6月1~11日、防衛省・自衛隊は「平成26年度自衛隊統合防災演習(26JXR)」=訓練統裁官・岩楓ホ統合幕僚長=を行った。指揮所演習や実動訓練に、防衛省・陸海空統合の演災南海統合任務部隊(演JTF南海トラフ)=指揮官・磯部晃一陸自東部方面総監=、在日米陸軍、各府省庁、地方自治体等計約1万人が参加した。
26JXRでは昨年度に続き、東海地震と東南海・南海地震が同時発生するM9・1、最大震度7の「南海トラフ巨大地震(同時発生)」を想定。6月2日午前9時25分の発災想定から6日午後までの4日間、ICE(指揮所訓統裁システム)等を使用し指揮所訓練を行った。
昨年度の教訓をもとに、26JXRでは「迅速な初動対応(他方面からの緊急赴援)」「関係府省庁、米軍との連携強化」を目的に、訓練の充実と進化が図られた。昨年度の実動訓練は一部だったが、26JXRでは、陸自中方計画、空自総隊計画の各種実動訓練が大規模に行われた(別表参照)。
また、指揮所訓練開始前の5月16日には、防衛省主催で内閣官房や警察庁、消防庁、海上保安庁、原子力規制庁等15関係府省庁との間で連携訓練が行われ、大規模震災発災時に足並みを揃えるため、役割分担の明確化や相互の問題認識について討議を行った。東部方面隊でも、5月27日に東京都・神奈川県・静岡県・電話各社・電力各社・東日本高速道路など関係機関との間で連携訓練を行い、発災時の関係機関との調整要領について討議した。
指揮所演習は、昨年同様、朝霞駐屯地に設置された演JTF南海兼陸災南海東方部隊の日米調整所や施設調整所、訓練統制部、指揮所訓練支援隊等が3日午後に報道公開された。公開時は発災から約28時間経過後で、人命救助の存命率の分かれ目"72時間"の真っ只中。ICEモニターには被害と部隊行動を示す赤い印で真っ赤に染まった地図が映し出され、東日本大震災を越えると想定される甚大な被害を実感させた。個々の判断が人命救助の成否に直結する時間帯だけに指揮所内の各施設は緊迫した雰囲気に包まれていた。
2日夕方に公開された増強幕僚の移動では、運用・情報・兵站機能を担う北方等の1尉~将官クラスの幕僚計数十人が空自第2輸送航空隊のC―1輸送機から入間基地に降機した。航空機による増強幕僚の実移動は昨年になかった試みで、距離の壁、組織の壁を越え互いを補い己が能力を最大限に発揮するための努力は、着実に積み重ねられている。
26JXRにおける陸自中部方面隊計画実動訓練
(南海レスキュー26として実施)
1 主要参加部隊等(参加人員数:約6330人)
【陸自】人員約5800人 車両等約1110両 航空機27機(OH―6、UH―1、CH-47J)
【海自】人員約470人 潜水艦救難母艦「ちよだ」、護衛艦「くらま」
【空自】人員約20人 航空機3機(CH―130、UH―60J)
【米陸軍】人員約40人 航空機3機(UH―60)
【その他】関係機関等(各県庁・地方自治体)
2 主要訓練内容 @滋賀県・あいば野演習場では、空自C-130輸送機と連携し物料投下訓練。A和歌山県・高知県での患者搬送訓練。和歌山では海自潜水艦救難母艦「ちよだ」、高知では護衛艦「くらま」と陸上間を陸自ヘリUH-1、米陸軍ヘリUH-60が飛行。(高知では米陸軍UH-60は天候悪化のため不参加)。B大阪府堺市では、資源エネルギー庁と連携しコスモ石油堺製油所に自衛隊のトラックが入構しドラム充填設備により石油製品を確保・搬出する訓練C三重県・久居駐屯地、大阪府・信太山駐屯地ではそれぞれ、中方隷下部隊が兵站基地を設定し北方・東北方から展開した方面後方支援隊や各補給処の受け入れる訓練
26JXRにおける空自航空総隊計画実動訓練
1 参加人数
(1)航空施設隊の増援(機動展開):127名
(2)装備品の集積:10名
2 参加部隊、訓練内容
(1)航空施設隊の増援(機動展開)
@北部航空施設隊
訓練内容:三沢、千歳→小牧へ機動展開(フェリー、陸路)、移動電源車の活用
A中部航空施設隊
訓練内容:入間、百里→小牧 入間、小松→浜松へ機動展開(陸路)、移動電源車の活用
B西部航空施設隊
訓練内容:築城、芦屋→新田原 芦屋→高知駐屯地へ機動展開(陸路)
C南西航空施設隊
訓練内容:那覇→新田原、知念へ機動展開(フェリー、陸路)、移動電源車の活用
(2)装備品の集積
参加部隊:3空団、1空団 参加装備:人命救助システム2型×1式 訓練内容:人命救助システム2型の三沢→浜松への空輸及び操作 |