雨天着隊 「半長靴25.5!」「どーだ、首きついか?」「よし、じゃあ屈伸」「肩キツイか?7Aあるな」「肩まわしてどうだ」。 初対面の営内班長が着隊者の被服適合を行う。厳しく情熱的な指導はすでに始まっていた。「ガイヒ」に「ハンチョウカ」。初めて目にする装備品が間もなく支給され、毎日身に付けることになる。 第31普通科連隊が朝霞駐屯地から横須賀市武山駐屯地に移駐して3年が経つ。少年工科学校や第1教育団、海自横須賀教育隊のある武山は、自衛隊教育のメッカの1つだ。 今日からここで全課共通の教育を受け自衛隊の「イロハ」から仕込み、各専門分野へと進む。 彼等は、「続ければ陸曹になれる」曹候補士制度により、将来は金の襟章に手が届く。 とはいえ今はまだ普通の青年だ。不安な顔、小さい声で書類の書き方を班長に質問している。これでいいのだろうか、と。