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自衛隊ニュース   923号 (2016年1月15日発行)
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新年のメッセージ
防衛大臣 中谷 元
想定外の思わぬ事態には「基本」の徹底が必要不可欠
 2016年、明けましておめでとうございます。 
 自衛隊は、さまざまな場所で、国を守るための任務についてもらっています。年末年始にもかかわらず、自衛隊の各部隊においては、日夜、勤務を続けていただいており、本当にご苦労様です。
 国境付近の離島防衛。洋上での艦艇勤務。潜水艦の哨戒・監視。そして山の上で吹雪の吹きつける中でのレーダーサイトでの防空警戒。駐屯地や弾薬庫の雪の中での警衛歩哨。また、徹夜で情報を収集し、作戦・運用に活用するために分析をしている情報関係の隊員。医療、衛生、補給、通信、後方支援、地方協力本部、技術、研究分野や給与、事務、業務隊の皆さんも、地道に幅広い分野で任務を遂行していただいており、本当にありがとうございます。
 昨年、私は、陸海空の多くの部隊を訪問しましたが、そこで働いている隊員から、任務達成への熱い思いとひたむきさを感じることができました。自衛隊はプロの技術集団であり、一人一人の隊員が、多くの分野で責任を持って、持ち場を離れず、お互いに支援・協力してくれております。作業をしている誰ひとり、欠けてしまうと、自衛隊は、その使命を果たすことができなくなってしまいます。自衛隊を動かし支えているのが現場の隊員の皆さんなのです。
 昨年、国会で、平和安全法制が可決・成立しました。これは、我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化したことにより、あらゆる事態に対して切れ目のない対応を可能とするこの法律が必要となったからであります。我が国の抑止力と対処力を向上させ、国民の命と幸せな生活を守ることが目的であります。
 この抑止力とは何か。これは、相手が攻撃をしてきた場合、相手に損害を与える姿勢を示すことで、敵の攻撃そのものを思いとどまらせることであります。抑止力が機能するためには、抑止する側の防衛力が相手に正しく認識をされることが必要であり、そのためには、しっかりとした対処力を持っていなければなりません。
 防衛省・自衛隊は、様々な状況に臨機に即応できるように、防衛大綱・中期防に基づいて、より実効的な「統合機動防衛力」、この構築を進めておりますが、それをより効果的なものにしていく、このことが今年の第一の目標であります。
 第二に、昨年も、自然災害の多い1年でありましたが、自衛隊の災害への派遣では、各方面から感謝の声をいただきました。
 「ヘリでぼくとおばあちゃんをたすけてくれてありがとうございました」「ぼくは、大きくなったら、人をたすけるじえいたいになりたいと今でも思っています」
 関東・東北豪雨災害で救助に当たった第12ヘリコプター隊に、小学生の男の子からこう届いた手紙に書かれておりました。
 関東・東北豪雨災害では、延べ7,795名の隊員が、24時間態勢で、孤立者の救助やボートによる避難支援等に必死に当たってくれました。自らの危険を顧みず、人命救助に当たる隊員の姿は、多くの人々の心に刻まれており、地域の方々の心強い存在になっております。こうした相次ぐ自然災害や今後発生が懸念されている首都直下地震、南海トラフ地震といった大規模災害等への対応能力も着実に向上するよう、各種災害への対応をお願い致します。
 第三に、海外に目を向けますと、昨年は、シリア邦人殺害テロ事件やパリ同時多発テロ事件がありました。今や、一国・一地域で生じた混乱が、国際社会全体の課題となるリスクが高まっており、その対処に努めているところであります。
 自衛隊も「積極的平和主義」の旗の下、国際社会の中で顔の見える活動を行っております。アデン湾で民間船舶の護衛や警戒監視飛行を行う隊員、南スーダンで市民の生活に必要不可欠な道路の整備を行っている隊員、そして、これらの活動を様々な形で支援をする隊員。私も昨年現地で彼らを激励をいたしましたが、灼熱の太陽の下、遠く離れたアフリカの地において、汗と埃にまみれながらも、忍耐強く任務に励む彼らの姿が今でも目に焼き付いております。
 日本から遠く離れた厳しい環境の中で、日の丸を背負って、国際社会の平和と安定のために活動する自衛隊員は、まさに我が国の「顔」です。防衛省・自衛隊は、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処や南スーダンPKOへの協力を継続をするとともに、昨年大地震に見舞われたネパールでの医療活動のように、他国の求めがあれば、自衛隊の有する能力を活かした国際緊急援助活動にも積極的に取り組んでまいります。
 さて、防衛省・自衛隊は、本年も、引き続き様々な課題に取り組んでまいります。その際、何事も「原点回帰」、つまり、基本を忘れず、自分の立ち位置を失わず、基本の姿勢を保つ、このことが大切であります。自衛隊は、想定外の思わぬ事態に、緊急でとっさの対応が求められますが、その際、情報の「報告と連絡」、事故の防止、規律を守るといった「基本」の徹底が必要不可欠であります。
 2016年、今日が、今年の仕事始めとなります。今年も、今、皆さんが立っているこの場所で、原点からのスタートとなります。張り切っていきましょう。
 本年が、隊員諸君及び御家族の皆様にとって素晴らしい年になることをお祈りするとともに、隊員諸君の健康と、部隊の健全なる発展と、そして、地域の安定、我が国の平和と安全を心から祈念をいたしまして、年頭の挨拶といたします。
 本年も、よろしくお願いいたします。
  (平成28年1月4日)

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