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スペーサー
自衛隊ニュース   1065号 (2021年12月15日発行)
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ノーサイド
北原巖男
感謝そして激励

 11月27日、令和3年度自衛隊記念日観閲式が、自衛隊最高指揮官岸田内閣総理大臣を観閲官に迎えて陸上自衛隊朝霞駐屯地で行われました。参加したのは、朝霞駐屯地所在の13個部隊から約1,000名の隊員。
 コロナ禍のため、例年の中央観閲式と異なりその規模は格段に縮小され一般公開もされませんでしたので、気が付かなかった国民の皆さんも多いのではないでしょうか。
 岸田内閣総理大臣はその際の訓示で、「全国25万人の隊員の皆さん一人ひとりの、強い覚悟と責任感によって日本と日本国民は守られています」と述べ、熱海の土石流災害時の行方不明者の懸命な捜索や新型コロナワクチンの大規模接種センターでのチーム一丸となっての活動、またアフガニスタンからの出国支援等に触れ、隊員に次のように呼びかけました。
 「隊員の皆さん、皆さんには、皆さんを信頼し、頼りにする1億2,000万人の日本国民がいます。国民の命と平和な暮らしを守り抜くという崇高で気高い任務を担う誇りを胸に、皆さんがより一層、鍛錬に励むことを切に望み、私の訓示といたします」
 同時に、岸田内閣総理大臣は、そんな隊員の皆さんをいつも力強く温かく支え続けている御家族に対し、最高指揮官として心からの感謝を表明されています。
 国民の皆さんは既に十分認識されていることですが、日本を取り巻く現下の安全保障環境は一段と厳しさを増しており、またこれまでになく流動化しています。
 岸内閣総理大臣は改めて訓示にて、北朝鮮については、安保理決議違反である弾道ミサイル発射を続けていることや極超音速滑空兵器、変則軌道ミサイルなど新たな技術の開発や向上を見過ごすことは出来ないことを強調、中国については、十分な透明性を欠いたままで軍事力を強化するとともに、一方的な現状変更の試みを継続していることに言及しています。特に中国については、毎年大幅な増額を続ける軍事費の実態を明確にすることを拒み続けており、我が国固有の領土である尖閣諸島あるいは南シナ海における威嚇行為や不法行為は留まることを知りません。南シナ海では滑走路建設等の様々な既成事実を創り上げて来ています。また、2027年の人民解放軍創設100周年を控え、「一つの中国」の原則に基づく「台湾統一は歴史的任務」(2021年7月1日中国共産党創立100周年式典における習近平国家主席演説)とする台湾をめぐる中国の動きは、今後ますます我が国にとって、日米同盟にとって、極めて重要な問題になって行くものと思います。
 こうした中にあって、岸田内閣総理大臣は、「国民の暮らしを守るため何が求められるのか、冷静に、現実的に議論を突き詰めていくこと、そして、国民の皆さんにしっかりとご理解いただくことが、政治の責任です。このため、私は、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改訂を指示しました。この中で、いわゆる敵基地攻撃能力の保有も含めて、あらゆる選択肢を排除せず検討し、必要な防衛力を強化して参ります」と言明されました。
 既にこの指示を受け、岸防衛大臣の下、改訂や検討作業に着手している防衛省・自衛隊の皆さんが、正に「内幕一体」となって取り組み、来年2022年にはこの大事な任務を完遂され、以て国民の皆さんの負託に応えて行って頂きたいと思います。
 そんな中、11月15日に3時間にわたって行われた米中首脳オンライン会議、11月30日には米国国防総省当局が、オンラインにて中国の防衛担当当局と実務者レベルの協議を実施していること等も忘れてはならないと思います。「米中両国の間では、国防トップによる会談の調整が進められていて、両国の偶発的な衝突が起きないように防衛当局の間で対話を重ねる狙いがあります。・・・国防総省は、国防総省と人民解放軍との間で理解を深め、開かれた対話のチャンネルを維持するための建設的な議論を行ったとしています」(12月4日 NHKニュース)
 ちなみに日本では、11月10日にオンラインにて「日中高級事務レベル海洋協議団長間協議」が行われています(日本側 船越外務省アジア太平洋局長、中国側 洪亮(こうりょう)中国外交部辺境海洋事務司長)。そこでは、「日本側から、尖閣諸島をめぐる状況や、我が国周辺海域における中国の活発化する軍事行動を始めとする海洋・安全保障分野の課題に係る我が国の立場、懸念を改めて申し入れ、中国側の行動を強く求めました。・・・双方は、日中海上捜索・救助(SAR)協定に基づく海上捜索救助協力、「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」の「日中防衛当局間のホットライン」の早期開設に向けた取組・・・を推進して行くことを確認しました」(11月10日外務省ホームページ)
 常日頃から緊密な対話に努め、どんな時にも対話のチャンネルを維持して行くことが死活的に重要であることは、論を待ちません。
 引用が大変多くなって恐縮なのですが、「米と連携し地域安定の戦略を」との見出しを打っている12月4日付け日本経済新聞社説は、次のような記述で締めくくっています。
 「効率的な防衛のためには米側との役割分担など緊密な調整が欠かせないが、つながりの深い中国との関係は日本の国益に直結する。目的は緊張の緩和であり、地域の安定である。抑止力を維持しつつ、対話も駆使して、平和的な共存をどう実現するか。バランスのとれた構想力が問われている」
 国家安全保障戦略・防衛大綱・中期防衛力整備計画の改定等が行われる来年2022年は、2月には北京オリンピック、3月に北京パラリンピック、春頃には東京でのQUAD首脳会議、7月には参議院選挙、9月には日中国交正常化50周年、秋には第20回中国共産党大会、11月には米中間選挙等、重要案件が目白押しです。
 この拙稿を書いていますときに、成年の行事に臨まれたロングドレスの愛子さまが、叔母の清子さんから借りられたティアラや天皇陛下から授与された勲章を身に付けられ、優しく微笑まれて一礼されるお姿がテレビで映し出されました。愛子さまは、お誕生日を迎えられた12月1日、成年にあたっての感想を公表されています。
 「日ごろから思いやりと感謝の気持ちを忘れず、小さな喜びを大切にしながら自分を磨き、人の役に立つことのできる大人に成長できますよう、一歩一歩進んで参りたいと思います」(筆者抜粋)
 衷心よりご祝福申し上げたいと思います。

