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自衛隊ニュース   2008年1月15日号
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石破防衛大臣「年頭の辞」
防衛省「ルネサンス」の年に
原点に立ち返り組織を抜本的に改編
テロとの闘いのため洋上補給活動再開へ
石破大臣(右端)が今年1年の防衛省・自衛隊の発展や隊員の安全・健勝などを祈願してダルマに目入れ(1月4日、大臣室で)
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 平成20年の新春に当たり、全国各地で任務に従事している隊員諸官、あるいはネパール、ゴラン高原、クウェートに派遣されている隊員諸官、遠く南極にあって、砕氷艦「しらせ」で任務に邁進している乗組員や世界各地の防衛駐在官諸官、全国そしてまた国外各地で活躍中の隊員諸官に心から敬意を表し、一言御挨拶を申し上げます。皆さん明けましておめでとうございます。
 昨年1月に防衛庁は防衛省に移行した。爾来1年、昨年がどのような年であったか。輝かしい年であったかと言えば、必ずしもそうではなかったと思う。昨年1年、我々の防衛省に対して、いろいろな指摘や、批判がなされ、本当の防衛省のあり方とはなにか、それが問われた1年であったと思っている。我々は、国の独立と平和を守る組織である。そしてまた世界に対して、我が国の責任を果たすための組織でもある。実際に昨年1年、背広、制服を問わず、隊員諸官は、営々と努力を重ね、我が国の独立を見事に守った。そして平和を見事に守った。さらに、全国各地で発生した災害にも迅速に対応し、多くの人々の民生の安定に大きな力を発揮した。そしてまた、一昨年にはイラクのサマーワにおいても、見事に任務を達成した。さらには、現在も、イラク・クウェート間において輸送を整斉と実施し、さらには、インド洋上において世界各国の艦船に対して補給を立派に成し遂げた。そのことはいくら強調しても足りないことである。我々防衛省・自衛隊は祖国日本の独立と平和を守り、国際的な日本の責任を果たす、その任務を見事に完遂した。しかしながら、昨年発生した多くの事案は、そのこととはまた別に我々防衛省・自衛隊が国民に対してきちんと説明責任を果たしたか、そして防衛省・自衛隊のやっていることは、本当に信頼に値することなのか。それが問われた1年であった。繰り返すが、多くの事案が明らかになった。私は防衛省をお預かりする防衛大臣として、国民の皆様方に心から深くお詫びを申し上げなければならないし、そして、現場で自衛隊員の服務の宣誓通りに黙々と任務についている、そういう隊員諸官にもお詫びを申し上げなければならないと思っている。
 昨年首相官邸において、防衛省改革会議が設置された。テーマは三つである。一つは文民統制のあり方について、もう一つは秘密保全のあり方について、さらには調達のあり方について、この三つにつき、高い見地から今、議論が行われている。私は今一度原点に立ち返り、防衛省・自衛隊とは何か、これを問い直さなければいけないと決意している。我々の組織は、他の官庁と全く違うところがある。それは何か。我々の組織こそが国民一人一人にとって、最後の拠り所であるということである。一人一人の国民そして多くの組織、この国には様々なものがあるが、国民が最後に拠り所とするのは我々防衛省・自衛隊において他にないのである。さればこそ、我が防衛省・自衛隊は、この国にある、いかなる組織よりも規律は厳正であらねばならない、そして、いかなる組織よりも国民に信頼される組織でなくてはならないのである。他の省庁や、他の組織と同じでは駄目なのである。どの省庁よりも、どの組織よりも、繰り返して申し上げるけれども、規律厳正であり、信頼がおけるものであるか、私はそれを確立する1年でありたいと願っている。それは、単に精神論だけ申し上げるつもりではない。組織も抜本的に改編する、そういう議論をしていかなければならないのである。巷間よく言われるように、制服組と背広組の意識が乖離していることは厳然たる事実と私は認識している。このことにもきちんとした解決策を出していかねばならない。さらには我々、国民に対して責任を負う、直接選挙という手段によって責任を負いうる政治家が、この組織をきちんと統制できる、そのような仕組みを作っていかねばならない。私は今まで、ともすれば場当たり的な、その場しのぎ的なそういう批判を浴びることがある、そういう対策に堕した面があったのではないか、それを抜本的に今回改めたいと考えている。
