる。
(1)航空自衛隊殿における空中給油機の本格運用に伴う戦闘機の長時間運用への対応
(2)敵戦闘機のIRCM※1向上への対応
(3)より確実に敵を捕捉するための背景識別能力の向上
※1:Infrared Countermeasures(赤外線妨害手段)
 現有の「AAM-5」はシーカ冷却持続時間が短く、戦闘機の長時間運用に対する制約となっていた。また、現有の赤外線画像シーカでは、原理的限界から、単純な背景の青空と比較して、雲がある場合や複雑な背景下では目標捕捉能力が低下するとともに、敵戦闘機のIRCM向上に有効に対処できないことが見込まれた。さらに諸外国にて実用化された類似装備品では防衛省の要求性能を一部満足できないことから新たな空対空ミサイル「AAM-5B」を研究・開発・量産することとなった。
【蓄積した技術を活用】
 「AAM-5B」は、これらの必要性に合致し、近年予想される敵戦闘機との目視可能距離内での空対空戦闘に有効に対処できるミサイルを実現したものだ。この開発においては、三菱重工業が平成23年前半にかけて事前に研究し蓄積してきた以下のような技術も活用されている。
(1)シーカ冷却持続時間の延長
 冷却方式の改良により、シーカ冷却持続時間の延長を可能とした。
(2)IRCCM※2能力の向上
 赤外線センサの改良により、フレア等のIRCMに欺瞞されず、敵戦闘機を捕捉し続けることを可能とした。
※2:Infrared Counter Countermeasures(赤外線妨害対抗手段)
(3)背景識別能力の向上
 同じく赤外線センサの改良により、複雑な雲背景下においても目標を見失うことなく、安定して目標を識別することを可能とした。
【H29年度末から装備化開始】
 「AAM-5B」は、開発及び実用試験の評価を経て、平成29年度末から量産・装備化が開始された。令和4年度末までに4期分(C-1)〜(C-4)の契約まで納入が完了し、現在5期以降の生産を継続中。令和3〜4年度にかけて、量産序盤3期分(C-1)〜(C-3)の品質確認試験(発射を含むフライト試験)が実施され、良好な品質であることが確認された。これにより、優れた性能及び運用性を有する「AAM-5B」の実現が確固たるものとなった。

NEXT →
(ヘルプ)
-
shop
-
マスク
-
日本の機甲100年
通販部
10
Copyright (C) 2001-2024 Boueihome Shinbun Inc