北原 巖男(きたはらいわお) 元防衛施設庁長官。元東ティモール大使。現日本東ティモール協会会長。(公社)隊友会理事


統合幕僚監部最先任交代式
第6代に関秀之准海尉が着任
 11月26日、防衛省A棟講堂において、陸海空自衛隊最先任や在日米軍主要部隊の最先任らが参列するなか、統合幕僚監部最先任交代式が執り行われ、第6代に関秀之准海尉が着任した。
 関准尉は着任の挨拶で「澤田准尉から心温まる熱い思いと涙と男くさい目に見えないタスキを受け継ぎました。私は靴が擦れるほど、部隊を回って統幕の目となり耳となり、また部隊隊員の声をこの市ヶ谷に届けたい」と決意を述べるとともに、引き続き日米関係の強化にも積極的に取組む意欲を示した。
 退官する第5代統幕最先任の澤田准陸尉(11月27日付で3陸尉に特別昇任)について、山崎幸二統合幕僚長は「日本一の最先任」と最上級の言葉で評し、時折声を詰まらせながら餞の言葉を贈った。
 澤田准陸尉は、「37年間の自衛官人生に後悔はありません」と述べ「これも皆様の統幕最先任に対する深いご理解とご協力があったからです」と最後まで感謝の言葉を繰り返した。交代式後は、儀仗広場で多くの隊員に万歳三唱で送り出されて市ヶ谷を後にした。
 第6代統幕最先任関秀之准尉は、昭和62年に横須賀教育隊第252期練習員として海上自衛隊に入隊。各部隊で補給員として勤務し、平成27年6月から令和元年12月まで海上自衛隊先任伍長。准海尉に昇任後は護衛艦いずもで勤務。