 我々日本政府は、おもしろおかしくて、あの過酷なインド洋に、自衛隊を派遣したのではない。今まさしく国会において、補給活動を再開するための法案が審議中である。私は昨年も、そしてまた一昨年も、インド洋上にあって整斉と行われる補給活動を、つぶさに拝見した。体感温度が60度を超える、そして不快指数が100を超える、そういう劣悪過酷な気象環境、さらにはテロがいつどこから襲ってくるかもわからない、そういう状況、そして補給の際、船はもっとも脆弱であるということ、そのような困難を乗り越えて、我が国は補給活動を続けてきた。かつて湾岸戦争の折に130億ドル、国民一人当たり1万円にもなる、そのような資金を提供したが、殆ど評価は得られなかった。今回、我々海上自衛隊の活動は、本当に世界中から多くの評価を得た。それは、隊員諸官の日頃の訓練の賜物である。テロは、我々が価値観として尊ぶ、民主主義、人権、言論の自由、信教の自由、そして自由経済、そういうものをことごとく否定する、絶対に許してはならない活動である。さればこそ、世界の多くの国々、40にもなんなんとする国々が、このテロとの闘いに参加をしている。洋上における補給活動は、そのテロとの闘いの大きな柱をなすものである。日本の国は金さえ出せばいい、そういう国にまた戻ることがあってはならない。本当に汗を流す、危険な活動であっても諸外国と共に、共に尊ぶ価値観の元に行動する。そのようなことで大きな評価を得なければならない。テロとの闘い、そして我が国の責任を果たすために、我が国の国家としてのあり方を示すために、この活動は再開せねばならないと考えている。サマーワにおける活動も同様であった。そして、クウェート・イラク間の航空自衛隊の活動もまた同様である。我々政治が、何を隊員諸官に求めるか。それは国益であり、責任の履行である。我が国の国益を実現し、そして我が国の世界に対する責任を果たすために、陸・海・空自衛隊でなければ出来ない、防衛省でなければ出来ない、そういう活動が厳然と存在するのである。
 どうか本年も、国家のため、祖国日本のため、そして世界の国々のために厳正な規律を保って活動する、そういう自衛隊であって頂きたい。そして、任務に邁進する諸官をお支えの、家族の皆様、地域の皆様方にも心から敬意を表する次第である。昨年、多くのことがあったけれども、私達はこれをばねとして、あの時いろんなことがあったけれども、それを乗り越え、克服し、いい防衛省・自衛隊となった。のちになって、そう振り返ることが出来る、そういう1年にしたいと思っている。
 最後に1、2点申し上げたい。いろいろと情報流出事案が指摘をされている。我々が取り扱ういろいろな情報は、一歩間違えば、国の独立を損なうはおろか、世界の利益をも損なうものである。我々が取り扱う情報の中には、そのようなものが多く含まれている。隊員諸官におかれては、そのことをよく認識頂き、秘密の保全に万全を期されたい。もう1点、一人一人が、綺麗な言葉で飾るようであるけれども、思いやりを持ち、互いを尊重する、そのような思いをさらに確固たるものにする1年でありたいと願っている。我々防衛省・自衛隊は、崇高な任務を負っている。そのことに思いを致す。そのような集団である。だとするならば、周りで悩んでいる人はいないか、苦しんでいる人はいないか。周りを尊重し、大切にし、思いやりの気持ちを持たずして、国家のために、世界のために尽くすことは決してあり得ないのである。そのことにもよく思いを致して頂きたい。
 私は、最高指揮官である福田康夫内閣総理大臣の下、江渡副大臣、寺田政務官、秋元政務官とともに、諸官と心を一つにする、そういう1年でありたい、そのように決意をしている次第である。諸官に政治を信用して頂かねばならない。我々政治家はそのことをよく心しなければならない。私は昨年、あらゆる場でこのように申し上げた。「自衛隊は決して政治のおもちゃではない。」政治は、己のことしか考えていないとか、そのような思いを、諸官に決して抱かれることのないように、心していかねばならないと思っている。私達の心が諸官とともにある、そのように思って頂くべく、全身全霊をあげる所存である。
 おそらく、後世歴史家は、今の我々を、時代を変えた、というふうに評価をしていただけると、そのようにあらねばならないと思っている。我々防衛省・自衛隊は、憲法上、明らかに位置付けられているわけではない。自衛隊は軍なのか否か、そのような議論もきちんと透徹をしたわけではない。そのことの議論は、やがて、いろいろの場で行われることだと考えている。しかしながら、自衛隊が軍ではないから、それを言い訳にしてはならない、私はそのように思うものである。憲法が改正され、軍にならない限り、それはだめなのだ、そのように諦めるのは、私は敗北主義であると、そのように考えるものである。自衛隊法も、そしてまた、防衛省設置法も、もう一度、きちんと見直していかねばならない。この組織を律する、あらゆるものを、もう一度根本から点検をし、有識者会議における御議論、その結果を待ち、それを尊重しながら、私達は、自らを変える1年にしたい、そのように思うものである。そのために5年かけてもいい、10年かけてもいい、そのような寧日は、我々には許されない。この、本当に国民の関心が高まっている今こそ、我々は、重大な危機感をもって、我々の組織のあり方が、国の独立と世界の平和に大きく関わるものである、そのことを強く認識し、防衛省再生の、それをルネサンスと呼んでもいい、リバイバルと呼んでもいい、ニューボーンと呼んでもいい、防衛省が本当に防衛省たりうる、そのような1年にしたい。諸官と思いを一つにして、そのことに、邁進していきたいと思っている。
 どうか本年が、陸海空自衛隊が精強であり、そして、内局、制服、共に心を合わせ、我が国が平和であり、世界が平和に一歩でも近づけるように、諸官の一層の努力をお願いして、年頭の訓示とする。

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