7月10日から28日まで、統合幕僚学校国際平和協力センターは同センター施設(市ヶ谷)において「第12期国際平和協力上級課程」を行った。本課程はPKO等の国際平和協力活動等に従事する上級部隊指揮官や上級幕僚として必要な知識・技能を修得するために平成24年から始まったコース。今期は1佐から3佐の自衛官7名(陸4名・海1名・空2名)が参加した。また同26年からは国外の軍人や他府省庁職員等も受け入れており、17日からの第2部にはフィジー、ヨルダン、ケニア、ニュージーランド、タイ、トンガ、ベトナム、ザンビアから9名の留学生(大・中・少佐)が加わった。
上級課程として初めてセンター職員が各国教官と共に英語で講義
第2部の講義は米国国防省の教育機関に委託、豊富な専門知識や経験を有する退役軍人等が行ってきたが、今期では初めてその一部が、国際平和協力センターの日本人職員6名と共同で実施された。もちろん、講義や討議は全編英語だ。同センターの教育・研究室長の有馬敬晶1空佐は「PKO分野で日本が貢献できる重要なアイテムのひとつが教育です。ここを積極的に進めるためにも我々日本人が教官として教えていくことが大事です」とその狙いを説明する。
第2部入校セレモニーで、統合幕僚学校長の二川達也海将は「本課程を通じて意見交換をし、知識を深め、そして世界各地から集まった学生、教官と友情を深めて頂きたい」と学生たちを歓迎。第2部を担当するISG(Institute for Security Governance)のキャリー・オコーネル氏は「教官と各国学生との討議は、PKOの現場に存在する問題を認識するとともに、その解決のための糸口を得るための貴重な場となる」と挨拶した。
受講生の声
学生のひとりでセンター職員の宮本綾子2陸佐は、過去に国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)司令部要員(兵站幕僚)としての経験があり、今後も国連に関わる業務を希望している。「日本人として留学生とのディスカッションを引っ張っていきたい。課程修了後は、ここで得た経験をセンターに還元しつつ、PKOに携わることができたら活かしていきたい」と意気込みを語った。
ゴラン高原でのPKO(UNDOF)等で会計職員として帯同した経験を持つ平山光太郎2空佐は、「他国の実情やキャビアート(国連の活動参加への制限事項)が国ごとに違う。そういった実情を学びたい」と抱負を語った。また「国際業務に携われる枠は狭く、行けなかったとしても本課程を通じて現場を知ることで予算編成や、現地で活動する人の隊務改善に活かしたい」とも述べた。
なお、2人とも英語は堪能だが、全編英語による課程であることはもちろん、多国籍の軍人等とコミュニケーションをとるため英語を学び直した。課程を通じて実際の勤務に近い環境に身を置き、国際感覚を養うことができるのも本課程の醍醐味だ。
日本人教官の声
一方、全編英語の第2部で教官を務めた自衛官に講義を振り返ってもらった。
「PKOCCC※」で「児童の保護」に関する講義を行った主任研究員の中桐章之2海佐は、「約1時間でPKOにおける児童の保護の重要性、法的枠組み、関連安保理決議、紛争下における児童への人権侵害の現状及び遵守するべき原則等を教育しました。留学生を含めた学生の反応を見つつ重要なポイントについては学生に問いかけながら、学生の様々な視点からの意見を共有することにも心掛けました」と振り返った。
同じく「PKO活動における行動と規律」を担当した研究員の淡路大介2空佐は、初めての英語による講義がしっかり伝わるか不安を抱えていたが、「私からの説明及び留学生からの質問において、お互いが努めて簡潔明瞭な表現に着意することで、当該科目の目的を達成し得たものと思います」と手応えを感じたようだ。(* PKO Contingent Commanders Course)
世界で活躍できる要員の育成で国際平和に貢献
国際平和活動における自衛隊の評価は非常に高い。先日、防衛省を訪れたアトゥール・カレ国連活動支援担当事務次長も賛辞を惜しまなかった。同課程について前出の有馬1空佐は、「様々な文化や経験を有する学生同士が互いに切磋琢磨し、我々からも英語で発信を行う。教育分野において世界で活躍できる要員の育成をすることが、国際平和の寄与に繋がる」とその意義を強調した。 |