防衛省は昨年9月に策定した「パワー・ハラスメントの防止等に関する指針」に基づく施策を、4月1日から本格的に開始した。
防衛省では平成26年9月に、自衛隊内でいじめ等に関する事案が生起していることを重要視し、防衛副大臣を委員長とし、事務次官、人事教育局長・各幕僚長で構成される検討委員会を設置した。これまで隊員が能力を十分に発揮できるような健全な職場環境を整えるため省を挙げて取組んできている。
運用を目前にした3月24日の第4回検討委員会で、委員長の若宮健嗣副大臣は「省内の各機関において、隊員への教育の実施、相談体制の整備等をしっかりと行い、パワー・ハラスメントの防止策を強力に推進して頂きたい」と当施策への意気込みを語った。
パワハラ防止策のひとつとして、相談員の設置がある。現場の各機関の長等が、相談員(陸自約5000名、海自約1550名、空自約1900名等省全体で約8900名)を指定し、通報及び相談体制を強化する。それら監督者及び相談員に対しては、部外講師による集合教育を実施し、様々な案件に対応できるよう訓練する。今年度は9月から翌3月までの間に全国10ヵ所程度で実施する予定だ。
また、内局及び陸・海・空幕僚監部に「パワー・ハラスメントホットライン」を設置し、当事者や現場の相談員から電話及びメールでの問い合わせを受け付ける。
防衛省のHP上では、「パワー・ハラスメント事例集」を開示し、誰でも閲覧し参考にすることができる。「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「過大な要求」等行為別に分類された23の具体的な事例(判例を参照にしたものも含む)が掲載されている。今後も内容が追加・更新される予定だ。隊内で求められる「厳しい指導」と、パワハラにあたる「行き過ぎた指導」の線引きに悩んでいる隊員は、まず一度覗いてみてほしい。
一人で我慢しているだけでは問題は解決しない。パワハラに対する行動をためらわずにまずは相談員に相談してほしい。その一歩が被害の深刻化を防ぎ、他に被害者をつくらせない、ひいては健全な職場環境の確保へと繋がるはずだ。
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