6月9日、第27期自衛官候補生約400名と第20期一般空曹候補生約200名を対象にした精神教育を航空自衛隊熊谷基地(司令・津曲明一空将補)にある第2教育群(司令・内康弘1空佐)は行った。(第27期自衛官候補生は7月13日に、第20期空曹候補生は7月24日に卒業した)
愛国の叫び『留魂録』
昨年11月に続き2回目の講話によるこの教育は、「英霊の思いを語り継ぐ=声無き声、愛国の叫び=」と題して、陸上自衛隊富士学校長や中央即応集団司令官等を歴任した山本洋氏により行われた。同氏は、松江護國神社 禰宜 工藤智恵氏の「祖国のために死力を尽くして戦われた英霊の思いを伝えていきたいと思う様になったのは『留魂録』(航空56期生が航空士官学校を卒業するにあたりそれぞれが祖国を護る決意を記した文集の事)をご遺族さまから頂いた時です。私が手にした『留魂録』は空色の表紙も痛み、茶色に変色したページは触るとはらはらと崩れ落ちてしまいそうで、その中から未だに彼らの愛国の叫びが聴こえて来る様に思いました。この『留魂録』の姿は戦争の記憶が風化してしまうと私に焦燥感を抱かせました。英霊たちの尊い御心を伝えるためにできる限りの全ての事をしたいと思っています。英霊たちの思いを現在日本をお護り下さっている自衛隊の皆様にお伝えすることも神職の役割の一端ではないかと思っています」という思いに共感し、英霊の思いの万分の一でも語り継ぎたいと活動されている。
若き航空将校の最後の声
「耳と心を澄ませて聞いて下さい。命と向き合う国を愛する心を感じて下さい。そして、講話が終わった後、心の底から静かにゆっくりと湧き上がる清浄な感覚が体中に漲るのを感じ、黙々と自衛官としてやっていこうという気持ちになってくれたら嬉しいです」と講話が始まった。特攻隊指揮官5名を含む7名の若い航空将校の最後の声を淡々と本当に淡々と朗読していった。そして「戦史を学びその理解の上に立って、個々の追悼録に触れ、追悼施設を訪れ、英霊の声に耳を傾け、英霊の思いを語り継いで頂く事を切に望む次第です」と中締めた。
次いで、「『自衛官の心構え』の最初の項目である『使命の自覚』には『祖先より受け継ぎ、これを充実発展せしめて次の世代に伝える日本の国、その国民と国土を外部の侵略から守る』とあります。英霊が守ろうとした日本も皆さんが守ろうとしている日本もどちらも同じ日本です」等と英霊が愛してやまなかった我が国日本、命を賭して護りたかった日本、世界に誇る素晴らしい祖国日本とその精神について話をした。そして、「歴代天皇の祈りや教え等天皇の祈りに守られている事」や「外国人が賞賛する日本」の話の後には長い我が国の歴史の中で脈々と受け継がれ、英霊の心の中に顕現した「精神性」について話をした。
最後には英霊の崇高な愛の精神、その美しい精神を顕彰したいと元伊勢神宮禰宜河合真如氏が作詞された「護国の桜」が流れた。配られた資料にある歌詞を追っている姿も多く見られ、山本氏の朗読が染みていると感じることができた。
「世界に誇る素晴らしい国、日本。愛する祖国日本のために若い命を散らした英霊の声に思いを馳せながら、自衛官の道を使命感を持って黙々とそして堂々と歩んで頂きたい、そして英霊の思いを後世に伝えてもらいたいのです」と締めくくった。聴講後に内第2教育群司令は「学生と同年代の若き英霊が日本国の平和と独立を守り抜いてきた活動等から、使命感を感じ取ってくれたものと思います。学生は、その気概を受け継ぎ、今後の様々な試練や困難等を乗り越え、国民の期待に答えてくれることを期待しています」と述べた。
「強い責任感を持って職務遂行したい」
以下聴講所感文抜粋
・講話の最後に聞いた「護国の桜」という曲が印象に残った。日本桜というテーマが大きく取り上げられていて春の美しい情景がイメージできた
・国を守る人として、人、物、文化を大切に思う気持ち、自分を犠牲にしてまでも立ち向かおうとする気概の重要性を改めて学び、任務遂行の際の根幹になる考え方だと思った
・死が確実な作戦に赴くのにも関わらず、勇ましい遺書を書くことができる特攻隊員の凄まじい覚悟に言葉を失った
・「ぶつかるまで目を瞑るなよ」という出撃時の最後の言葉を知り、日本人として自衛隊員としての誇りを感じた。私も愛国心を大切に、責任感を持って任務を遂行したい
・自衛隊という組織に入隊した意味を考え、防衛や国際平和に関心をより強く持ち今後の生活に活かそうと考え直すきっかけになった
・今まで自衛隊は「国を守る戦える公務員」という認識だったが、本講話のお陰で「先人たちの思いと誇りを引き継いだ誉れある仕事をしている者」と見ることができるようになった
・英霊たちが命をかけるほど日本は素晴らしい国であると再認識した。愛国心がなければ国は続かない。英霊が愛したこの国を自分も愛国心を持って大切にしていこうと思った
・進藤俊之陸軍中尉の、国や家族を想う家族に宛てた絶筆に私は講話中、涙を流した
・今まで特攻隊員は「天皇のためなら・指揮官の命令なら死ねる」という正直頭のネジが外れている人なのだと思っていたが、今回の講話でそうではないと知った。「国のためなら・平和な日本になるためなら」と強い気持ちが伝わった
・我々の出来る最大の感謝として、先人たちの命の上に成り立つ日本国を守るという強い責任感を持って職務の遂行をしたい
・自衛官はいざという時に、国民、家族、自分を守れるような日々の訓練から覚悟を持って取り組まなければならない、命を懸ける仕事なのだと実感できた
・先の大戦から現在まで語り継がれた英霊の方達の思いや航空自衛隊が継承すべき陸軍航空の精神・偉人達の日本に対する考えかたを学んだ
・先の大戦や特攻を漠然とした知識で知ったつもりでいたが、今回彼らの遺書や指揮官の記録を読むことで言葉でなく心で理解することができた
・生き残った同期生達の追悼録は、とても印象深かった
・「任務遂行」入隊してから何度も聞いた言葉だが、今までは意味もなく暗記しているだけだった。だが「任務遂行」に命を懸ける英霊の話を聞き、この言葉の意味と重みを初めて認識した
・今の私からは考えられない様な任務や特攻に対する志に、私の存在がとても小さく感じられたが、「英霊が護ろうとした日本も皆さんが護ろうとしている日本もどちらも同じ日本です」という言葉に奮起させられた |