3月17日、防衛大学校(國分良成学校長)は本科第57期学生及び各研究科学生の卒業式典を実施した。式典には卒業生の家族をはじめ安倍晋三内閣総理大臣、小野寺五典防衛大臣ら政務三役、防衛省・自衛隊の高級幹部、衆参国会議員や各国駐在武官など来賓多数が出席した。卒業証書及び学位記授与、学校長式辞、総理及び防衛大臣訓示、来賓代表祝辞、卒業生代表(久保翔平学生)答辞などが行われた卒業式典に続き、一般幹部候補生任命・宣誓式、観閲式、午餐会が相次いで行われた。
昨年の卒業式は冷たい雨が降りそぼっていたが今年は一転、穏やかな春の陽気。麗らかな空気の中で、せめて今日ばかりは全てを忘れ卒業の慶びにのみ浸っていたいところ、それすら許されないのが防大卒業生か。
424名の本科57期学生らを前に壇上に臨み、終始厳しい表情を崩さなかった安倍首相。訓示の中で「諸君が防大の門を叩いた4年前とは異なり、我が国の領土・領海に対する挑発が続いている」と訴えた。厳しさを増す日本を取り巻く安全保障環境を「今、そこにある危機」と、安保上の有事を「万が一の『その時』」と表現した。危機への認識。備えと心づもり。航空機不時着水「ハドソン川の奇跡」を引用し、有事に最大の能力を発揮するために鍛練の積み重ねの大切さを説いた。
4年前と様変わりしたのは日本周辺事態だけではない。日本のみならず自衛隊にとって激動の4年間だった。3・11があった。国内外、あらゆる危機に対し国民の期待は膨らみ続けている。多国間の防衛交流は加速的に進み、ソマリア沖アデン湾のPKO派遣が始まったのもこの4年の間だ。政権交代が2度。政府方針が一転し更にもう一転した。
自衛隊の存在感があらゆるシーンで高まる中、一人でも多くの優れた人材が必要とされる今、それを強く自覚しているだろう防大57期生から誕生した一般幹部候補生。激動する日本と自衛隊を見つめながら、学校長以下防大教職員の導きで無事この日を迎えた。
小野寺大臣は、実力組織の根幹を支えるのは人であるとし、「自衛隊こそ『人』を中心とした組織でなければならない。高い見識を備えた優秀な幹部自衛官が必要で、それがまさに諸君。前途洋々たる新進気鋭の諸君が自衛隊の第一線に加わることを心から歓迎する」と訓示した。陸に208名、海に101名、空に96名、新たに加わりし若き俊英たち。かかる期待は大きい。 |