第1回継灯式から
〜厳そかに決意新たに〜
<防衛医科大学校>
 あたかもこの日の行事をなぞらえ蝋燭を立てたような11月11日の午後、埼玉県所沢市に所在する防衛医科大学校(四ノ宮成祥学校長=所沢)において学生部が主催する「第1回継灯式」が厳かに挙行された。
 継灯式とは、ナイチンゲール精神の宿る灯火を一人一人が受け継ぎ、看護師への第一歩を踏み出す決意を誓う儀式のことで、今回は、看護学科第2学年の自衛官候補及び技官候補学生114名が誓いを立てた。以前は「戴帽式」を行なっていたが、その「戴帽式」に代えて、「継灯式」を行った。本格的な看護実習に向け誓いを新たにするとともに、ナイチンゲール精神や先輩から後輩への伝統の継承という意味があるという。
 ナイチンゲール像の灯から移した親火を掲げる、本校第3期生卒の先輩看護官・看護師から学生一人一人が蝋燭に火を灯し、自分の席に戻るまで、一歩一歩火を消さないように丁寧にしかし看護師への道を見据えた力強い眼差しで歩を進めていた。
 その後、ナイチンゲール誓詞「我は此処に集ひたる人々の前に厳かに神に誓はん、我が生涯を清く過ごし、わが任務(つとめ)を忠実に尽くさんことを。我は全て毒あるものを絶ち、悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。我は我力の限りわが任務の標準(しるし)を高くせんことを努むべし。我が任務にあたりて取り扱へる人々の私事の全て、我が知り得たる一家の内事のすべて、我は人に洩らさざるべし。我は心より医師を助け、我が手に託されたる人々の幸のために身を捧げん」と全員で唱和した。
 式後、代表学生の技官候補学生の出口綾乃学生は、「みんなが灯を持っている姿を見て、心から綺麗だなと思った。蝋燭の灯を消さないように、病院実習に向け、気持ちを新たに頑張ろうと思いながら歩いた」と笑顔で語っていた。

自衛官にとっての「人生100年時代」(4)
「生涯現役社会」の実現

人的戦力を確保できるか
 前回まで取り上げたように、我が国は、先進国の先頭を走って「少子化」と「高齢化」が同時に進行している。よって、我が国独自の「少子高齢化」対処モデルを作り、早急な対策を講じる必要があると考えるが、自衛隊に対する影響も少なくないだろう。
 中でも、最も深刻なのは、自衛官の募集対象人口が減ることだろう。すでにその影響が出始めているが、定年延長を含む様々な制度改革と関係者の努力によって何とか人的戦力を維持している。だが、「少子化」がさらに続けば、遠くない将来、現状程度の人的戦力の確保が困難となる可能性がある。自衛隊にとっても正念場を迎えると予測する。

「生涯現役社会」の導入・普及
 本シリーズの目的は、「人生100年時代」の到来を自衛官としていかに考え、対処するかにあるので、「高齢化」に焦点を置きながら筆を進めよう。
 さて、「『生涯現役社会』の実現なくして未来はない!」とのスローガン、安倍元総理が何度も歓呼していたので記憶に残っている人も多いことだろう。
 この政策の狙いは明らかだ。ターゲットを高齢者や専業主婦に定め、仮に人口が減っても労働力人口が減らないようにする(労働力率を高める)ことにあった。特に、高齢者がもっと働き、税金や社会保険料を納めれば、「支えられる側」から「支える側」にまわり、財政負担も軽くなる。それは、生産年齢層減少の対策でもあり、高齢者が勤労収入を稼ぎ、もっと多くの消費をすれば経済の成長も促される。
 さらに、働くことによって健康が維持されることから医療費削減の可能性があるなど、一石何鳥ともいえる、うま味のある政策なのである。
 左表は、1992年と2017年の年齢層別の歩行速度を比較したグラフであるが、男性は10歳分、女性は20歳分、歩行速度が速くなっている。加齢によって、短期記憶能力は下がるが問題解決能力や言語能力は上昇するというデータもある。「生涯現役社会」の導入を可能にする背景として、今どきの高齢者は若返っているのだ。
 かつて60歳定年の頃、「人生80年のうち40年しか働かないのはバランスを欠く」との指摘があったが、現在は、「人生100年時代」である。「高齢者雇用安定法」改訂が今年4月1日より施行され、継続雇用年齢も70歳まで引き上げられた。それを実現するため、定年廃止、定年延長、再雇用、再就職支援、個人事業主・起業支援など、様々な雇用促進施策がすでに走っている。
 自衛官も定年延長中であるが、最大60歳までであろうから、「若年定年」は依然、残るだろう。「人生100年時代」になって、自衛官にとって "益々長くなる" 「定年後」のための準備が必要になってきているのである。

 「退職自衛官の再就職を応援する会」詳細と問い合わせ、本シリーズのバックナンバーはこちら。https://www.saishushoku-ouen.com/


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