防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   1042号 (2021年1月1日発行)
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読史随感
神田淳
<第68回>

日本文明について

 日本国史学会代表理事で美術史家の田中英道は、フィレンツェでイタリアの高名な人類学者のフォスコ・マライニー(1912-2004)にこう言われた。「日本には大変なショックを受けました。日本は私を目覚めさせたのです。西洋人のキリスト教や古典学に依拠しないで、立派な文明をもっている国が、そこにあったからです。どちらを向いても道徳的一貫性、正義感、精神的な成熟さを示す人々に出会うことができました。そこで、西洋のキリスト教が最高の宗教ではなく、相対的、歴史的な存在だと知らされました。どの宗教、どの哲学も、人間の存在、時間、死、悪を説明する試みの一つにすぎないのだと。日本人は自分たちのすぐれた考えを、西洋人に向かって書物で広く知らせているわけではないけれど、日本に行ってみるとそれを実践しているのです。そうした日本という国の存在自体が、西洋に挑戦を突きつけているのです。日本という国は、その世界地図に占める小さな位置よりも、はるかに大きな存在なのですーーー」と。
 フランス文化、イタリア文化をはじめとする西洋文化の研究者だった田中氏はその後日本文化の研究を始め、日本と外国との比較を通して理解される日本文化の質の高さ、日本の歴史の独自性を『新しい日本史観の確立』、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』などで発表していった。
 民俗学・比較文明学の故・梅棹忠夫(1920-2010)は、西ヨーロッパと日本は歴史的、地理的に条件が似ていたため、文明が平行して進化したという「文明の生態史観」を唱えた。梅棹はアジア、ヨーロッパ、北アフリカを含む全旧世界を第一地域と第二地域に分ける。第一地域は西ヨーロッパと日本。西ヨーロッパと日本は、はるかに東西に離れているにもかかわらず、封建制度を経験するなど両者のたどった歴史の型はよく似ている。第二地域は第一地域にはさまれた全大陸であり、広大な乾燥地帯を含む。乾燥地帯は暴力の源泉で、第二地域は古代文明を発生させながら、この地域の歴史は破壊と征服が顕著である。梅棹は言う。第一地域は恵まれた地域だった。中緯度の温帯、適度の雨量、高い土地の生産力、豊富な森林。この地帯は辺境のゆえ、中央アジア的暴力が及ばず、第二地域からの攻撃と破壊を免れてぬくぬくと育ち、何回かの脱皮をして今日に至った、と。
 また、ドナルド・キーンは言う。「近世の初め、徳川初期のヨーロッパ人は日本を見て、日本の文化はだいたいヨーロッパの文化と同じ水準に達していると言っていました。もっと客観的に考えますと、当時の日本文化の水準は、あらゆる点でヨーロッパよりはるかに上だったと私は考えています」、「近世の日本ではヨーロッパのどの国よりも本を読む人が多く、おそらく日本の読書人口は世界で一番多かった」と。
 しかし、二百数十年後の幕末、ペリー来航によって西欧文明に直面して開国した日本は、強力な西欧文明の優越性を認め、文明開化と称してこれを学び、その導入に邁進した。それはまた日本の近代化でもあった。科学技術、医学、軍事、憲法、政治制度、経済制度、学制、哲学、文学、思想など文明にかかわるあらゆるものを西欧に学び、取捨選択して吸収した。
 現代日本文明は、江戸期の文明に比べて高度に西欧化の進んだ文明となった。しかし日本文明が西欧文明化したわけではない。日本文明が西欧文明との接触で、伝統を維持しつつ発展したのである。
(令和3年1月1日)

神田 淳(かんだすなお)
 高知工科大学客員教授著作に『すばらしい昔の日本人』(文芸社)、『持続可能文明の創造』(エネルギーフォーラム社)、『美しい日本の倫理』などがある。


令和2年度編成部隊等以上准曹士先任集合訓練
 12月3日、航空幕僚監部人事計画課は、「令和2年度編成部隊等以上准曹士先任集合訓練」をオンライン会議により実施した。
 この集合訓練は、編成部隊等以上の准曹士先任に対し、業務を実施する上で必要な知識、各種施策等を教育し、識能の向上を図ることを目的として、年に1度開催しているもの。これまでは市ヶ谷基地に招集し実施していたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、初めてのオンライン会議による集合訓練となり、全国36会場で過去最大の520名(通常の約6倍)の准曹士先任が参加した。
 集合訓練では、航空幕僚長の訓示をはじめ、准曹士先任制度及び航空自衛隊の進化に伴う施策等が説明された。また、日米下士官交流として、米第5空軍マクール最先任上級曹長を招致し、上級下士官としての責任と教育の重要性について講話を受けた。
 航空幕僚長は「准曹士先任の諸官が曹士隊員の良き先輩模範として、指揮官を補佐し、熱意をもった隊員指導で部隊の団結強化を図ってくれていることを心強く思う」と述べた。訓練に参加した隊員からは「航空幕僚長からのお言葉を直接聞くことができ、貴重な機会となった。准曹士先任に対する要望にしっかりと応え、部隊の親父やお袋として活躍することを約束する」との意見が多くあった。

オリジナルラベルのお酒が完成
<輪島分屯基地>
 この度、共済組合輪島支部では、地元酒造様にご協力いただき、基地オリジナルラベルを使用したお酒を製作しました。製作に当たっては、「カッコいいラベルを作る」「おいしいお酒を使用する」を念頭に取り掛かるとともに、「隊員みんなで一つのものを作り出そう」との考えから、隊員に対しラベルのアイディアを募集しました。
 集まったアイディアからアンケートを重ね、3種類のラベルが完成しました。ラベルには、輪島分屯基地の部隊マークをベースに日本海の荒々しさを表現する等、隊員のこだわりを具現化しています。また、お酒には、2017年全日本空輸(ANA)の国際線ファーストクラス提供酒に選ばれた「奥能登の白菊(特別純米酒)」(白藤酒造様)と、日本三大朝市に店を構え、観光客及び地元住民から根強い人気を誇る「おれの酒(純米酒)」(日吉酒造様)の2種類を使用させていただけることとなり、輪島分屯基地自慢の一品が完成しました。今後は直営売店のみならず、各酒造様においても一般の方への販売を検討しています。
 新型コロナウイルスの影響により、日本三大朝市を有する輪島市への観光客は一時減少しましたが、こんな時こそ地元の皆様と連携し、小さな取り組みですが、輪島市の活性化に寄与したいと思います。

自衛官一家の手打ち蕎麦
<入間基地>
 11月28日に開催された「航空観閲式」。
 その時に菅総理らが食した「特別会食」に出されたメニューの一つに「蕎麦」があった。
 この「蕎麦」を打ったのは、入間基地に所在する第3補給処総務課の入口知美空士長だ。
 入口士長は今、2度目の任期付自衛官として勤務している。自衛官だった父親が定年後蕎麦料理店を経営。入口士長は、育児のために退職後、その蕎麦料理店を手伝い、父親が他界した後は店主として切り盛りしていた。
 今は自衛官となっている3人の息子(長男・第1航空団基地業務群、次男・第42即応起動連隊、3男・第5地対艦ミサイル連隊)を育て上げた後、長年の「自衛官をやめなければよかった」という後悔を払拭するため、令和元年に任期付自衛官として最入隊を果たした。そして令和2年11月、航空観閲式の特別会食に「蕎麦」が採用されると知り、家業としていた入口士長が蕎麦の打ち手として採用された。長男も助手として手伝い、自衛官一家の「航空観閲式特別会食手打ち蕎麦」は完成された。

東京マラソン財団から感謝状
<航空自衛隊連合准曹会>
 11月27日、航空自衛隊連合准曹会は、一般財団法人 東京マラソン財団から感謝状を受領した。
 これは、令和2年3月に行われた「東京マラソン2020」へのボランティア支援に対するもので、新型コロナウイルスの影響により、一般ランナーの参加中止と多くのボランティア活動が縮小された中、東京近郊の市ヶ谷、十条、目黒、府中、立川、横田各基地から連合准曹会会員総勢94名が参加、感染予防を万全にし、新宿・飯田橋区間「防衛省前3km」及び銀座・有楽町区間「銀座通り2km」のコース管理支援を行った。
 なお、本大会は「東京オリンピック2020」の男子マラソン代表選考レースとして開催され、多くの観客が見守る中、大迫傑選手が日本新記録を樹立したレースである。
 東京マラソン財団事務局長の河野和久氏は「ボランティア活動が縮小される中、たくさんの自衛官に支援を頂き、無事に東京マラソン2020を終えることができた。心から感謝しています」と述べ、連合准曹会会長 杉本孝哉准空尉は「東京マラソンを成功させるため、多くの会員が参加してくれた。感謝の言葉が我々の活動の励みになる。令和3年10月開催の「東京マラソン2021」も支援したい」と応えた。

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